道路構造物ジャーナルNET

既設無塗装耐候性鋼橋の活用効果

大日コンサルタント株式会社
コンサルタント事業部 保全部 技術部長

坂井田 実

公開日:2015.01.09

 耐候性鋼材は、塗装を用いずに鋼橋のLCCの縮減が図れる防食技術として使われてきている。しかし、近年、腐食環境が厳しい箇所で使用した無塗装耐鋼性鋼橋の中には、損傷が起きている箇所があることも事実である。そうした状況を踏まえ、内陸部に建設されている多くの既設無塗装耐候性鋼橋についての健全度評価と点検を実施している建設コンサルタントの技術者の視点から、既設無塗装耐候性鋼橋の現状とその有用性、腐食が起きる原因、その対策について大日コンサルタント株式会社 コンサルタント事業部保全部技術部長の坂井田実氏に論じていただいた。(井手迫瑞樹)

無理解による否定はないか
防食費用削減効果はある

1 はじめに
 橋梁用の構造材料には、木材や石、コンクリートと並んで旧来より鉄が用いられている。鉄という素材の持つ強度や粘り、加工性の良さを活用するために、鉄鉱石に含まれる酸化鉄を高炉等で還元し、純鉄に近い状態で用いているが、水に濡れることにより大気中の酸素と反応して腐食という劣化現象を生じ、断面欠損による部材強度の低下を生じる。そのため、鉄を構造材料として用いるためには防食が欠かせない。
 経済的な防食技術のひとつとして、高機能鋼材の一種である耐候性鋼材が多くの橋梁に適用され、活用されている。たとえばわが国の道路橋における無塗装耐候性鋼橋の歴史は1967年の知多2号橋の建設から始まり、まもなく50年を迎えようとしている。50年という歴史はその他の構造材料に比べると非常に浅く、その劣化の特性やその抑制方法、維持管理を行う上での塗装との取り扱いの差異等について、現在においても新たな課題が見つかり、研究が進められている状況である。これまで、耐候性鋼材についての理解の未熟さゆえに、腐食環境の厳しい位置に建設される、水仕舞に対する配慮が不足するなどした橋梁が数多くあることは事実であり、近年建設された橋梁にもなお同様な不備が見られるものがある。反省を踏まえ、計画時点における維持管理に配慮した設計については改善が積極的に進められ、設計マニュアル等の改訂が進められている。しかし一方で、不適切な環境に建設されてしまった既設耐候性鋼橋や水仕舞に不備のある橋梁を長寿命化する(期待される供用期間を全うできそうにない橋梁をできるだけ長期間健全に保つ)方法については、補修設計を行う技術者に任せられるのみで、あまり積極的に検討されていないのが現状である。
 現在、防食費用削減の効果が実際に得られているにもかかわらず、鋼橋の設計や施工、管理に携わる技術者に鋼材の腐食メカニズムや耐候性鋼材の防食特性、健全度の評価方法、耐候性鋼材が劣化した際の補修の要点が充分に理解されていないため、その効果が否定的に見られる状況が生じていると感じられる。
 研究分野においても、劣化時の評価や劣化抑制のための技術開発に重点が置かれるため、健全な状況に関する情報が少ない。そのため、点検時の健全度評価に関する手引書が刊行されているにもかかわらず、実際に行われている橋梁点検においてはその評価にばらつきが生じているようである。劣化の兆候を見つけているにもかかわらず、対策を迷っている数年間に劣化が進行して断面欠損を生じた場合において、無塗装耐候性鋼橋だから悪いとの評価を耳にすることがある。また鋼材表面がほとんど濡れることのない良い環境にある部材でまったく腐食減耗が進んでいないにもかかわらず、架設工事での部材仮置き時に生じた赤さびや床版のセメント分の付着を異常な変色として評価されることが考えられる。
 そこで、内陸部に建設されている多くの既設無塗装耐候性鋼橋についての健全度評価と点検を実施している建設コンサルタントの技術者の視点から、既設無塗装耐候性鋼橋の現状についていくつか述べてみたい。

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