道路構造物ジャーナルNET

新たに発刊した「道路橋防食便覧」のポイント

④金属被覆による防食・金属溶射

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎

公開日:2015.01.01

 6項目の確認が必要

 金属溶射の設計、施工、維持管理のポイント
 1)防食設計
 金属溶射の防食設計では、良好な溶射皮膜を確実に得るために、環境条件や適用部材の条件に応じて適切な溶射方式とその仕様を決定することとがポイントであり、構造上の制約や施工条件について併せて検討を行う必要がある。金属溶射の仕様の決定にあたって検討、確認する必要がある内容を以下に示す。
 ①架設される環境の塩分環境が金属溶射皮膜による防食が適当な範囲であり、所要の防食作用が得られることを確認する。
 ②製作される部材に溶射の施工が困難となる狭あいな箇所が少なく、良好な施工品質が確保できる構造であることを確認する。
 ③完成後に狭あい部が多い場合には、維持管理上問題がないことを確認する。
 ④添接部に使用する高力ボルトの防食仕様において、金属溶射に対する配慮が行われ、所要の継手性能が確保されることを確認する。具体的には、溶融亜鉛めっき高力ボルト(F8T)を用いているか、又は溶融亜鉛めっき高力ボルト(F8T)に変更可能であることが必要である。
 ⑤景観への配慮などから、溶射施工面に着色や特定の外観が必要とされているかどうかなどの外観性状について、要求事項を確認する。
 ⑥現場施工の場合は、素地調整や溶射が適切に行えることを確認する。
 以上の6項目について確認が必要である。

 溶射被膜の封孔処理

 2)使用材料
 次に、金属溶射に使われる材料としては、溶射皮膜用として製造された線材、封孔処理剤などがある。また、動力工具ケレンを行う工法を適用する場合(スィープブラスト又はブラストを含む)は粗面形成材、上塗塗装仕上げを適用する場合は塗料を使用する。溶射線材は、亜鉛(純度99.99%以上)、アルミニウム(純度99.50%以上)亜鉛・アルミニウム合金、亜鉛・アルミニウム擬合金、アルミニウム・マグネシウム合金(アルミニウム合金5056)などである。
 金属溶射の特徴として、溶射皮膜の封孔処理がある。これは、適当な無機、有機塗料などの封孔剤を、開口している皮膜の気孔に含浸させてこれを密閉し、皮膜の化学的及び物理的性質を改善して金属溶射皮膜の表面全体を反応生成物で覆うことで金属表面の活性を低下させ、同時に表面を保護することを目的として施工するものである。封孔処理剤には、溶射金属と反応して金属表面の活性を低下させるタイプと、溶射皮膜を外界から遮断することを主体としたタイプがあり、いずれも気孔への充填効果によって、溶射皮膜の防食性が向上する。また、溶射被膜と鋼素地と密着性を高める目的で粗面形成材が用いられる場合もある。粗面形成材は、動力工具による素地調整を行う場合及び通電性のあるショッププライマー塗装鋼板で、溶射皮膜を鋼素地に密着させるために無機質粒子とエポキシ系樹脂で素地に人工的に粗さを形成するために用いられる材料である。

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