道路構造物ジャーナルNET

-分かっていますか?何が問題なのか-
第66回 ウルトラファインバブルに飛びついた! -チャレンジ精神で専門分野外にも取り組んでみる-

これでよいのか専門技術者

(一般財団法人)首都高速道路技術センター
上席研究員

髙木 千太郎

公開日:2023.06.01

2.2 ウルトラファインバブル水の生成と洗浄試験施工
 今回、構造物の洗浄に用いるウルトラファインバブル水(以降、UFB水)は、汚物や塩分などの除去に機能するウルトラファインバブル(以下、UFB)を含有する水道水が原水である。私が効果を期待するUFB とは、直径が1um(マイクロメートル・1/100万m)未満の微小な気泡を指している。
 M氏が持ち込んだ装置Bは、図-3の矢印の先で明らかなように水が通る前後に4個の孔が空いているが、中はどのような構造になっているかは確認できない。
 装置Bに付属品として同封されている説明書を図-7 に示すが、一般家庭の水道水(水圧0.15Mpa~0.4Mpa:我が国は、水道法で配水管圧力最低基準0.15Mpaと規定)をそのまま装置Bを通過させると、1.5億個/1ml~3億個/1mlのUFBが発生するとしている。


図-7 ウルトラファインバブル水生成メカニズムイメージ:装置B

 その時の私は、装置Bは説明図と孔の数は異なるが、最低でも1.5億個/mlのUFBを発生させるUFB生成システムであると信頼しきっていた。当時調べた資料によると、「UFBの生成は,水に溶けたガス(酸素、窒素、炭酸ガス、アルゴンなど)を高速かつ一定の圧力で放出し、その後、圧力を急激に低下させることによってUFBが作られるのがメカニズムである」との記述があり、それを装置Bに当て嵌めてみた。
 装置Bは、多数の孔を通過した水道水がその先で形状が細くなった部分で圧力が上がると同時に、旋回流を発生させ、その後断面が大きくなった箇所で圧力が一気に落ち、UFBを生成するメカニズムであり、UFB生成基本メカニズムと合致している。しかし、私としては、ここでの自分自身の甘い判断が、後に大きな課題となって自分に降りかかってくるとは思いもよらなかった。

①装置BのUFB水生成メカニズム
 UFBを生成する方法としては、静電気、超音波、振動子、膜、繊維、およびノズルなどを使う様々な手法がある。また、UFB生成装置の種類としては、超音波によるバブル生成装置、静電気を利用したバブル生成装置、ノズル式バブル生成装置、フラッシュ混合法によるバブル生成装置、旋回液流方式によるバブル生成装置などがある。表-1に一般社団法人ファインバブル産業会が示しているUFB生成の方式と方式別の原理説明資料を示す。


表-1 ウルトラファインバブル生成方式と製造原理

 M氏が持ち込んだ装置BのUFB生成メカニズムは、表-1を参考にすると原理はノズルを使う手法であり、装置分類としては超音波キャビテーション方式に分類される。

②試験体を対象としたUFB水による洗浄試験施工
 今回行う構造物洗浄試験施工については、模擬試験体と既設橋を対象に、それぞれ洗浄効果の確認を目的とする施工を行うこととした。模擬試験体は、300mm×300mmの厚さ4.5mmのSS400鋼材を使用し、下地処理として圧膜無機ジンクリッチペイント(厚さ75μm)を塗布している。
 今回は洗浄効果を確認することから、先に示す模擬試験体は、人工的に塩分(塩化ナトリウム水溶液濃度5%)を噴霧器で散布(電気式噴霧器によって0.34MPaで0.5m離し5secを3回)した後乾燥させ、その後表面に土砂塵埃を付着させている。なお、右側半分は付着物が落ち難いように目粗し処理を行っている。洗浄効果確認試験は、水道水とUFB水を使って高圧洗浄し、それぞれを比較する方法である。表-2に洗浄試験施工の使用水別の区分を示す。


表-2 洗浄試験施工の種類:水道水とウルトラファインバブル水

 模擬試験体を対象とする洗浄効果確認試験のイメージを図-8に示す。


図-8 洗浄試験施工実施イメージ:模擬試験体

 試験施工の洗浄水を吐出するノズル形状および角度、洗浄対象模擬試験体と洗浄ノズルの離隔距離は、構造物洗浄の実績から決定している。今回行った模擬試験体および試験施工試験片設置状況を図-9に、図-10に現地での洗浄試験状況を示す。


図-9 洗浄試験施工試験体設置状況と模擬試験/図-10 洗浄試験施工状況:模擬試験体

 試験施工は、水道水とUFB水によって吐出圧5Mpaで噴射時間1sec行う洗浄効果確認を行った。洗浄後の試験体外観を図-11に示す。


図-11 洗浄試験施工結果の対比:UFB水と水道水

 図-11に示す洗浄試験後の試験体外観で明らかなように、水道水とUFB水による洗浄効果は、UFB水の優位性は確認できず、逆に、水道水のほうが洗浄の効果が高いように見えた。当初計画では、模擬試験体を対象に種々な洗浄確認試験を予定していたが効果が確認できないことから、模擬試験体を対象とした試験を中止し、既設橋を対象とする試験施工に移ることとした。
 この対象変更の判断は、ノズル洗浄の実吐出横幅が想定した以上に大きく、試験体300mm×300mmの横幅を超える洗浄影響範囲となっていることにある。これは、今回の試験洗浄は、直接洗浄+影響範囲の分析も必要なことから、今回準備した試験体では十分な確認ができないとの判断である。
 今回の洗浄試験施工で重要なポイントとなる、UFB水を生成する装置Bは、高圧洗浄に使用するノズルとホースの接続部に設置しているが、その接続状況を図-12に示した。


図-12 洗浄試験:装置B装着状況

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