都市部の大規模更新 社会コストのミニマム化を求めたい
う回路の周知、別路線や鉄道へのシフトを促す広報が大事
――大規模更新・大規模修繕技術において、今後欲しい技術とは何ですか。今後は4万台の交通量を抱える中国道(吹田JCT~中国池田IC)の大規模更新を控え、今後は近畿道の大規模更新も視野に入りますが
安達 採用した主な技術としては道谷第二橋で採用した半断面床版取替工法などがあります。技術面では当社単独では賄いきれない事業だと考えています。そのためにも民間から設計や施工の画期的提案を戴きたいと思っています。
道谷第二橋で採用した半断面床版取替工法
――都市部の特定更新事業を行う為にNEXCOが考える一番の課題はなんでしょうか
安達 都市部の上部工を触るとなると、工期の短縮がいかにできるか、交通規制をミニマムにできるか、それを受注者に対して求めたいです。
一方で、中国道(吹田JCT~中国池田IC)の大規模更新は新名神ができて、初めて着手できるようになった重交通路線の大規模更新事業です。これをなすためには、施工時におけるわかりやすいう回路、う回所要時間の明示などの渋滞回避のための広報を強力に行っていかなくてはなりません。工事だけでなく総合力の時代になってきています。
――大規模更新という名称を使っていませんでしたが、重交通路線の床版取替の画期は九州道向佐野橋の床版取替であると思います。同地も10万台の1日交通量を誇りましたが、1年以上前からの広報、車から電車への通勤を促すことなどにより、大きな成果を挙げました。この成功体験をうまく活用したいですね
安達 そうですね。中国道(吹田JCT~中国池田IC)の大規模更新についても広報はなるべく早く取り掛かる必要があります。
支承取替 2018年度は223箇所で実施 19年度は20箇所
伸縮装置取替 18年度は387箇所 19年度は590箇所で施工
――支承取替やジョイントの取替およびノージョイント化について、昨年度実績、今年度の施工予定個所数と取り替える際の工法・種類をお答えください
安達 支承取替は、2018年度は223箇所(基)で行いました。関西支社管内が27基、九州支社管内が196基です。老朽化・損傷によるものに加え、九州支社管内では熊本地震対応に伴うものが含まれているため、例年より非常に多くなっています。19年度の予定は約20基で主にBP支承を取り替えます。
熊本地震で大きな損傷を被った木山川橋
同復旧工事状況
伸縮装置取替は、18年度は387箇所、19年度は590箇所です。主に老朽化、損傷に伴うもので、今後も点検結果を踏まえつつ、計画的に取替対応していきます。取替は荷重支持→荷重支持、埋設→埋設、埋設→荷重支持などがあり、現地に合わせて対応しています。また、高速道路リニューアルプロジェクトで取り組む床版取替工事では、床版取替に合わせて既設の伸縮装置を撤去し、延長床版を採用するケースもあります。
埋設型ジョイントとして、MMジョイント等を採用しています。
MMジョイント採用例
ノージョイント化は、西日本高速道路として施策的なものはありませんが、現地状況に応じて個別対応を行っています。例えばアバット側と床版側を鉄筋でつないでSFRCで一体化して防水工をかけ、舗装を敷設するノージョイント化を施工している例があります。
塩害 内在塩分由来は阪和道、中国道、九州道、沖縄道の一部
凍結防止剤散布は中国道、米子道、舞鶴道、浜田道
――塩害やASRなどによる劣化の有無とその対策について
安達 内在塩分については、海砂使用かつ1986年の塩化物総量規制以前で整理すると、主に阪和道、中国道、九州道および沖縄道の一部で見られます。
塩害は、冬季の交通確保に伴う凍結防止剤散布が主な原因です。凍結防止剤の散布量は、特に冬季の環境が厳しい中国道、米子道、舞鶴道、浜田道などが多く、全体の6割(約15,000t)を占めています。
塩害により劣化した橋梁①
塩害により劣化した橋梁②
こうした内在塩分や塩害による損傷は橋梁上部構造が顕著で、壁高欄、地覆にも見られ、浮きや鉄筋露出などが発生しています。
対策としては、断面修復や繊維シート工、水を止める意味からも伸縮装置の交換や止水対応、樋の設置、高欄目地部の閉塞といった工法を採用しています。床版取替工における延長床版の設置も対策の一環です。
ASRは四国支社を除く3支社管内で損傷が生じています。特に九州道、長崎道、中国道で多く見られています。主な対策実績としては防水工、樹脂注入工、部分打替えなどです。
ASRは九州道、長崎道、中国道で見られる
大きな変状は生じていないが点検で注視
――ASRに関しては骨材の内容を調べていますか
安達 調べています。極端に劣化の進行が激しくなった箇所はありません。ただ、遅延性の骨材を有している箇所もありますので、点検の際は注視しています。
鋼橋塗替 2018年度10橋8万4千m2、19年度31橋224,000m2
既設塗膜除去は湿潤化(塗膜剥離剤+ブラスト)を採用
――鋼橋の塗り替えについて2018年度の塗替え実績と19年度の塗り替え予定を教えてください。また、PCBや鉛など有害物質を含む塗膜の除去について、どのような対応を行っているか教えてください
安達 2018年度の実績は10橋84,000m2、19年度予定が31橋224,000m2です。塗り替え塗装は塗膜の劣化度評価をもとに計画的に進めています。
塗装劣化状況写真①
塗装劣化状況写真②
塗膜剥離剤の施工例(膨潤した状態)
有害物質に関して、PCBから申し上げますと、その処分は、法令(ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理に関する特別措置法)に基づき計画的に進めています。鉛など有害物質を含有する既存塗膜の塗り替えにあたっての既存塗膜の除去は、湿潤化(塗膜剥離剤+ブラスト)で行っており、対策工法を始め、環境測定の実施、各種防護資器材の使用も含め、労働基準監督署の指導を仰ぎつつ進めています。
――関西支社では、近畿道の橋梁で循環式エコクリーンブラストを用い、中国道の橋梁ではIH式塗膜剥離装置(+ブラスト)を採用して、既設塗膜の除去および1種ケレンする施工も採用していますが、これは
安達 試験的に採用している状況で、直ちにこれらの工法に切り替えるといった状況ではありません。
ブラストの施工例