道路構造物ジャーナルNET

④広島県でのコンクリートの品質改善についての実証実験Ⅱ

失敗から学んだコンクリート打設

株式会社ファインテクノ
調査計測部
マネージャー

平瀬 真幸

公開日:2023.03.01

スランプ5cmで予想通り水みちは根絶
 ブリーディング処理の手間も軽減

 締固めの実演でスランプ5cm変更について全員の合意を得られて、この日を境にスランプ5cmとしたところ、予想通り水みちは根絶(写真-21)された事に加えて打設途中で発生するブリーディングの処理が不要となり、手間が省けて施工者としては硬練りコンクリートで想定外の副産物も得られました。硬いコンクリートは不具合が少なくブリーディング処理の手間が軽減されます。ですから軟らかいコンクリートはブリーディング処理が重荷となりますので、スランプが0.5cmでも高くなると作業員もアジテータ車から流下する速度や締固めの感覚でスランプに敏感になりますので、作業員がスランプの上振れに気付いたらプラントにすぐに連絡して調整していただきました。プラントから頻繁に現場へ来られてコンクリートの様子など確認いただき、常時きめ細かい管理をしていただきました岩国コンクリート井村工場長(当時)にここで感謝を申し上げます。
 この取組みが進み、第3回で紹介しました実証実験に発展しますがここでは割愛します。
さらには山本参事と施工者によって、コンクリートブロックの重量の検証がなされたので紹介したいと思います。
 コンクリートブロックの設計重量と実際の重量は以下の通りです。

 

真夏においてもスランプ5cmで通した上に綺麗に仕上げた
 維持管理の事を考ても新設時の品質をもっと追求すべき

 今回の重量は上表の通り全て設計重量をクリアしています。設計重量に対して施工者が徹底して締固めた結果+574kg緻密として、施工の指導で+655kgまで緻密となって、さらにスランプ5cmのコンクリートに変更して締固めて重量が+813kgとなりました。これだけの緻密性を確保したブロックの耐久性は、通常のコンクリートと比較にならない程に長寿命と推測されます。
 ただし、コンクリートはいついかなる時も硬ければ良いと言うのではありませんし、条件によって相応の最適スランプが存在するかと思います。ですから現場の皆さんに「締固めが可能な限り単位水量が少ないコンクリートが良いが、条件が厳しい夏場では充填不足のリスクを負うべきではないので、スランプ8cmでも良い」と何度か助言しておりました。この現場においては4月から外気温が夏日に迫るようになり、再度「スランプの変更5cm→8cm検討も悪い事ではない」と助言したのですが、真夏においてもスランプ5cmで通した上に綺麗に仕上げたのです。これには失礼ながら彼らのヤル気と実力では良い意味で想定外であり、日々の研鑽と努力の賜であり驚きとともに賞賛しかありませんでした。技術者倫理並びに職人の良心とプライドをマザマザと見せつけられた訳ですが、こうした施工にかかる経費はライフサイクルコストで考えると微々たる費用ですが、施工者だけがこれを負担し続けたら赤字倒産必至なのは言うまでもありません。維持管理の事を考えると新設時の品質をもっと追求し、全国で高耐久な躯体が構築できるなら必要な経費を投入すべき時が来ているのではないかと思います。これからは、品質の悪いと推測される新設コンクリートがあれば、コア削孔して強度を確認したり透気試験・透水試験等で検証すべきではないでしょうか。そもそも不良な躯体は発注者だけの責任でも怠慢でもありませんし、全プレイヤー含め国民全体の問題ですので耐久性について大がかりに調査してはどうかと思います。今回紹介しました現場は、廿日市支所内限定で品質向上施工者の表彰対象となっております。

 ご尽力・協力いただいた(株)三洋技建の山縣所長(写真-22)ならびに職員の皆さん、協力業者の(株)ウイングの竹井さん大久保さん並びに職人の皆さん、そして広島県西部建設事務所廿日市支所職員の皆様に感謝の意を表します。
 広島県では発注者の強い助力もあり、元請さん協力業者さんと多くの挑戦をしたことによって、一部は学会シンポジウムの成功事例で紹介できる現場も構築できました。複数の技術者と技能者に、密実なコンクリートを造るプロセスはある程度伝えられたかと思います。
 私が技術をお伝えした協力業者さんの中で2社は、「全国どこでも出張します」とありがたいお言葉をちょうだいしましたが、第1回連載で紹介しました岩国市の(株)粋工業さんとご縁あって九州でお手伝いいただくことになりました。(株)粋工業さんの職人さんは清木社長指導のもと、凄まじい勢いで締固め技術を向上させており、その脱枠したコンクリートは、残留気泡がほとんど無く、Pコンの沈みひび割れも皆無でとても引き締まっておりました。この現場では透気試験を多く実施しましたが、その様子を他県で透気試験を何度か実施してきたコンサルさんも見学に来られましたが、躯体の天端や残留気泡が残った所などを中心に測定しても透気係数が0.000に近い事から、「こんな躯体見た事も聞いた事もない」と、とても驚いておられました。モノ造りは評価と経費さえがあれば継続可能ですので、是非取組みたいとお考えの方は実行してみてはどうでしょう。少なくとも今まで通りとするより、失敗しても挑戦した方が良いモノが構築できると思います。
 今回はこれで筆を置くことにします。今回も私の拙い文章を最後まで読んでいただき、まことにありがとうございました。感謝。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム