道路構造物ジャーナルNET

2017年新年インタビュー①

NEXCO西日本 熊本地震からの復旧、大規模更新事業の進捗を聞く

西日本高速道路株式会社
取締役常務執行役員(保全担当)

高倉 照正  氏

公開日:2017.01.01

全体が見えない中、走りながらGW前の交通開放を目指す

 ――交通開放のための仮復旧に関してもう少し振り返って下さい
 高倉 地震が起きた時期はご存じのとおりGWの直前でした。1日も早く復旧したいという思いがあり、GW前の復旧を目指しました。しかし正直言って、全体の被害内容がきちんと見えた上で、その方針を出したわけではなく、走りながら出したものでした。最終的には現場の頑張りもあり、なんとかGW前に復旧できた、というのが実感です。

木山川橋 中間径間にベントを設置
 BH杭を15㍍打ち込み支持をとる

 ――仮復旧で技術的に厳しかったポイントは
 高倉 一つは軟弱地盤です。木山川橋の仮復旧において、ベントで上部工と交通荷重を支えるためには基礎杭を打たなくてはいけませんが、軟弱地盤であり、その対応が極めて難しい状況でありました。GW前は待ち受けベント――既存フーチングの上あたりにベントを構築して、落橋を予防するとともに作業場を確保するという観点でのベント――を構築しました。20㌔速度規制(間欠交通)で再開させたのが4月29日、その後、各径間の中間部にも新しくベントを設けてさらに安全性を高めて、6月1日には50㌔速度規制での対面交通を実現しました。中間径間部のベントは軟弱地盤であるため、最大15㍍のBH基礎杭を施工して必要な支持力を確保しました。橋台近傍においては桁下クリアランスが小さいため(空頭高3.5㍍)、1㍍ずつ杭を打っては添接しつなぐという作業を行いました。本当に苦労しました。また、小河川を跨ぐ個所では、まず河川に桁を渡し、その上にベントを組む(写真)という、まるで小規模な橋梁を一橋架設するような施工も行いました。


木山川橋の中間ベント架設

小規模な橋梁を1橋架設するような施工も行った(小河川を跨ぐ中間ベント)

 こうした対応は、以前、阪神淡路大震災を経験した者がいたことから中国道で実施した経験(橋脚がせん断破壊された状況で一旦通行止めを行い橋脚代替となるベントを設置した上で低速交通で供用した)を踏まえて実施したものであり、そういう意味では過去の経験が生きました。
 50㌔での供用に当たっては、支持力をきちんと取れるように支持杭を打設したベントを構築した上で行いましたが、桁高が制限される中でBH杭を打設するのはなかなか大変でした。ベントは木山川橋のほぼ全支間で設置しています。ベントと敷鉄板は、手持ちのものだけでは足らず、九州中からかき集めなければなりませんでした。
 支承もほとんどすべて損壊しており、先ほど申し上げたように前震と本震で地震力の方向が違いますから、桁も前にずれたり、横にずれたりと方向が異なっています。この桁の方向を直すのも大変でした。


木山川橋施工ステップとSTEP4の詳細

 ――桁を直すというのは具体的には
 高倉 沓座から落ちている桁をジャッキで所定の高さまで上げます。次いでスライドジャッキを設けて、ゆっくりと3径間連続の4本の桁を同時に横方向に動かすものです。さらにスライドジャッキを盛り替えて縦移動させて平面的にも所定の位置に戻しました。全長で860㍍に達する橋であるため相当の時間を要しました。


桁の補正① (左)仮支承のサンドルの解除/(右)高さ位置の補正

木山川橋の桁の補正② 横移動用のスライドジャッキを設けて、ゆっくりと3径間連続の桁を同時に動かす。
次いで損傷部分を取り替えて支承を交換する

 補修は下り線を先行して復旧しており、現在は上り線の復旧に入っています。

延べ1300人の本社・グループ会社の社員を動員 
 作業員は延べ23,000人を確保して応急復旧に当たる

 ――グループ会社や協力会社も相当頑張られましたね
 高倉 エンジニアリング九州、メンテナンス九州をはじめとして、各グループ会社が最大限機能したことで、被災箇所の点検はもちろん、応急復旧対策の検討・設計に早期に着手でき、工事担当グループ会社および応急復旧協力会社との技術連携や早期現場着手につながり、更に応急復旧段階の現場管理・計測管理体制や交通運用・監視体制の構築にも大きく貢献していただいたと感じています。九州支社以外から応援した本社・支社社員およびグループ各社社員は前震発生~5月9日の間で延べ1,300人に達しました。


NEXCO西日本グループ全体で延べ1,300人が応援に入った

目視はもちろん衛星車やドローンなども駆使して調査した

 また、支社災害対策本部と建設業団体(日建連・橋建協など)との連携・調整で応急復旧会社が速やかに決定したことや、既発注工事会社などの協力により、応急復旧資材・機械などの調達や延べ23,000人(前震発生~5月9日)の作業員が確保できたことにより、当初計画通りに応急復旧工事を完了できました。
 これまでの事故通行止め対応を含めた「全員野球での事務所防災体制意識」が機能し、前震当初からチーム力を結集することができました。本社・各支社・各事務所からも専門技術者を急派したことも復旧方針などの技術的判断や対外協議の円滑化に役立ったと考えております。

有事のマンパワー確保、安全性留意が課題

 ――改善点などはありますか
 高倉 今回は、本社と支社で調整協議した結果、当初、20㌔の速度制限による一般開放を行い、その後50㌔規制による対面通行での交通運用となりましたが、道路の損傷度、頻発する余震を踏まえた応急復旧性能レベルを再整理する必要があると感じました。また、過去の本復旧事例は多数記録が残っていますが、応急復旧に関する記録が少なく、今回も現場合わせの即断や数少ない情報を参考にして応急復旧方針を決定しました。各工種・損傷毎の応急復旧技術や交通運用計画の蓄積・伝承が必要と感じます。
 地震発生から20㌔の速度制限による供用までは、所長・副所長・当番班員で本部を構築し、余震のたび通行止めを行った区間の道路巡回班・広報班を事務系社員で、現場管理を技術系社員でそれぞれ対応しましたが、日々交代体制を構築する余力もなく、結果的に過度な連日深夜勤務を強いる結果となってしまいました。これも改善すべき点です。
 最後に前震直後からグループ会社や協力会社による道路巡回、緊急点検、応急復旧などを、余震が多発するなか、また降雨の中で行うことを余儀なくされました。これには非常に感謝しておりますが、一方で余震時の安全対策を考慮していかなくてはいけないということも感じました。

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