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国道51号神宮橋は橋長1,075mの新橋に架替え

2024年新年特集① 関東地方整備局 圏央道未開通区間の工事が進捗

国土交通省
関東地方整備局
道路部長

野坂 周子

公開日:2024.01.01

橋梁3,518橋とトンネル106箇所を管理
 定期点検結果 Ⅲ判定は橋梁で19%、トンネルで26%

 ――保全事業について。管理橋梁の内訳は
 野坂 2023年3月末現在で、3,518橋を管理しています。延長別では、15m未満が約37%と最も多く、100m以上の長大橋は約11%です。橋種別では、鋼橋が約41%、PC橋が約24%、RC橋が約14%、溝橋が約20%などとなっています。供用年次別では1910年代が最も古く、約30%が架設後50年を経過しています。


管理橋梁の内訳

 ――トンネルについて
 野坂 106箇所を管理していて、延長500m未満が約71%、1,000m以上が約10%となっています。工法別では、NATMと矢板がともに約39%、シールドが約2%、その他(建設年次が古く不明等)が約20%です。シールドトンネルは、国道357号東京港トンネル(山側・海側)の2箇所となります。供用年次別では1920年代が最も古く、約40%が建設後50年を経過しています。
 橋梁では各路線同程度の割合となっていますが、トンネルは国道16号と127号で約39%を占めています。


管理トンネルの内訳

管理橋梁・トンネルの路線別内訳

 ――橋梁とトンネルの定期点検結果を教えてください
 野坂 橋梁では、判定区分Ⅰが1,256橋(36%)、Ⅱが1,567橋(45%)、Ⅲが669橋(19%)、Ⅳが23橋(1%)です。
 トンネルでは、Ⅰが4箇所(4%)、Ⅱが73箇所(69%)、Ⅲが28箇所(26%)で、Ⅳはありません。(橋梁・トンネルともに2023年3月末時点)


定期点検結果

 ――橋梁23橋が緊急措置段階である判定区分Ⅳとなっていますが、どのような損傷・劣化が確認されたのですか。また、措置状況は
 野坂 主桁・横桁の腐食、床版(デッキプレート)の腐食・変形・欠損、支承の機能障害、橋台の洗掘などとなっています。このうち6橋については恒久的な措置が完了しています。また、残りの橋梁についても緊急措置を実施し、通行可能な状態となっております。
 ――点検を進めてみての橋梁の損傷傾向を橋種別、部位別にお教えください。また、その原因についてもお願いします
 野坂 定期点検で確認された損傷の発生部位としては、上部構造の主桁、床版、支承部の支承本体が多くなっています。供用後100年近い橋梁もあり、それらの橋梁で損傷がかなり発生しています。
 鋼橋では、腐食、変形・欠損、亀裂が多く、コンクリート橋では剥離・鉄筋露出、浮き、ひび割れが多くなっています。支承本体は腐食や機能障害が多く確認されています。
 想定される主な損傷要因はいずれも防水・排水工の不良で、鋼橋では疲労も挙げられます。凍結防止剤を散布する地域で水がうまく抜けていない箇所や、沿岸部で損傷が進んでいます。
 ――トンネルについては
 野坂 山岳トンネル(矢板)では、補強・補修材の破損が多く、山岳トンネル(NATM)では、浮き・剥離の損傷が多くなっています。

2018年度までのⅢ判定橋梁はほぼすべてで修繕等の措置に着手
 上部工補修・補強 2023年度は16橋で施工完了

 ――橋梁の定期点検結果に基づいた対策の進捗状況は
 野坂 2014年度から2018年度までの5年間で3,291橋の定期点検を実施し、そのうち早期措置段階であるⅢ判定の橋梁が429橋ありました。それらについては、2022年度末時点でほぼすべて(99%)で修繕等の措置に着手しています。
 鋼橋の腐食による劣化であれば、部分的な当て板、コンクリート部の損傷はひび割れ補修や断面補修が多くなっています。


橋梁の損傷状況と対策工の事例

 ――判定区分Ⅱの橋梁の対策進捗状況はいかがですか
 野坂 Ⅲ判定の対策を優先的に進めており、ほとんど着手できていません。
 ――トンネルの進捗状況は
 野坂 2014年度から2018年度までの5年間で87トンネルの定期点検を実施し、そのうちⅢ判定のトンネルが16トンネル、Ⅳ判定のトンネルが3トンネルありました。そのうちⅣ判定については、すべてのトンネルで措置が完了しております。またⅢ判定については、2022年度末時点ですべて(100%)で修繕等の措置に着手しています。修繕内容としては、剥落防止対策や漏水対策、断面修復が多くなっています。
 橋梁と同様にⅢ判定の対策を優先的に進めているところです。


トンネルの損傷状況と対策工の事例(国道16号貝塚トンネル)

 ――上部工の補修・補強について、2023年度施工済み(予定)数量と、具体的な橋梁での事例をお教えください
 野坂 2023年度に施工が完了した橋梁は16橋です。鋼橋が9橋、RC橋が5橋、PC橋が2橋となります。主な損傷として鋼橋では、主桁・床版などに腐食・き裂などの損傷が発生し補修をしています。コンクリート橋では、主桁にひび割れ、浮き、剥離、鉄筋露出などが発生して補修をしています。
 ――床版防水の施工状況について
 野坂 床版防水工については、既設橋は舗装打換え等の補修に合わせて施工するなど、随時対応しています。

塩害対策として電気防食を採用
 国道18号新鳥居橋でアルカリ骨材反応による劣化が発生し対策を行う

 ――塩害、アルカリ骨材反応などによる劣化の有無は。劣化があればどのような形で出ていますでしょうか、またその対策事例をお教えください
 野坂 塩害については、山間部の橋梁は凍結防止剤散布によって、沿岸部の橋梁は海からの飛来塩分によって、それぞれ塩害が確認されています。橋梁ごとに取り巻く環境や損傷の種類・程度など異なりますので、引き続き原因に応じた適切な対策を実施して長寿命化を図っていきます。
 対策例として、沿岸部の橋梁で犠牲陽極による電気防食や溶液塗布による脱塩などを実施、山間部の橋梁では同じく犠牲陽極による電気防食のほか、断面修復工を実施して、健全な躯体に機能回復を実施した上で、防水対策を実施しています。


塩害による損傷事例(国道1号(西湘バイパス)小余綾高架橋)

 アルカリ骨材反応による劣化は、国道18号新鳥居橋(長野県飯綱町)などで発生しています。なお、最新の点検結果でアルカリ骨材反応によりⅢ判定の損傷が発生しているのは同橋のみとなります。同橋では、橋脚梁部に遊離石灰をともなう亀甲状のひび割れが発生し、横梁先端下面に著しい剥離・鉄筋露出が確認されていたことから、2020年度に修繕工事を実施しました。内容は、ひび割れ補修工、断面修復工、表面保護工(含浸材)、伸縮装置の取替えなど防水対策工となっています。

緊急輸送道路上の橋梁(15m以上)の耐震補強は85%完了
 国道6号中川大橋の耐震補強・補修工事はECI方式を採用

 ――耐震補強の進捗状況は
 野坂 2021年度末時点の緊急輸送道路上の橋梁(15m以上)で耐震性能2を確保する耐震補強進捗率は85%です。耐震性能3を確保する対策は管理橋梁すべてで完了しています。


耐震補強事例。国道17号笹目橋:落橋防止(左)/国道15号旭高架橋:下部工補強(中央)/国道246号鶴間高架橋:支承補強(右)

 ――施工中、施工予定で特徴的な耐震補強事例がありましたら
 野坂 国道6号中川大橋(東京都葛飾区、橋長134.4m)の耐震補強および補修で、技術提案・交渉方式(技術協力・施工タイプ「ECI方式」)による業務発注および工事発注を行っています。当地整の耐震補強・補修で初めてECI方式を採用したもので、現在、契約手続き中です。
 ――難易度の高い工事になるのですか
 野坂 耐震補強と補修を同一工事で実施するにあたり、橋梁補修工事では交通量の多い国道6号の交通への影響を最小限に抑える必要があり、橋脚補強工事では渇水期施工の制約があります。一方で、河川内に高水敷がなく、作業ヤードや工事用道路の確保が困難なことに加え、施工ヤードにおいても桁下空間が低く、仮設工や主要工種の施工条件が厳しい現場となっています。
 本橋梁と接続する現道上では、首都国道事務所が新宿拡幅事業を進めていて、将来、さらなる交通量の増加が見込まれるため、交通規制にともなう現道交通への影響の観点から、早期に耐震補強および補修工事を実施するものです。


中川大橋の現況

 ――2023年度の鋼橋塗替え(予定)橋梁とその面積は。また、溶射などの新しい重防食の採用などがありましたら教えください
 野坂 国道19号穂刈橋で約2,800㎡など、11橋で塗替えを予定しており、総面積は7,360㎡となります。
 金属溶射の採用実績はありません。コストはかかるものの、耐久性が向上するため、腐食環境が厳しい橋梁での実施を今後検討していきます。


国道19号穂刈橋 塗替え前(右)と塗替え後(左)

 ――PCBや鉛など有害物質を含有する既設塗膜の処理については
 野坂 PCBや鉛などが検出された場合は特定管理産業廃棄物、PCBや鉛など汚染物が出ない場合は産業廃棄物として処理しています。
 ――低濃度PCB廃棄物の処分期間が2027年3月末で終了しますが、既設塗膜にPCBの含有が確認されていて、塗替え塗装未完了の橋梁数は
 野坂 2023年3月末時点で、30橋あります。
 ――支承および伸縮装置の取換えについて、2023年度の施工(予定)箇所数は
 野坂 支承取替えは14橋で、伸縮装置の取替えは2橋で予定しています。

国道20号鶴川橋で耐候性鋼材が腐食 補修工事を実施予定
 防災要対策箇所は約250箇所 そのうち、34箇所で対策完了

 ――耐候性鋼材を採用した橋梁数と健全度について
 野坂 6橋で耐候性鋼材を採用しています。そのうち1橋で主桁に腐食が確認されていて、部材単位の健全度でⅢ判定となっています。
 ――Ⅲ判定の橋梁について具体的にお教えください
 野坂 国道20号鶴川橋(山梨県上野原市)で、伸縮装置からの漏水や桁端部での滞水が主原因と推定されます。現状ですでに著しい減肉が確認されていますので、部材の耐荷力低下が懸念されています。また、前回点検から損傷が進行していることや凍結防止剤散布により、今後さらに損傷が進行する可能性があります。そこで、橋梁構造の安全性の観点から早期に措置を講ずるべき状態と判断して、Ⅲ判定となっています。今後、錆転換型防食塗装による補修工事を予定しています。


国道20号鶴川橋の損傷状況

 ――全国的に異常気象による土砂災害が相次いでいる中で、防災対策についてどのように考えていますか
 野坂 災害による物流の停滞や集落の孤立を防ぐために対策を進めていますが、地域の道路に一番精通している各事務所の職員がどのように交通を守るかを考えていくことが、国土強靱化につながると考えています。そのため、各事務所を含めた当整備局の道路に携わる全職員が技術的な知見としてやるべきことをやりたいと思える環境を整えていくことを第一に考えています。
 また現実として、管内での道路災害はのり面が多くなっています。道路区域外からのもらい災害もかなりあり、その対策は難しいものとなっていますが、地権者等の協力を得ながら進めていきたいと思います。
 ――具体的な防災対策の要対策箇所数と対策事例を教えてください
 野坂 2021年3月末時点の要対策箇所数は「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を含め、約250箇所です。このうち2023年3月末時点で34箇所について対策が完了しています。残る箇所についても引き続き、対策を行っていきます。
 具体的な事例では、国道20号神奈川県相模原市緑区吉野地区で、のり面保護工などの防災対策を実施しています。


国道20号神奈川県相模原市緑区吉野地区の防災対策

 ――保全分野における新技術・新材料などの活用事例がありましたら、お教えください
 野坂 2022年度には横浜国道事務所の橋梁点検業務で、構造物点検ロボットシステム「SPIDER」を活用しました。ドローンに搭載したカメラでコンクリート構造物表面を撮影し、その画像からオルソ画像を作成して、ひび割れや遊離石灰などの損傷性状を抽出する技術です。2021年度には甲府河川事務所、東京国道事務所のトンネル点検で、走行型高速3Dトンネルシステム「MIMM」を使用し、覆工表面ひび割れや漏水等の変状や断面形状、巻厚、背面空洞などを計測しました。
 橋梁補修工事では、千葉国道事務所での「R4国道357号江戸川左岸高架橋(海側)床版取替他その5工事」で「クイックデッキ」を採用しています。


点検支援技術の活用事例/クイックデッキ設置事例(国道357号江戸川左岸高架橋)

 ――ありがとうございました
(聞き手:大柴功治)

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