道路構造物ジャーナルNET

⑤過去に実施した床版補修工事の失敗!?事例

若手・中堅インハウスエンジニアの本音 ~マネジメントしつつ専門的知見を得ていくために~

愛知県東三河建設事務所
道路整備課(事業第三グループ)

宮川 洋一 氏

公開日:2018.09.01

施工について

 工事発注は予算と工期の都合上、床板上面の施工と床版下面の施工とを2カ年にわたり分割発注することとなった。
(1)床版上面の施工
1)試掘の実施と劣化状況
 舗装面に亀裂が発生している箇所の特にひどいところを試掘した。既設舗装を剥がすと、舗装厚5cmあるはずのところ3cm程度しかなく、床版面は土砂化しており、とてもコンクリートと呼べるものではなかった。土砂化した部分を取り除いていくと概ね2~3cmの深さで止まっており、これを除去すると、比較的良好な部分を確認することができた。桁端付近には防水層と思われる施工がされていたが全面ではなかった。


舗装のクラック部分の試掘

2)床版上面の断面補修の追加
 床版コンクリートの劣化が確認されたため、補修することとした。劣化の要因は舗装ひび割れから進入した雨水が床版上に滞水し、微細クラックなどから床版内に浸透、活荷重の繰り返し作用などによりコンクリートが圧壊、土砂化したと推察された。

3)床版補修の施工範囲及び補修方法
 舗装を全面剥がし上面床版補修の施工範囲を決定することとした。まずは目視により床版の土砂化が明らかな劣化箇所以外は、リバウンドハンマーにてコンクリート圧縮強度30N/mm2以下の範囲について補修することとし、補修深さは30~50mmとした。鉄筋腐食が確認された場合はこれをケレンして防錆処理をすることとし、補修材は通行規制期間に配慮して超早強コンクリートを用いることとした。


床版(上面)の補修範囲

4)施工フロー及び施工
 床版上面について以下のフローのとおり施工した。併せて施工写真を示す。


床版上面の施工フロー/床版上面の施工

 既設RC床版の舗装工事では床版に不陸が多く、シート系では施工しづらいことや舗装厚が5cmと薄いことから、塗膜防水とした。橋面舗装は付着性改質改善型とした。
 想定以上に床版劣化がひどく、範囲も広かったため、結果的に大幅な変更となってしまった。

(2)床版下面の施工
 床版上面の施工後、翌年度は床版下面について以下のフローのとおり施工した。併せて施工写真を示す。


床版下面の施工フロー/床版下面の施工①


床版下面の施工②

 WJはつり作業において、鉄筋腐食の除去が可能なことがわかった。また、現場作業員の聞き取りによると、WJはつり作業を施工する上で、既設コンクリートの劣化部と健全部の違いが概ねわかり、WJの水圧を管理することで、劣化部の適切な除去ができるとのことであった。
 雨水の影響を受ける床版張り出し部の床版端部に水切りを施工することにより、床版下面に雨水がまわるのを防ぐことができることから施工することとした。

施工を終えて

床版機能の回復について
 今回の補修工事において、異常がみられた径間の床版の耐久性が回復され、残りの径間の床版との補修サイクルの整合が図られた。
 断面修復工法において、新旧構造の確実な一体化が重要であると考え、下面補修では、コンクリート同士の付着性能のみに期待することなく、第一鉄筋の裏側までを確実に除去し、既設配筋を介し、新旧コンクリートの物理的な一体化を期待した。大断面の施工には機械手ばつりとWJはつりとを組み合わせることで品質確保と費用対効果の高い合理的な工法を選択できたと考えている。また吹付け工法を採用することにより、工期短縮を図った。
 床版防水の施工、高耐久性の品質の良い舗装材、凸型形状の水切り施工など、構造細目の工夫などが有効と考え施工した。


床版機能の回復

工事完了後の考察

今後の課題
 今後は補修後の経過観察が必要であり、これを実施するためには、補修施工時の図面等はもちろんのこと、使用材料や工事データの保存をし、今後の施工の参考とできるようにすべきである。一度補修をしたら、メンテナンスフリーになることはあり得ないとの認識が必要である。


今後の課題

感じたこと
 現時点において構造物の補修工事のノウハウの蓄積がまだ足りないと思われることから、工事施工しながら当初予期せぬ事項の発生に対しても柔軟に対処していくことも必要となる。そのため専門技術力および知識が施工業者や職員においても必要となる。また、丁寧な施工が今後の長寿命化に重要である(あたりまえだが……)。それには下請け作業員を含めた業者の理解と信頼関係の構築、並行して将来にわたる、品質確保のための客観的な施工仕様の規定が大切であろう。また場合によっては設計込の発注も必要と感じた。
 施工技術、知識に対しての正当な対価が支払われ、補修工事が産業の一部門として持続的に成り立つような体制が確立されるべきと思われる。


感じたこと

 現場で起こった様々な予期せぬ出来事にも柔軟に対応してくれた、地元業者の角文建設、佐々木建設、下請け業者の太平洋テクノ、日進機工、設計した大日本コンサルタントの方々に感謝したい。
 ここまでが10年前に「愛知県建設技術発表会」で報告した内容である(加筆修正あり)。


愛建技術発表

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