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新たに発刊した「道路橋防食便覧」のポイント

③溶融亜鉛めっきによる防食

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎

公開日:2014.12.01

5段階のめっき被膜調査

 鋼道路橋の溶融亜鉛めっき施工状況を写真-3に示す。

 めっき処理工程の詳細は、以下である。めっきする部材を事前にアルカリ水溶液に浸せきして脱脂する脱脂工程と鉄と亜鉛の界面にあるさびやスケールを除去するための、塩酸又は硫酸溶液による洗浄である酸洗い工程は、良好なめっき層確保に必要な工程である。鉄と溶融亜鉛の接触面にさび、スマット(塩基性鉄塩)、酸化亜鉛等の不純物が介在すると不めっきとなることから、塩化亜鉛と塩化アンモニウムの混合水溶液(フラックス)による洗浄を行うのがフラックス工程である。亜鉛めっきの工程で注意する事項は、めっき槽への浸せきは速やかに行い、引き上げるときにはたれ切りを十分に行なうことである。
 次に、供用開始後の留意点である。溶融亜鉛めっきは、表面の保護皮膜が水分、酸素、炭酸ガス等との化学反応を繰り返すことによって経年とともに皮膜の腐食が進み、防食効果が失われることになる。溶融亜鉛めっき橋の供用後は、めっき皮膜の防食効果を確認し、めっき層に期待した防食機能が失われて手遅れとならない為にも、定期的に適切な方法で点検を行うことが必要である。点検では、めっき皮膜の劣化程度を適切に把握し、補修計画を策定するために必要な情報を取得することが重要である。めっき皮膜の劣化は、橋の形式、部材形状、架橋地点の環境等によってその進行程度が異なることが多々あることから、さびの生じやすい箇所を重点的に見落としのないように点検することが必要である。表-1にめっき皮膜に損傷が発生しやすい箇所とその原因、写真-4に部材角部(エッジ部)のさび発生状況を示した。近接目視点検による外観調査の結果に基づく診断は、一般環境(A)と塩分の影響を受ける環境(B)に分けて、それぞれめっき皮膜の評価を以下の5段階で行うことが基本である。
  Ⅰ :亜鉛層が残っている状態
  Ⅱ :亜鉛層の劣化が進み、合金層が局部的に露出した状態
  Ⅲ :亜鉛層が消耗し、合金層が全面的に露出した状態
  Ⅳ :合金層の劣化が鋼素地付近まで進んだ状態
  Ⅴ :めっき皮膜が消耗し、劣化が鋼素地に至っている状態


                    表-1 めっき被膜の劣化箇所と原因

                 写真-4 部材鋭角部のめっき被膜の劣化

 ここに示す評価ランクに対比する融亜鉛めっきの対策時期は、飛来塩分や凍結防止剤の影響を受ける環境(B)の場合は、ランクⅡから腐食進行速度を詳細に調査し、必要な対策を早期に行なう必要がある。一般環境(A)のランクⅤ、環境(B)のⅣは、溶融亜鉛めっきの防食機能はほとんどないと判断して良い状態であることから、被膜の補修は、原則として塗装又は金属溶射で行うとよい。特に、溶融亜鉛めっきを塗装及び金属溶射で補修する場合は、めっき層の特徴を十分に把握し、構造と経済性を考えた補修方法を選択する必要がある。補修対策のポイントは、素地調整にあり、鋼素地や合金層から発生している赤さびを確実に除去し、有効な合金層は可能な限り残すように行うことが必要である。ブラスト法による素地調整行う場合には、合金層を除去しすぎないように注意することが必要である。図-4に溶融亜鉛めっき橋の劣化度診断の流れを示したので参考にするとよい。以上が溶融亜鉛めっきの設計、施工、維持管理のポイントである。


           図-4 溶融亜鉛めっき橋の劣化度診断の流れ

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