道路構造物ジャーナルNET

⑥土木技術者がいない国は全て途上国であり君たちの責任は重大

失敗から学んだコンクリート打設

株式会社ファインテクノ
調査計測部
マネージャー

平瀬 真幸

公開日:2023.05.01

可能な限り湿式掃除機で集水
 スランプ5cmで打設して高品質なRC構造物を構築

 少し脱線しました、下層で使うコンクリートはスランプ10cm程度ですので、締固めると自由水が上昇する事もあり、可能な限り湿式掃除機(写真-11)(写真-12)2台で吸引して集水しました。集水された自由水は主に振動器が挿入可能な部分の締固めによるものですが、それでも70Lほど集まりました。ちょっとした気遣いとして、型枠に飛び散ったモルタル(写真-13)が脱枠時にモルタル痕として残って美観を失う事から拭き取る(写真-14)などしております。


写真11、12 湿式掃除機で集水

写真13 コンクリート飛沫/写真14 飛沫の清掃状況

 全国ではスランプ12cmが標準化されつつある中、高密度配筋で硬いコンクリートが充填できていないのではないかと思われる方も多いかと思います。鉄筋コンクリートは鉄筋とコンクリートの付着力が非常に重要ですから、もし充填がなされていないようでは機能を果たさない躯体になると言って良いものです。そこで、他工事の写真にはなりますがスランプ5cm(写真-15)が荷下ろしされる状況(写真-16)、締固まりゆく状況(写真-17)、締固まった状況(写真-18)を以下に紹介し、皆さんの懸念を払拭したいと思います。写真から硬いパサパサのコンクリートであるのに、締固めによって緻密となる状況が推測できるかと思います。ある一定のスキルを元請・下請が有して人員と器械が揃った状況ですが、スランプ5cmに対して考えていた事と現場の状況は随分と違った状態であるかと思います。今まで指導して成功した元請ならびに作業員は、お陰様で条件が揃えば硬いコンクリートしか使わないような人材(下請けに至るまで)が育ってきたように思います。


写真15 スランプ5cmイメージ/写真16 荷下ろしイメージ

写真17 締固まりゆくイメージ/写真18 締固まったイメージ

 (写真-15)~(写真-18)について少し詳しく説明させていただきます。この現場では、当初コンクリート(表-3)と現場条件を考慮してスランプを変更(表-4)、この違いはスランプ12cmを6cmとし、混和剤をAE減水剤から高性能AE減水剤に変更して単位水量が大幅に少ない状態です。それにも関わらず、締固めを適切に実施する事で高スランプのようにモルタルが多いように仕上がりました。シャバシャバに見えますが、振動器は締め固まったコンクリートに挿入するのに力を入れなければなりませんし、コンクリートの上に立っても数センチ沈む程度、加えてモルタルは上層数センチしか分布しておらず、その下は粗骨材が分布して締まっていました。通常、スランプ15cmで丁寧に締固めるとブリーディングによってコンクリートの天端に立てず身体がどこまでも沈んでしまいます。ここで申し上げたいのは、条件が揃った時、それに見合う適切な締固めを実施すると硬いコンクリートほど密実に仕上がる傾向であると言う事です。これは今まで偉大な先生方が言われた事に近い事が、高性能AE減水剤等の使い方と適切な締固めの組合わせによって極めて高品質なコンクリートが構築できる可能性を示唆しているのではないかと期待できるように思いますので、今後も品質向上に挑戦してまいりたいと思います。


表3 当初コンクリート 

表4 変更後のコンクリート

6個所で透気量を測定
 最も目視で悪い箇所でも試験
 

 それでは、他工事の紹介はここで終えて話を戻して養生方法を以下に紹介します。
 コンクリート打設が終わって直後、天端をブルーシートで養生(写真-19)し、天端仕上げが終了した数時間後から養生マット設置・水養生(写真-20)(写真-21)、型枠解体当日にシール養生(写真-22)を実施しました。


写真19 天端にブルーシート/写真20 ポンプで養生水の循環

写真21 循環水ポンプ/写真22 脱枠後のシール養生

透気試験
 まず、透気試験を実施した理由についてお話します。実は第2回連載記事の現場において、発注者と受注者で目視評価を実施した時の事です。発注者から様々なご意見をいただいた事に加えて、個人的には満点近いかと思っていた仕上がりがそうなりませんでした。そこで、良いモノを実証できる試験方法がないかと探した結果、最も公平な指標となるように感じたのが透気試験や透水試験でした。そこで、最も現実的な選択肢として透気試験を施工者に薦めたところ、ヤル気満々で実施するに至りました。透気試験を実施するにあたっては、コンサルから「いつも良い透気係数がでないので、おそらく1日で3箇所がやっとです」との意見。私は、「躯体全体が緻密である事を証明をする為の試験なので、最も目視で悪い箇所で試験をしても全箇所で透気係数は良いはず、計り直しは不要なので出来るだけ多く計って欲しい」とお願いして、それで6箇所計ってもらう事で折り合いをつけました。透気試験は躯体の寿命となる指標の一つでなければ実施する意味がありませんが、当時は全国の現場で良さそうな部分を抽出していたそうで、私はそんな試験は全く意味がないと思う事から、できるだけ発注者の立ち会いもしくは私が立ち会う事にして、測定箇所を選んだ理由を説明し、試験箇所全てに鉛筆で証拠を残すようにしております。残念ながらこの現場では、透気試験を実施したのですが初めての事でしたので鉛筆の記を失念してしまいました。以下に試験を実施した躯体のコンクリートの養生条件を(表-5)に示します。


表5 コンクリートの養生条件

 透気試験の説明については、学術的説明は不得手ですので詳細は省かせていただきますが、このサイトで先生方の記事がございますのでそちらをご覧ください。簡単に申し上げますと、コンクリートの表層品質(物質移動抵抗性)を確認するために、トレント法による透気試験を実施したというものです。この試験で、躯体の初期性能(躯体の品質)を推測すると共に発注者側においては将来のライフサイクルコスト検証の一助として活用される事を考慮し実施しております。

 透気試験を実施しました箇所は(写真-23)の通りです。透気試験の評価は(表-6)を参考としました。



写真23 試験位置

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