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既設無塗装耐候性鋼橋の活用効果

大日コンサルタント株式会社
コンサルタント事業部 保全部 技術部長

坂井田 実

公開日:2015.01.09

 予防保全的な対策が必要な橋梁も

 6 既設耐候性鋼橋への部分塗装
 架け替えによる改良には莫大な費用がかかることから、腐食環境や水仕舞への配慮不足から不幸にも悪性さびを生じてしまった耐候性鋼橋についても補修による長寿命化を図る必要がある。基本的な方針として、水仕舞の不備が原因である局所的な劣化を生じる部位には長時間にわたる滴水の除去対策を行い、架橋位置選定の不備が原因である広範囲な劣化を生じる部位には塗装による被覆防食の強化を図るのが適切と考えられる。
 したがって、波しぶきや霧、日当たり、植生などの改善が困難な環境にある橋梁に対しては、全面に塗装を施して塗装橋として余生を全うさせ、それ以外の限定的な悪性さびが生じる橋梁に対しては、導水管の延伸や横引き排水の除去などの対策と止水の再劣化を前提とした桁端等の部分塗装の組み合わせによって、劣化があまり進行していない早い段階で予防保全的に対策を講じることが望ましいと考える。
 耐候性鋼橋に対して、保護性さびの生成を促したりゆっくりと生成させるための塗装(さび安定化処理剤塗布)が新設時に行われる場合がある。ここで提案している部分塗装は保護性さびでは対処できない箇所の防食のための塗装であるため、普通鋼材を用いた一般の塗装橋に用いられるのと同じ塗装である。保全対策としての塗装時には、塗装橋においてさびや既設塗膜を除去してから塗装を行うのと同様に、既に生成しているさびを除去(下地処理)し、一般の塗装橋に用いる塗装を行えばよい。

 7 おわりに

 岐阜県管理の橋梁を例にとって耐候性鋼橋の恩恵について示したが、直轄管理の国道、市町村道、高速道路でも多くの耐候性鋼橋が既に建設されており、これらを含めて既に多大な恩恵を享受していることを知っておきたい。また一方で、不適切な環境に建設されてしまった橋梁については、初期投資に失敗したかもしれないが、鋼材の腐食減耗によって利用できなくならないように早目に処置し、新設橋梁については架橋位置や水仕舞に対する配慮を確実に行い、より経済的で手間のかからないインフラの整備と保全に努めていきたい。

参考文献
1) 建設省土木研究所,鋼材倶楽部,日本橋梁建設協会:耐候性鋼材の橋梁への適用に関する共同研究報告書(XX),1993.
2) 紀平ら:耐候性鋼さび安定化評価技術の体系化,土木学会論文集No.745,2003.
3) Hayashi, K. et al : Performance of uncoated weathering steel bridges against deicing salts in Gifu Prefecture, IABMAS ’04, 2004.
4) 紀平ら:耐候性鋼の腐食減耗予測モデルに関する研究,土木学会論文集No.780,2005.
5) 古澤ら:環境データ調査に基づく無塗装耐候性橋梁の維持管理手法構築の提案,JSCE年講#60,2005.
6) 日本鋼構造協会:耐候性鋼橋梁の可能性と新しい技術,JSSCテクニカルレポートNo.73,2006.
7) 鹿毛ら:実曝露試験に基づくニッケル系高耐候性鋼の長期腐食量予測,Zairyo-to-Kankyo Vol.55,2006.
8) 村上ら:岐阜県下無塗装耐候性鋼橋の腐食環境簡易評価法に関する研究,鋼構造年次論文報告集No.14,2006.
9) 日本鋼構造協会:耐候性鋼橋梁の適用性評価と防食予防安全,JSSCテクニカルレポートNo.86,2009.
10) 日本道路協会:道路橋示方書・同解説 Ⅱ鋼橋編,2012.
11) 坂井田:耐候性鋼橋の課題と対策,岐阜県コンクリート補修協会平成26年度第1回技術講演会パネルディスカッション資料,2014.

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