道路構造物ジャーナルNET

鋼橋を健全に保つために

-効率的な防食サイクルの確保に向けて-

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎

公開日:2015.02.02

 発注者は地域を知ることが可能

 橋を設計・管理する技術者の現状
 高度経済成長期の中ごろから、増加の一途をたどった社会基盤施設などの建設を処理するために、国や地方自治体の関連する業務の合理化が積極的に行えわれた。その結果、行政側の行ってきた設計・施工業務が大きく変わり、設計計算、製図、仮組作業等を直接行わなくなり、外部のコンサルタントへ委託し、それらを管理する立場へと変わっていった。これは、高度経済成長期において、国内で膨大な種々な社会基盤整備を行う必要な状況に置かれた当時、設計する各構造物は構造計算技術の進歩や材料等の開発が進み、設計そのものが複雑化するだけでなく施工法も急速に機械化が進んだことが背景にある。大量生産の時代、品質確保のためには、種々な条件や対応方法を熟知した専門技術者が必要な状況にあったはずである。
 しかし、社会は逆方向に動き、大量の橋など社会基盤施設の設計、施工を適切にフォローアップできる専門技術者が質と量の両面から不足する時代へと急速に移り変わっていった。さらに、これら大量の社会基盤施設を短期間に整備することが必要となったことも災いし、事前に行わなければならない事前調査、例えば、周辺環境や設計・施工条件の調査が不十分のまま事業に着手せざるを得なかったのも事実である。また、行政側の考えを主流として進めてきた時代から、住民主体、説明責任の時代へと移り変わったため橋を建設する地域の住民の協力を得にくくなり、住民との意思の疎通を欠くことにもつながっていった。先も述べたが、請負業者への一方的な責任施工の押しつけも問題が生じることになる。責任施工は、発注者側の技術者と請負業者側の種々な面での信頼関係が構築できていなければ好ましい結果とはならない。
 住民の声を日々聞ける立場の発注者側(官)の技術者は、地域カラーを知ることが可能な立場にあり、季節折々の催し等に接する機会を多々持つ、しかし、橋に携わる請負業者の技術者は、自分の技術者人生の中で、同じ地域で仕事を行うことは二度三度あるとはとても考えられない。さらに、発注者側の技術者も、「現場主義」との掛け声は良いが、数少ない人数で内業にあたらなくてはならない現状から、行きたくても現場に行くことができないのが現実である。現場に行きたくても行く時間もなければ行く手段もない、これが行政技術者の現状である。それでは、私案であることをお断りして、橋にとって厳しい現実を乗り切る手段を次に示すこととする。

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