道路構造物ジャーナルNET

鋼橋を健全に保つために

-効率的な防食サイクルの確保に向けて-

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎 氏

公開日:2015.02.02

 近寄って見ることが可能な橋を
 維持管理を考慮した設計必要

 橋の設計・施工とは
 橋は、道路の一部として計画されることになるが、その特徴は、以下である。
 ①国民の日常生活や経済活動に直接つながる重要な施設であるとともに公共性が高い。
 ②目的とする荷重や外力を受け、応力と変位という形で支持地盤に伝え、日射、気温、風雨、雪、飛来塩分の飛来、凍結防止剤撒布などの周辺環境や流水、潮流、土圧や地震などの自然現象にも十分耐えられる構造物である。
 ③使用期間が長期に及ぶ。
 ④唯一・オーダーメイドの構造物である。
 ⑤建設には、用地取得や建設費などの事業費だけでなく、その後の維持管理費を含めると長期間莫大な費用が必要となる。
 ここに示すように、橋は、日々の生活を守り、人々が経済活動を発展させるために変化する自然に立ち向かい、その中でも十分な機能を果たすように計画、設計され、社会状況の急速な変化に伴う高度な要求をその都度満たして今日に至っている。ここに示している特徴を満たす橋を設計するにあたって考慮しなければならない事項は、安全性、使用性、施工性、経済性、維持管理性、環境調和性などである。
 ここで橋の長期間の安全で快適な供用に関連する要求事項について抜き出して解説すると、第一の安全性は、当初想定した期間内における作用荷重と累積荷重に対し、安全な強度と耐久性を保持し、先に挙げた種々な周辺環境にも十分耐えることが要求され、対象の橋梁の重要度等考慮して決定されている。


写真-2 自然災害にも落橋せずに耐えた道路橋

写真-2は、自然災害の一つ集中豪雨によって被災したが落橋を免れた事例である。第五の維持管理性は、供用後の維持管理が適切に行えるような構造とすることである。例えば、橋に必要な維持管理を行いやすい構造の採用と万が一橋や部材が損傷した時に容易に措置できるような空間を確保することにある。どのような橋も供用を開始した時点から、その時々に維持管理を行う必要があることを忘れてはならない。私は、維持管理をほとんど行っていない橋は見たことは数多くあるが、維持管理を行わなくてよい橋は今まで見たことはない。私の個人的な考え方かもしれないが、橋の維持管理を適切に行うためには、全ての部材を近くに寄って診ることが可能となるようにに十分配慮した設計・施工を行うことが最低条件である。これは、橋の製作工場で行っている設計した橋が本当に支障なく製作でき、架設できるかを確認する原寸検査と同様に、完成時にどのように維持管理するかを設計の時点でイメージする想像力がないと維持管理性が確保された橋とならない。第六の環境調和性は、橋が置かれている自然の中で、新たな構造物として人々に接し、多くの人々から認知され、愛される構造物となる必要性があることから、人々の目に触れ、肌で感じるたびに不快感を抱かれないことが必要であるし、周囲の景観から逸脱したような形状及び色彩とならないことが設計のポイントである。   
 次に、橋の下部構造の築造、上部構造の製作、架設、上部仕上げなど施工のポイントである。橋の施工は請負工事で行うのが一般的で、適切な品質、適切な工期、適切な費用で安全に、確実に施工するために施工管理が必要となる。施工管理にも、施工計画の策定、施工、各施工段階における計画との差異について検討し、検討の結果明らかとなった原因を見直す処置のPDCAサイクルが必要となる。過去には、橋の建設工事を発注した行政側の技術者が監督員として常時立ち会い、問題のあるごとに請負業者と議論し、適切な品質確保にあたってきた。

 住民目線の行政技術者の考え反映を

 しかし、近年は、責任施工の考えが主流となり、請負業者に全てお任せの施工が多い。橋を想定通りの性能や機能を発揮させるには施工のプロである請負業者の考えだけでなく、その後の長期な維持管理を行う、住民目線の行政技術者の考えが必要である。防食関連で事例をあげると、橋の各部材、特に見えがかりの部分におけるエッジ部のR加工、添接部の板隙、現地架設後の縦横断勾配を配慮した水抜き穴、防水層上の滞水を処理するスラブドレーンとその位置、排水装置が取りつく上部と下部の連結部分の処理など橋を大きな目線で見る行政技術者の役割は大きい。同一の物も、官民の技術者を考えると見方によって大きく違う事例は多々ある。これまで、橋の設計、施工について現在抱えている問題を中心にポイントを解説してきたが、ここで、橋を管理する官の技術者の現状について示す。

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