道路構造物ジャーナルNET

第45回 連続立体交差工事など、狭隘箇所で施工する高架橋

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2023.05.01

3.幕張豊砂駅

3.1 概要
 京葉線の幕張豊砂駅(写真-6)が、2023年3月18日に開業しました。


写真-6 幕張豊砂駅

 写真-7は、駅ができる前の駅の予定地の状況です。上り線が高架上を、下り線が地平を走っています。この線間にホームを作る計画です。ホームが上下に上りと下りでわかれます。


写真-7 幕張豊砂駅の工事前

3.2 構造計画
 この工事も上り線と下り線の間での工事となります。この上り線と下り線の間に工事用の通路を常時確保できる構造とすることにしました。さらには上り線のホームは高架橋と一体構造にし、地震力に対して新しい現行の基準で構造が耐えられるように考えました。新設の杭と柱は、上り線ホーム下の工事用通路を支障しないように、下り線のホームの範囲に設ける構造としています。図-11にホームの構造を示します。


図-11 幕張豊砂駅の構造

 工事用通路として4mの幅を常時確保できる構造としています。下りホームは、上りホームの新設した柱の基礎(地表梁)の上に設けています。上り線ホームと、既設高架橋は一体構造となっています。既設高架橋に横梁を新設して、ホームを受ける新設高架構造と一体化します。どちらもほぼ同じ固有周期となるようにしているので、大きな力が横梁にかからないようになっています。新設構造は、そのために既設と同様の剛性になるように、地中梁ではなく、施工が容易な地表梁で結ぶなどの構造的な工夫をしています。写真-8で上りホームと下りホームと、工事用道路のスペースがわかります。


写真-8 ホーム端部から見た状況

 工期や工事費は広い施工場所では構造を工夫することがなくてもあまり変わりません。しかし狭隘な場所での構造は、設計時に施工計画を考えた構造にしないと、工期や、工事費が大幅に大きくなります。
 多くの設計は、施工を考えた設計になっていません。施工は建設会社が考えればよいと思っている設計者が多くいます。しかし施工会社は、設計図に示されたものをどう造るかを検討しますが、構造を変えて工期を短くしたり、コストを下げたりという検討まではほとんどしません。狭隘な場所での構造物では、計画時点で構造と施工のわかる技術者に担当してもらうことが大切ですが、人材はあまりいないでしょう。工期と工事費のかかるプロジェクトが増え、それにより採算が合わなくなりプロジェクトが進まないことを心配します。

 今、各機関で、設計時点で施工者も入れた計画をすることが試みられています。しかし、結果を見るとあまり画期的な成果は得られていないように見えます。設計図がある程度できているものを、どう工夫して施工するかの成果は得られているようですが、画期的に工期とコストを下げるには、最初の構造を変える検討が必要です。架設に工期とコストのかからない構造に変えないと根本的な解決にはなりません。
 設計者は施工とコストにほとんど配慮せず、施工者は構造を変えるまでの提案はほとんどしません。この上流での検討に、設計と施工と、コストのわかる技術者を配置してほしいですね。

 5月の連休明けに1週間ほどインドに行く予定にしています。ムンバイ―アーメダバード間500㎞の新幹線の工事が、土木部分についてだいぶ進んできたので、その状況を見に行きます。現地にいる日本とインドの関係者から、コンクリートに関しての品質のフォーラムを実施したいとの要望もあり、行かずにWEBで済ませようとも思ったのですが、現地の状況を見ないと施工の様子がわからないので行くことにしました。
 狂犬病や腸チフスなどの予防接種を終えて準備を整えました。インドでの工事は、1工区は100㎞程度で、構造物はスパン40mのプレキャストPC箱型桁を架けていくのが基本です。日本国内の建設会社は参加せず、皆インドの建設会社が施工しています。

 本連載を毎月読んでいただきありがとうございます。今後は数か月に1回程度にさせていただきますので、よろしくお願いします。

●毎月の連載は今回で終了となります。次回は数カ月内に掲載する予定ですので、ご期待ください。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム