道路構造物ジャーナルNET

新たに発刊した「道路橋防食便覧」のポイント

④金属被覆による防食・金属溶射

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎

公開日:2015.01.01

被処理面と一定の距離をおいてなるべく正対

 3)防食仕様及び構造設計上の留意点

 金属溶射の防食仕様としては、一般部において表-2に示す溶射後に溶射皮膜表面を封孔処理剤で仕上げる仕様を標準とした。

                         表-2 一般部の標準仕様

 構造設計上の留意点としては、ブラスト施工及び溶射施工において、良好な施工品質を確保するためには被処理面と一定の距離をおいてなるべく正対することが重要である。したがって、そのための作業空間(1m3程度)をできる限り確保する必要がある。特にトラス・アーチ系の格点部、横桁取り合い部などは作業空間の確保が困難な場合が多いことから、溶射施工時の姿勢なども考慮して作業空間についての十分な検討が必要である。スカラップ部など溶射施工が適切に行えない部位が設計上避けられない場合は、当初からこれらの部位について溶射困難な部位に対する補修仕様による防食処理を行うことが必要である。金属溶射による防食法を採用する橋梁において、細部構造の設計にあたっては、所定の皮膜厚さが得られるなど、溶射の施工にあたって良好な品質が確保できるよう、可能な限り狭あい部を作らない構造を選択する必要がある。

F8Tの高力ボルトを使用することを原則
接合面は適切な処理が必要

4)製作・施工上の留意点
 製作・施工上の留意点としては、加工・孔あけ、溶断・溶接、摩擦接合面の処理などについてである。具体的には、連結部に要求される性能とその前提となる施工品質を確保するために摩擦接合において接合される高力ボルトの接触面については、設計で仮定した必要なすべり係数が得られるように、適切な処理を施さなければならないことや溶融亜鉛めっき高力ボルトを使用する場合は、F8Tの高力ボルトを使用することを原則とするなどである。
 溶射施工の一般的な施工の流れ及び施工状況を図-2に、金属溶射の特徴ある施工に使用される溶射ガン及び概念図(アーク溶射ガンの事例)を写真-4、図-3に示す。


図-2 溶射施工の流れ

        写真-4 溶射ガン                     図-3 概念図

 金属溶射は、期待される防食性能を確保するために適切に素地調整された鋼材表面に対して行うことが必要である。ここで言う素地調整とは、金属溶射が鋼材に対し良好に付着するように、鋼材表面のミルスケール、さびなど付着に有害な物質を適切に除去するとともに、鋼材表面に必要な粗さを与える処理工程を指している。適切に設計、製作された場合には、環境条件に大きな変化がなければ、溶射皮膜の劣化は少なく、設計で考慮した防食性能が期待できる状態となる。しかし、実際の橋では構造部位によっても環境条件が異なり、設計で考慮した以上に溶射皮膜の劣化が進行することもあるため、定期的に溶射皮膜の状態を点検して損傷などの変状を早期に発見するとともに、適当な時期に補修を行うなど適切な維持管理を行う必要がある。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム