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-分かっていますか?何が問題なのか-
第66回 ウルトラファインバブルに飛びついた! -チャレンジ精神で専門分野外にも取り組んでみる-

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2023.06.01

③既設橋を対象とした洗浄試験施工
 模擬試験体を対象に行った洗浄試験については、水道水とUFB水の差異確認ができなかった原因として考えたのが、洗浄対象実面積が小さく影響面を含む効果が発揮できなかったとの判断である。現場において私を含めた模擬試験体洗浄の課題判断によって、洗浄対象面積の広い既設橋(架設後約30年経過)を対象とした洗浄試験に移ることとした。
 洗浄対象の道路橋は、架設後約30年経過し、当該年度実施した調査によると、平均塩分付着量が側面で89.1mg/m2、下面で165.7mg/m2である。対象橋梁は、道路橋塩害対策区分のS地域、海外線から0.5㎞内に位置しているにも関わらず、測定した付着塩分量は予想以上に少ない。対象橋梁の付着塩分量が少ない理由としては、当該橋梁の鋼桁角部を全て円形加工した外形処理したことによって、架設後に付着した塩分が雨水等で流された結果によるものと考える。
 洗浄対象橋梁の塗装仕様を図-13に示す。


図-13 洗浄試験施工対象橋梁の塗装系

 洗浄試験は、使用水を水道水とUFB水、常温水とスチーム水(水温100℃)、吐出圧1MPa(低圧)と5MPa(高圧)の組み合わせで行った。試験施工の種類と内容、適用部位を表-3に、洗浄試験施工の方法、水圧、洗浄水の分類を表-4に、洗浄方法の詳細な説明を図-14に、今回対象とした既設橋洗浄試験箇所(側面図)を図-15に、そして洗浄試験を行っている現地状況を写真-1 に示す。なお、スチーム洗浄の吐出圧は、5Mpaのみであるが洗浄面との距離を1mと2mの2パターンとした。


表-3 洗浄試験施工の種類と内容、適用部位/表-4 洗浄試験施工の方法、水圧、洗浄水の分類表

図-14 洗浄方法詳細説明:既設橋洗浄試験

図-15 既設橋洗浄試験対象箇所(側面図)

写真-1 橋洗浄試験状況

④試験施工結果
 道路橋を対象とした洗浄は、私自身先に示したように過去に行ってはいるが、今回の目的は、経験値のないUFB水による構造物洗浄の効果検証試験である。特に、鋼材の塗装面やコンクリートに対し、洗浄を行うことによって構造物に付着している塩分を除去することができれば確実に、構造物の耐久性は向上するはずである。特に、今回注目しているUFB水による洗浄試験は、従来の水道水による洗浄と比較して洗浄効果が高く、洗浄水圧を下げることによる使用水量の減少などの効果も期待して行っている。
 私としては、ここに示すUFB水洗浄の効果確認と施工性等が許容する範囲内であるとすれば、UFB水による構造物洗浄を日々のメンテナンス工法として実採用できると大いに期待していた。しかし、模擬試験体、既設橋を対象とした試験施工を進めるうちに、その期待は裏切られる結果となっていった。
 図-16は、吐出圧5Mpaの高圧で洗浄を行った結果を示す対比グラフである。


図-16 洗浄前後の付着塩分量比較グラフ:高水圧

 洗浄前付着塩分量が27.4mg/m2~101.3mg/m2の範囲であったが、洗浄後は6.7mg/m2~31.3mg/m2以下となっている。このグラフを見て明らかなように、構造物の洗浄効果が確実にあることは確かである。しかし、私が期待しているUFB水と水道水とを対比すると、若干ではあるがUFB水のほうが塩分の除去効果が高い感がするが、その差異は明確ではない。図-17は、吐出圧1Mpaの低圧で洗浄を行った結果を示す対比グラフである。


図-17 洗浄前後の付着塩分量比較グラフ:低水圧

 洗浄前付着塩分量が6.2mg/m2~79.3mg/m2の範囲であるのが洗浄後は、8.4mg/m2~58.4mg/m2以下であり、吐出圧の低下によって、高圧による洗浄と比較して全体的に洗浄効果は下がっている。また、期待していたUFB水による洗浄効果に着目して見てみると、水道水のほうがUFB水よりも洗浄効果が高いように読み取れる。
 また、図-18に示すスチーム洗浄の場合は、洗浄前付着塩分量が4.2mg/m2~114.5mg/m2の範囲であるのが洗浄後は8.6mg/m2~38.4mg/m2以下となっている。


図-18 洗浄前後の付着塩分量比較グラフ:スチーム水

 水温を上げることによる除去対象物の除去性能を期待してのスチーム洗浄であるが、UFB水と水道水、対象物とノズルの離隔距離2mと1mの差異は、明確には表れなかった。
 以上が、付着塩分を対象として行った洗浄効果確認試験施工結果である。次に、洗浄による塗膜への影響を調査した結果を示す。
 塗膜への影響として、洗浄による悪影響を危惧していた光沢度については、以前行った既設橋洗浄試験施工の結果とは異なって、図-19に示すように悪影響がなく、光沢度が増す結果となった。


図-19 洗浄前後の塗膜光沢度比較グラフ:高圧吐出水

 これは試験前に想定した、塗膜光沢度を下げる要素の一つと考えられる、吐水の衝撃で塗装面の荒れる可能性を取り去るために吐水圧を低下させたこと、洗浄剤の界面活性作用による悪影響(洗剤の持つ界面活性作用が塗膜の表面張力を低下させ、塗膜の平滑性や光沢度を低下させる)を考慮した結果と考えられる。光沢度が改善した理由は、洗浄によって表面に付着している汚れを除去したことが要因と考える。同様に、塗膜厚についても図-20に示すようにほとんど変化はない。以上が、構造物洗浄の試験施工結果である。


図-20 洗浄前後の塗膜厚比較グラフ:高圧吐出水

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