道路構造物ジャーナルNET

鋼橋を健全に保つために

-効率的な防食サイクルの確保に向けて-

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎

公開日:2015.02.02

 個人の知見を基にした「想像力」と「直感」

 おわりに
 近年、橋の専門技術者は、より良い橋を造り育てるために、維持管理している橋や損傷の起こっている要因などを分析し、次の設計にフィードバックするすることで好ましい設計・施工が可能となるよう目指し、行動する人が増えている。しかし、現実とのかい離は大きい。現実とのかい離を埋めるためには、橋の建設を計画した時点で十分な調査期間と費用をかけることと、それを理解する技術者を育成することである。さらに、ICT主流の時代に逆行するわけでは無いが、数値計算のみにとらわれる技術者でなく、血の通った暖かい心を持った技術者を育成することが必要と感じている。
 東京芸術大学の山本学治博士執筆の中に『キャンデラをめぐる論争』がある。その中で、「キャンデラが構造技術者に要求していることは、その理論と数学的解析の限界を知って、それを自由な想像力を抑圧するものとしてでなく、それを展開する手段として使いつくすべきだということであり、いいかえれば論理的解析と、その経験に育てられた直感的想像力だけが、独創的な構造設計をなしとげうるということである。」との記述がある。私も同感で、これからの橋に関係する技術者に必要なことは、個人の知見を基にした「想像力」と「直感」であると思っている。また、山本博士は「その直感は、以前の多くの経験に基づき、注意深く行った検証が知識に通じる満足すべき方法」とも言っている。これも、同感である。優れた技術者は、数多くの経験を積み、注意深く行った検証による知見と日々の努力によって多くの住民に愛される橋の設計、施工、維持管理、マネジメントを行うことが必要であり、私もこれを目指している。

参考文献
1)特集・土木設計法の考えかた「土木学会誌57-7号(1972年6月号)別刷」
2)鋼橋における劣化現象と損傷の評価「土木学会・鋼構造シリーズ(1996年10月)
3)鋼道路橋防食便覧「日本道路協会(2014年3月)」

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