道路構造物ジャーナルNET

疲労による損傷、環境要因による損傷

床版の劣化と最適な対策をなすためには

大阪大学名誉教授
大阪工業大学教授

松井 繁之

公開日:2015.01.01

 近年は自然環境も大きく影響
 塩害や凍害による損傷も目立つ

 ――床版の損傷メカニズムは疲労と水によるものだということですね。
 松井 それだけではありません。近年では自然環境その他に起因する損傷も目立ってきています。
 大別して塩害、低温環境(凍害、凍結融解)、湿潤環境、アルカリ骨材反応による劣化などがあります。内部から材料そのものが劣化してしまう現象です。


                        凍害による損傷①

                凍害による損傷②

                塩害による損傷

          切り出した床版。上面の土砂化が進んでいる

 特に酷いのは塩害と凍害です。塩害は海岸近傍の飛来塩分によるものと寒冷地域や山間地の道路で散布される凍結防止剤によるものがありますが、いずれにしても塩分がコンクリート内に浸透することで中の鉄筋を錆びさせて鉄筋が膨張して被りコンクリートが剥離してしまいます。
 凍害は上面や隅角部当たりから水分がコンクリート内に浸入し、凍結融解の繰り返しを引き起こすことで細かなひび割れがコンクリート中に生じ、材料分離が起きてしまう劣化現象です。北海道などでは地覆前面あたりで水が溜まることがありその床版のコンクリート表面が凍害現象を起こし、何年か立つとスコップで掬えるぐらいに劣化が進む箇所も出てきています。
 後はこうした劣化作用の複合による損傷です。しかしそのメカニズムは未だ解明されてはおらず、その解明は難しいと思います。というのも場所によってその比率――疲労、塩害、凍害――は環境によって様々だからです。ですから例えば国土交通省なら事務所ごとに傾向を出すことは可能ですし、比較する情報も揃えられるでしょうが、これを他の事務所に当てはめることは難しい。マクロな傾向を無理に解析するよりは、工事事務所ごとに環境が似た区間の点検、調査を進めることで損傷傾向を解析し、補修補強工法を選定する、そのような手法の方が確実な手当てが可能だと思います。それを積み上げていけば、マクロな傾向も見えてくるかもしれません。


                      様々な損傷例

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