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⑥土木技術者がいない国は全て途上国であり君たちの責任は重大

失敗から学んだコンクリート打設

株式会社ファインテクノ
調査計測部
マネージャー

平瀬 真幸

公開日:2023.05.01

技術者の良心に訴え、そして発注者は良い結果を褒めて評価する

 透気試験箇所の選定理由について説明します。①②は締固めに制約がない位置、③④は棒状振動器が使えない事から、ビンガム流体の性質を使って締固めざるを得ない箇所ですので弱点と推測、⑤は打重ね線ではありませんが、模様が残っていたので弱点と推測、⑥はビンガム流体やコンクリートの自重作用が働かない事から緻密性に不利と考えて測定しました。結果を(表-7)に示します。


表7 透気試験結果

 この現場は5年前に完成しており、私が透気試験を初めて経験した現場です。施工者は一生懸命頑張りましたが、下請けが硬いコンクリートで締固めるのは初めてだという事でゼロからスタートだったうえに、私の勤務地が遠隔地であった事から指導は電話やメールがほとんどで現場に行く事がほとんどできませんでした。伸び盛りの施工者なのでこれが最低の透気係数だと分った事だけが収穫でしたが、施工者としても良いモノ造りの指標として概ね納得しておりました。

 この施工者は、第2回連載記事で紹介しましたが現場技術者も同じでしたので、「良いモノ造りで社会に貢献する」ことがある程度理解されており、考えられる最高の準備をしたようです。前回現場で、失敗を4回連続し、その後成功を3回連続経験した事で発注者の検査官・職員から褒められ、さらにヤル気に満ちあふれておりました。技術者の良心に訴え、そして発注者は良い結果を褒めて評価する。そうした連鎖が人をさらに大きく育てるのだと、成長した彼らを見てつくづく思います。こうした取組みがあと3現場あるのですが、失敗や成功を繰り返し、これ以上に実力を上げていく事になります。たまに「コンクリート打設に失敗しない、簡単」という施工者がいますが、それは挑戦しないだけで、失敗を失敗と気付かない、または失敗しても何かの根拠をもとに言い訳するだけで、そのような技術者は指導してもほとんど伸びないように感じます。

 近年では現場へ頻繁に来ない技術者がほとんどで、書類に追われている今の建設業においてモノ造りに楽しさなど感じるのか私には理解できません。これは時代の流れで、予算がないから少人数で臨まざるを得ない事から仕方ないのでしょうが、これで担い手が来ても技術者として公益を確保できる人材と育つのか疑問ですし、公共工事がストック効果を発揮するか、負の遺産となるか、今ならストック効果を発揮する躯体が構築できる可能性はありますが、毎年引退する先輩が大勢おられるので状況は急激に悪くなっていくでしょう。良いモノ造りは、人を大勢かけた方が発注者の維持管理で圧倒的に優位ですが、皆さんはどう感じるでしょうか。 私は知識も少なく勉強は現場で実行する方ですので、難しい用語など知らない事も多いですが、ここで執筆している事は、私としては特別な事ではありませんので、発注者や先生方に視察いただいております。炎天下・低温など特別悪い状況を除いては再現できるものですが、もし、どなたか再現したい、挑戦したい要望ございましたら、編集者井手迫さんまでお問合わせお待ちしております。

 なお、今回記事は新潟県県庁の嵯峨山さんより、低スランプの圧送・施工方法を知りたいとご意見をいただいて執筆しました。何を書くかいつも閃きと出たとこ勝負ですので助かります。ヒントをいただきまことにありがとうございました。

 記事に紹介した現場関係者は以下の通りです。
元 請:(株)瀬口組
協力業者:コンクリート打設 進成建設(株)、コンクリート圧送 (有)福建工業、鉄筋組立 (有)徳永鉄筋、鉄筋圧接 大野ガス圧接(株)、型枠組立 (株)髙井良建設、コンクリート製造 東邦生コンクリート(株)柳川工場

参考文献
1) コンクリート工学会 構造物の耐久性向上のためのブリーディング制御に関する研究委員会報告書
2) 平瀬真幸、田村隆弘、徳永幸弘:コンクリートの締固めと表層品質に関する橋台と橋脚での試験施工コンクリート工学年次論文集、Vol.42、No.1

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