道路構造物ジャーナルNET

④広島県でのコンクリートの品質改善についての実証実験Ⅱ

失敗から学んだコンクリート打設

株式会社ファインテクノ
調査計測部
マネージャー

平瀬 真幸

公開日:2023.03.01

指導してもらえるなら、すぐにでも来てもらえないか
 前向きな姿勢や少しの手間と経費を出せる状況があれば成功はほぼ約束

はじめに 

 トルコ・シリア大地震は衝撃的でした。この場をお借りして、不幸に見舞われた方々のご冥福とご回復をお祈りいたします。私は外国にあまり興味が無い事から、海外旅行を経験した事がありませんし、誘われても行こうと思った事もありません。ですが、もし海外勤務が必須で、どこかを選べと言われたら親日国家の旧オスマン帝国に属する国なら行っても良いと思っておりました。トルコ族の国家では明治時代に日本から助けてもらった事を今でも教科書で教えるそうで、過去にイランで危機が起きた時、トルコの航空機はトルコ人より日本人を優先に脱出させたことに対し、トルコ人はその自国政府の方針に文句すら言わなかったそうです。それくらいの親日のトルコ周辺での地震でしたので、とても悲しく感じました。日本を大切に思う彼らの国が今後、速やかに復興される事を祈ってやみません。
 今回も、前回に続いて広島県西部建設事務所廿日市支所にて実施した港湾ブロックコンクリートの品質改善について紹介します。
 廿日市支所の山本参事より施工者へ「できれば密実なコンクリートを構築して欲しい」と要望を受けた元請けと協力業者で、一生懸命締固めたという事でコンクリートを確認(写真-1)に行く事になりました。現場へ到着して施工者の自己採点を聞いて見ると「いつもより断然良いし、ここまでやった経験はない。控えめに65~70点くらいはあるのではないか」と言う手応えを持っていました。彼らが今までで一番良いと自信があるのに65点と控えめなのは、事前に講習会で私が光輝くコンクリート(写真-2)の事例を紹介しており、この仕上がりはそのような領域ではない事が関係者に認識されているからでした。

 山本参事から意見を求められたので、「良い点として残留気泡や外観から締固め時間は標準よりかなり長そうだ」と述べましたが、それ以上の美点は皆無でした。ただし、一生懸命施工したことはうかがえましたので、全国の平均より良いけれどもほとんどの現場が雑すぎるので、それよりは良いかな、と伝えました。
 次は悪い点として次の4点を挙げました。
 1. 不規則な模様(写真-3)
 2. 全体の打重ね線(写真-4)
 3. 全体の残留気泡(特に浮き型枠部)(写真-5)
 4. 拘束部で横割れ(最大0.25㎜)(写真-6)


 彼らが一生懸命にコンクリート打設し、高評価を期待していたのが分ったのですが、私の評価は100点を満点とすると10点だと伝え「コンクリートを一生懸命打設したのは分るので、適切な指導に従えば上達するのは間違いないです。指導を希望されるならお知らせ下さい。結果は保証しますし、それで結果が悪いなら私の言い分が悪いと言う事ですから皆さんに落ち度が無い事の証明にもなります」と言い残して県の庁舎へ帰りました。我々が帰ったと同時に協力業者から「どうだった?」と聞かれた監理技術者は、指摘された事をそのまま伝えたところがっかりされたそうですが、「指導してもらえるなら、すぐにでも来てもらえないか」と協力業者に要望されて、県の山本参事にその旨電話が来たそうです。基本的に指導する人材がいれば、施工者に専門知識・技術力が乏しくても、良心・良いモノを造りたいという前向きな姿勢や少しの手間と経費を出せる状況があれば成功はほぼ約束されております。

指摘した4点を助言

 現場指導の希望に応え、指摘した4点については次のように助言しました。
 1. 不規則な模様の原因(写真-7)は、型枠に付着したモルタル分が硬くなってコンクリートに馴染んでいないので、コンクリートを打ち足す前に型枠に付着したモルタルを拭き取る(写真-8)こと。


 2. 打重ねの原因は、打重ね部が硬くなっているのに適切に対応せず打ち足す事で生じます。フレッシュコンクリートは衝撃を受けると軟化する性質がありますので、硬くなった打重ね部を打ち足す前に再振動させて軟化(写真-10)させた後に打ち足して、そのまま下層までバイブレータを丁寧に挿入し一体化させることで打重ね線は解消できます。

 3. 残留気泡で特に悪かった箇所は浮き型枠部(写真-12)でしたので、浮き型枠の下の部分を蓋で塞いで(写真-13)締固めました。

 4.拘束部横割れ(写真-15)については、ひび割れ発生のタイミングはコンクリートの自重によって沈下した時、コンクリートが拘束部でひっかかり分断される事により生じます。発生タイミングは条件によって大きく変わりますが、解消するには再振動を丁寧に行えば経験値から解消され易いです。沈降ひび割れ発生のタイミングは、経験値で30分以降(夏場)~120分以降(冬場)に生じる事が多いので、この再振動タイミングが早すぎると考えられます。ここでは、再振動を120分以降で実施し、ひび割れが解消されるまで時間をずらし続けほぼ解消されましたが、一部で無害と考えられる微細なひび割れが生じることもありました。

水みちの発生への対策
 5cmと8cmで締固め試験を実施して確認

 不具合の解消が順調になされた頃に、施工者から大きな問題提起がありました。それは締固めるほどに水みち(写真-17)が生じてきたと言う事です。

 ここで原因についてコンクリートのスランプ8cm では単位水量が多すぎて水みちが生じると考えた私は、スランプ5cmに変更することを山本参事と寺田監督員に相談したところ了解を得たので、まずは5cmと8cmで締固め試験を実施して確認すると同時に、元請・協力業者の皆さんに締固めを実感してもらう講習(写真-18)を実施、スランプ8cmでは極端な材料分離とブリーディングが生じましたが(写真-19)スランプ5cmでは無制限に締固めても材料分離は全く生じない事を確認しました。


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