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ロッカーピア、長大特殊橋の耐震補強も順次進める

NEXCO西日本 大規模更新は重交通路線対応へ

西日本高速道路株式会社
保全サービス事業部長

安達 雅人

公開日:2019.11.27

耐候性鋼材74橋で採用
 うろこ状の錆が出ているケースも

 ――耐候性鋼材を採用した橋梁で、錆による劣化・損傷が報告されている事例が出てきていますが、西日本高速道路では、採用事例がどれほどあり、現状どのような健全度を示しているのか教えてください
 安達 当社で耐候性鋼材を使用して建設した橋梁は上下線別カウントで74橋あります。高知道に圧倒的に多く存在しています。代表的な損傷事例としては、床版の打ち継ぎ目などのひび割れからの漏水や、伸縮装置の劣化による漏水箇所を中心に錆などの変状が見られています。


耐候性鋼材損傷状況写真①

 ――健全度で言うとどのような状況ですか。また、維持管理や補修はどのように対応していきますか
 安達 74橋の健全度はⅢが8橋、Ⅱが65橋、Ⅰが1橋です。
 高知道などでは、耐候性鋼材を採用している橋梁の中でもグレートセパレートしている箇所で、凍結防止剤が散布されたものが下フランジ上面やウエブに塩分が溜まり、うろこ状の錆が出たり、桁端部で同じく凍結防止剤を含んだ漏水の影響によりフランジにこぶ状の錆が出たりするケースが見られています。水洗いなどを行うとともに、(水がフランジまで到達しないように)ウエブ中間にスティフナーを付けたりしています。また、損傷が著しい個所は塗装や当て板などを施していきます。
 耐候性鋼材橋は、適切な個所に架けると非常に良い性状を示すのですが損傷が出やすい端部だけでも予防的に塗装するなどの処置が必要です。




耐候性鋼材橋損傷状況写真②

異常気象 雨の降り方が明らかに違う
 140mを超える高さから山が滑った事例も 

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、NEXCOでも道路に面する斜面や、古い法面、盛土構造などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか、具体的な事例や計画を交えてお答えください
 安達 雨の降り方が本当に変わってきています。これだけ線状降水帯が発生して雨が降り続けると山の地盤も緩んで、大きな災害を引き起こします。新見市内を走る中国道でも災害対策を行いましたが、区域外の140mの高さを超える個所の山が滑り、高速道路本線に影響を与えています。


中国道の新見市内でののり面の災害/同復旧状況

 決定的な方策はないのですが、高速道路へ影響を及ぼす渓流への対策として、被災した個所を中心に道路区域内で対策可能な“高エネルギー吸収型防護柵”の設置を進めていきます。
 盛土においては、材料に粘性土、真砂土、山砂、泥岩またはしらすが用いられており、盛土内に水位がある盛土や高さが3段以上の盛土で災害が発生している事例が多く、これらに該当する盛土においては、水抜きボーリングおよび、のり尻にふとんかご等を施工し、盛土内の浸透水を排除する対策を進めています。
 切土に施工されている旧タイプアンカーにおきましては、防食機能が不十分であり、健全度が低下して鋼材が破断する事象が生じています。このまま放置するとのり面全体の安定が確保できなくなることが想定されるため、健全なうちに防食機能を有した新タイプアンカーによる再施工を進めていきます。


のり面のアンカー補強

 旧基準で施工された小断面の排水溝や排水溝の合流部からの溢水に起因したのり面の崩壊なども顕著であるため、幅が0.3m未満の小断面排水溝の取替や改良、3段以上の法面における排水構造物の合流部の改良などを実施しています。
 ――立川橋では、山の木の長さの変化が気象の激化と相俟って、建設時は橋梁まで適切な距離を保っていたはずが、崩落により流失した木が桁に引っかかり、土砂がその上に載り、はじくような形で桁を回転させて落橋に至った可能性があります。こうした個所は同橋だけではないのではないでしょうか
 安達 そうですね。対応が難しいレベルになっている状況であると切実に感じています。区域外の貰い災害や、山の環境の変化への対応は大きな課題です。


立川橋の被災状況

4車線化 舞鶴若狭道、長崎道、阪和道、湯浅御坊道路が進捗

 ――そのほか、4車線化事業の計画及び進捗について
 安達 2018年度から19年度にかけて舞鶴若狭道(綾部PA~舞鶴西間)、高松道(鳴門~高松市境間)、長崎道(長崎芒塚~長崎多良見間)の区間で、工事が完成した区間から順次4車線運用を実施しています。
 現在施工中の4車線化事業の工事進捗は、舞鶴若狭道(福知山~綾部間)、長崎道(長崎~長崎芒塚間)、阪和道(御坊~印南間)、湯浅御坊道路(有田~御坊間)において順次工事展開中です。
 また、近年事業化された4車線化事業の区間についても、一日も早い完成を目指して事業を進めてまいります。
 ――付言して
 安達 維持管理はこれからもずっと続いていきます。一方で自然災害による被害は甚大化しており、道路区域外からの貰い災害対策も含めて今までにない対応も考えていかなくてはなりません。大規模更新や耐震補強も含めて事業量が非常に大きくなってきていますし、難易度も非常に上がっています。限られた人材や経営資源で事業を進めていくには、効率化が何よりも必要です。何とか工夫してこなしていくように頑張っていきたいです。
 ――社会的コストの削減や効率化の追求は非常によくわかるのですが、新名神の1連の事故のこともあります。新技術を活用するということは反面、リスクを負う事でもあります。兼ね合いをどのように考えますか
 安達 もちろん、安全は全てに優先すると考えます。新名神などでは、そのために必要なコストも投じています。その上で効率化も図っていきたいと考えています。
 ――ありがとうございました
(2019年11月27日掲載)

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