道路構造物ジャーナルNET

疲労による損傷、環境要因による損傷

床版の劣化と最適な対策をなすためには

大阪大学名誉教授
大阪工業大学教授

松井 繁之

公開日:2015.01.01

塩害、凍結防止剤を散布する地域こそ床版防水を

 ――ではそうした排水構造が完備されていれば防水工は必要ない、と。
 松井 飛来塩分の影響や凍結防止剤を散布する個所は別です。特にスパイクタイヤが禁止(1991年から全面禁止)されてから凍結防止剤の散布が大幅に増え、今では以前では撒かなかったような市街地でも冬季により安全な交通環境を実現するため散布している状況であり、散布地域は大幅に拡大しています。こうした地域の床版は上段の主鉄筋が腐食膨張し、被りコンクリートがひび割れ、剥離に至ってしてしまうわけですから防水は必要です。ただし、床版防水にもグレードがあり状況に見合った防水工を施工する必要があります。

状況に見合った防水工の選定が必要

――状況に見合った防水工とは。
 松井 高速道路など疲労の影響を受ける道路橋あるいは疲労と環境の複合劣化を生じる可能性のある道路橋は高性能床版防水などよりグレードの高い防水工が望ましいと考えます。ただ、舗装は15~30年に1回は基層まで打ち直す必要がありことを考えれば(切削時に防水工にも影響があるため取り換える必要が出てくることを考慮すれば)防水工の最大寿命は30年程度で良いと思います。


                      状況に見合った防水工を施工することが重要

 自治体が管轄する橋梁は塩分や水による環境劣化が主因であるわけですからそれに応じた防水方法を取ればいいと考えます。

既設舗装の除去方法の開発は必須

 松井 床版防水の課題は、新設床版は比較的施工は難しくありませんが、既設床版は施工時間が短い上に旧の舗装の取り方が難しい点です。
 今は全て機械切削により舗装を除去するため床版上面に厚さ5㍉程度の条痕が残ってしまい、それが残ったままではどのような床版防水工もうまくいきません。防水性能をきちんと出すためには床版上面の不陸修正が必要です。そこに時間もかかるし金もかかりますが、そここそきちんと施工しないと再劣化が生じてしまいます。既設舗装の除去方法の開発が必要でしょう。
 私が見た自治体管轄のある橋の舗装打ち替え事例のことが思い出されます。地覆の前面に床版を機械切削した深さ5㍉程度の切削痕が残ってしまうようで、その橋梁では供用開始から3回、床版を切削していた証拠が残っていました。床版を15㍉程度削ってしまったため、かぶりが不足していたと推定できる所々で上段の主鉄筋が露出していました。純被りが20㍉程度あったとしても施工誤差を考慮すれば当然鉄筋は出てきます。私はこのような状況でも舗装を敷設するのか、これが何年もつと思うか?と大きな危機感を抱きました。 床版の寿命は千分の1以下になっているよ、と説明し、これを何とかやめて、床版増厚しなさい、と指摘しました。床版防水の性能を確保し、床版の長寿命化を図るためにも、床版上の舗装の上手い切削方法、研掃方法の開発は急務と言えます。

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