道路構造物ジャーナルNET

鋼橋を健全に保つために

-効率的な防食サイクルの確保に向けて-

公益財団法人 東京都道路整備保全公社
一般財団法人 首都高速道路技術センター

髙木 千太郎

公開日:2015.02.02

 はじめに

 これまで、橋の、特に鋼橋の主たる損傷である防食機能の劣化と腐食に対する防食方法について、昨年発刊した「鋼道路橋防食便覧」を主に解説してきた。内容は、現在鋼道路橋に発生している損傷、損傷の原因、点検・診断、措置方法などについてポイントを絞って示している。連載を読まれてまだまだ不十分、その先が知りたかったと思われている方々も多くいることと考えるが、次の機会に記述するとし今回を最後に連載を終了とする。
 そこで、連載の最後にあたって、「鋼橋の健全を保つために」をターゲットに防食サイクルの確保に向けた考え方について話を進めることにする。橋には、車両や人々が通行する路面、路面を支える床版、床版と橋台、床版と床版を連結する継手である伸縮装置、車両や人が橋の上から落ちないように高欄や防護柵などが設置されている。これらはいずれも、通行する車両や人々が不快と感じないように可能な限り段差を少なくし、雨水が滞水しないように、人が触れても傷を負わないように、また、橋を渡る楽しさを感じられるように多くの配慮がなされている。その一つが、鋼橋の各部材に施されている塗装を始めとする種々な防食法である。橋は、多くの部材で作られているが、いずれも人々が橋に求めている機能を長い間保つために必要なものであり、どれ一つ欠けても求められている性能や機能に影響が出てくることになる。


        写真-1 著しい腐食によって機能を失いつつある道路橋

 「ノーメンテナンス」は勘違い
 防食対策に完璧はない

 橋を管理するということは、人々が安全・安心かつ快適に橋梁を使うことができ、橋本来が持っている美しさを保ち、想定された寿命を失うまでは十分使いことができる様に効率的、効果的に管理し、資産価値を低下させないように種々な措置を講ずることである。橋の管理者は、物言わぬ橋を日々適切に管理し、年を経るごとに衰える性能、機能を、最善の策によって補い、橋を使う人々が不安を感じないようにするのが務めである。鉄、鋼で造られた橋は、防食を施さなければ錆びる。橋が錆びるのを防ぐのが防食であるが、「人も予算も減らされているこの時代に手間暇かけて防食するのは大変だ」と考え、防食しなくてもよい材料の適用を考える。期待する材料の橋を建設すると、どのような環境においてもノーメンテナンスとなったと勘違いし、橋に必要な日々の管理をすっかり忘れてしまったのが昨今の技術者に多いのは残念である。防食対策に完璧は無いが、現在使われている鋼橋に対する防食法は、適切に選定、施工し、こまめなメンテナンスさえ行えばかなりの期間防食機能を発し、腐食を防ぐことができる。そのためには使われている橋の日々変わっていく状況を定期的に点検・診断し、その都度効果的な措置を決め、計画的に対策することが重要である。ここで示したように、防食にもPDCAサイクルが必要である。写真-1に示す道路橋のように、たかが防食と軽んじていると、橋から大きなしっぺ返しを受けるのは過去の事例からも明らかである。それでは、ここで、橋本来の設計、施工、維持管理について整理し、その後に適切な防食機能確保のサイクルについて解説することとする。

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