道路構造物ジャーナルNET

2017年新年インタビュー①

NEXCO西日本 熊本地震からの復旧、大規模更新事業の進捗を聞く

西日本高速道路株式会社
取締役常務執行役員(保全担当)

高倉 照正  氏

公開日:2017.01.01

大規模更新・大規模修繕事業は1兆1,221億円
 床版取替が最大で5,669億円、土構造の補修補強が2,463億円

 ――次に大規模更新・大規模修繕事業についてお聞きします。規模および進捗状況から教えてください
 高倉 大規模更新・大規模修繕事業については、「高速道路リニューアルプロジェクト」と呼称して進めていきます。総額は1兆1,221億円となっています。そのうち、大規模更新は、対象が全て橋梁で、そのうち床版取替が98㌔(5,669億円)、桁の架替が12㌔(965億円)です。大規模修繕は橋梁が床版の高性能床版防水化など111㌔(456億円)、桁補強などが37㌔(560億円)、土構造物の補修補強が13,820箇所(2,463億円)、トンネルのインバート設置工などが46㌔(1,107億円)です。
 平成27年度は大規模更新事業として床版取替工を7件17橋、大規模修繕事業として法面補修工事(グラウンドアンカー設置工事)を2件、高性能床版防水を伴う舗装修繕工事を4件、総額約100億円分の工事を発注しました。
 今年度から本格的に発注し始める予定だったのですが、地震の影響もあり約200億円程度の発注総額になりそうです。大規模更新事業として中国自動車道大峰橋(下り線)他2橋床版取替工事など7件16橋を発注予定でうち4件10橋が契約済みです。また、大規模修繕工事は盛土補強工事(盛土排水機能強化)を中国自動車道宇佐地区盛土補強工事など3件発注予定であり、1件発注済み、法面補強工事(グラウンドアンカー設置工)は米子自動車道久世IC~江府IC間のり面補強工事など4件発注予定で1件発注済み、舗装修繕工事を伴う高性能床版防水工は中国自動車道広島北JCT~六日市IC間舗装修繕工事など7件発注予定で2件発注済みです。トンネル関係ではインバート設置工、覆工補強工を各1件ずつ発注する予定です。
 なお個別の規模感で申し上げますと、床版取替が平成27年度25,000平方㍍、28年度26,000平方㍍、法面補強工事がグラウンドアンカー施工で27年度100本、28年度750本、高性能床版防水工が27年度42,000平方㍍、28年度60,000平方㍍となっています。

 ――事業規模が本格化するのはいつごろでしょうか。中日本高速道路は以前の社長会見で計画5年後ごろからを示唆していましたが
 高倉 当社もそのくらいになると思います。現在は各所で設計を行っており、立ち上げをできるだけ早くしていきたいと考えています。また、当社では沖縄道や中国道を先行して行っていますが、最終的に交通量の多い関西支社管内の大規模更新・大規模修繕事業に手を付けるには新名神高速が供用を開始して、交通の振り分けができるようにならないと影響の大きさから難しいと思います。特に名神高速や近畿道当たりが大変だと感じています。

床版取替 半割施工ができる工法を検討
 床版防水 高性能床版防水工法が基本

 ――大規模更新・大規模修繕事業を行うにあたって技術上の課題、取り分け床版取替や高性能床版防水工について技術上の課題を教えてください
 高倉 床版取替上の技術的課題としては、長期間の対面通行規制や昼夜終日夜間通行止めが不可能な都市部での社会的な影響低減に努めるための半割施工ができる床版取替工法を検討していく必要があります。道谷第二橋では半断面床版取替工法を試験的に採用しました。


道谷第二橋での半断面施工

菅野川橋(斜角)の床版取替

 また、交通規制形態(対面通行規制や通行止め)においては、大規模な渋滞による社会的影響が予測されます。そのため高耐久性を確保した上での期間短縮工法として、プレキャスト壁高欄などを検討していく必要があると考えています。
 ただ、本来は代替路線さえ確保できれば、広報等を徹底して全面通行止めを行うことが一番良い方策であると認識しています。
 鋼合成桁橋は、これまでの鋼非合成桁橋の床版取替とは違い、鋼桁と床版が一体となって車両荷重を負担することから、交通規制形態や架橋条件などから床版に加えて鋼桁の補強が必要になります。そのため総合的に判断して最善の補強工法を検討していく必要があります。
 高性能床版防水工の課題は、既設床版の脆弱部の除去、床版面の下地処理や天候にも左右され、これまでの床版防水工よりも施工時間を長くとる必要があることから、確実な施工を実施するため、昼夜連続車線規制が必要となります。一方で施工が短期化できる技術開発も求めていきます。
 ――管内では山口高速道路事務所が所管する橋梁でグースアスファルトを防水工に用いる手法も試験的に採用していますね
 高倉 グースアスファルトを床版防水に用いるという手法は選択肢としてありますが、基本は高性能床版防水(グレードⅡ)を施工することだと考えています。課題もありますが、それは各所でトライして知見を高めることで確実性を増していくことで解決していくしかありません。

事業進捗のためIC間の多様な工種を一まとめにした発注を試行
 ゼネコンや橋梁ファブによるJVを想定

 ――大規模更新・大規模修繕事業の円滑かつ効率的な執行のため、大ロット発注を試行されましたが、橋梁ファブの中には、ゼネコンの下請化するのではないか、というおそれがひろがっています。発注案件の選択と規模感、その狙いについてお答えください
 高倉 期間が15年間と区切られており、効率的な事業の進捗を図る必要があります。そのため契約方式についても新たな方式を模索しているものです。NEXCO3社で建設業団体等のご意見を聞きながら、検討してきました。当社が考えているのは、高速道路を利用するお客様にあまり迷惑をかけないような形で施工していく必要ある、ということです。床版取替などを1件、1件出して行くと、交通規制が必要となりますからそれを避けたいということです。
 11月末に公告した中国自動車道(特定更新等)北房IC~大佐スマートIC間(上り線)土木更新工事で新契約方式を試行しました。インターチェンジ間の複数の工種を集約して発注するものです。当区間は、セパレート区間になっており、床版取替などを行う場合、対面通行規制の規制区間が長くなることに加え、長い規制区間の中に様々な異工種が広範囲に分散しています。さらに床版取替の対象橋が上り線側に7橋あるのですが、工事用の進入路が限られています。


中国自動車道(特定更新等)北房IC~大佐スマートIC間(上り線)土木更新工事

 こうした条件から、施工者に、自社の技術力を生かして発注者の仕様にしばられない施工計画を立てることによって社会的影響を最小限にしつつ、より安全な工程管理をしてもらうことを目指します。また、広い工事区間の中で、多工種・複数の工事を同時に行うため、施工者に工事全体のマネジメント(工程管理、連絡調整、リスクマネジメントなど)に関する高度技術提案を求めるものです。そうした提案を総合評価して受注者を選定することを考えています。
 懸念されているJV構成については、ゼネコンや橋梁ファブなどがJV構成員として元請けとして参加できる体制を見込んでいます。こうした契約方式は、中国道で試行し、名神高速や近畿道で花開かせたいと考えています。
 ――ありがとうございました

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