道路構造物ジャーナルNET

⑤過去に実施した床版補修工事の失敗!?事例

若手・中堅インハウスエンジニアの本音 ~マネジメントしつつ専門的知見を得ていくために~

愛知県東三河建設事務所
道路整備課(事業第三グループ)

宮川 洋一 氏

公開日:2018.09.01

床版補修工法の選定
(1)補修方法の選定条件
 補修方法の選定において以下の条件整理をした。
① 床版厚を現行基準のものとするか?
 既設床版の設計荷重はTL-20tで床版厚は200mmであり、現行基準のB活荷重TL-25tを満たさない。しかし、残り2径間の床版が現段階で異常もみられないこと、床版厚が増えることで死加重増による耐震上のリスクも上がることなどから既設基準のままとした。
② 歩道拡幅するか?
 現在の歩道は0.75mしかなく、ほとんど使えないため、これを機会に歩道を拡幅するという選択肢もある。刈谷方は本橋の手前まで歩道設置がされてきているものの、大府側は市街化されておらず歩道はないため、今回は歩道を拡幅せず、今後の需要を見極めた上で改めて歩道拡幅を検討することとした。
③ 通行止めができるか?
 交通量は少ないものの、代替え路線もないため、長期間の通行止めは非常に困難であるが、片側通行規制ならやむを得ないと判断した。警察協議でも同様の回答であった。


補修方法選定の条件整理

(2)補修工法の選定
 上記の条件を踏まえ、補修工法の選定を行った。以下の2工法を比較した。
・床版打換
  概要:A1~P1間の床版を完全に打ち換える工法
  利点:施工当時の水準に完全に戻る。
  欠点:合成桁であるため、打換えが非常に困難となる。3主桁であるため、
     片側交互交通を確保するための半断面分割施工に仮設縦桁が必要になる。
     床版の縦断方向に施工目地が入る。
  施工費用:約100百万円 規制日数:8ヵ月間
・断面補修
  概要:劣化部を取り除き断面をポリマーセメントモルタルで補修する工法
  利点:片側交互通行規制しながら、工事施工をすることができる。部分施工が可能。
  欠点:付着や劣化部の完全除去に不安が残る。
  施工費用:約35百万円 規制日数:約10日間

 A1~P1間の床版は、劣化が広範囲にわたっていることに加え、コンクリート強度が低く耐久性を失っており、打替え等の抜本的対策が必要と考えられる。しかし、本橋は、地域生活道路として重要な位置付けとなっており、抜本的対策による長期間の通行止めや、片側交互通行確保のための構造対策コストの増大が無視できない。このような背景のもと、
・床版に力学的損傷がなく、耐久性能の回復を図ることにより長寿命化が期待できる。
・耐久性能を回復させ、他径間と同様の構造とし、今後の補修サイクルの整合を図る。
・交通影響やコストを最小限にできる。
 などにより、ポリマーセメントモルタルによる断面補修工法を採用することとした。また、橋梁全体に舗装の劣化が認められるため、全径間とも高耐久性の舗装へ打ち換えを行い、同時に床版防水を全面に施工することとした。


補修方法の選定

発注工法の仕様設計
(1)施工順序の決定
 始めに床版上面を施工し、床版劣化の要因となる水の進入を押さえた後、床版下面の補修に入るのが合理的と考え、舗装切削 → (床版の補修)※必要に応じ → 防水層 → 舗装舗設 の施工後、床版下面に足場架設をし、床版下面劣化部コンクリートはつり →鉄筋防錆 → ポリマーセメントモルタルによる補修 の順に施工することとした。


施工順序の決定

(2)補修の範囲及び補修の深さ
 床版下面の断面修復において、通常は劣化部のみを部分的に行うが、劣化の範囲が全体におよんでいること、劣化部と健全部の範囲が特定できないことなどから、全面施工が望ましいと考えた。しかし、品質の悪い旧コンクリートに高品質のポリマーセメントモルタルを施工しても、付着力の弱い旧コンクリートの方で剥離が起これば落下してしまう恐れがある。よって旧コンクリートを主鉄筋の裏側まではつり出してポリマーセメントモルタルを施工することで、新旧コンクリートの一体化を期待することとした。この時のはつり深さは中性化深さも考慮して60mmとした。


床版下面の補修の範囲及び深さ

(3)施工方法の決定
1)はつり工法
 当時新工法であったウォータージェット(以下WJ)によるはつりは、はつり面において新旧コンクリートの付着に関して良好な工法とされたが、大断面を施工するには、施工単価が非常に高額であり、大量の水処理にも課題があった。よって機械手ばつりを5cm施工後、仕上げとしてWJはつりの施工を1cmとした。これにより、機械手ばつりにより発生する微少なクラックを除去でき、良好な付着が期待できることや、WJの排水を少量にすることも可能となり、合理的な手法と考えた。


施工方法の工夫(はつり工法)

2)断面補修工法(吹付け工法)の設定
 通常断面修復工法において用いられるのは、ポリマーセメントモルタルを左官職人が手で押しつけるようにして、何層にも分けて施工する、いわゆる左官工法である。この工法は小断面においては有効な工法であるが、大断面となると、上向きの施工に時間がかかるうえ、均一な品質を確保することが困難となると考えたため、大断面においても均一な施工をすることが可能なポリマーセメントモルタルの吹付け工法を採用することとした。


施工方法の工夫(断面修復工法)

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム