道路構造物ジャーナルNET

第39回 耐震設計

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良 氏

公開日:2022.11.01

(3)変形性能の下り勾配まで評価した耐震性能
 東大の博士課程の水谷さん(今は東大生産研准教授)が、早く博士論文が終わってしまったのでしばらく実務を経験させて欲しいということで、藤野先生の依頼で東日本大震災の直後にJR東日本の私のところに来ました。
 地震被害の解析などしてもらいました。仙台地区や平泉地区に、この内巻きスパイラルを用いた高架橋があり、下り勾配まで含めた動解をしてもらいました。解析の結果を紹介します(図-4、図-5)。


図-4 復元力特性を4パターン/図-5 終局変位に至る最大地震動

 下り勾配でも、変形性能は耐震性にしっかり貢献することがわかります。大まかにはエネルギー一定則で理解すればよいでしょう。普通の配筋で最大弾性応答加速度2000galの耐震性能のものに、内巻きスパイラルをヒンジゾーンに配置し、変形性能を2倍にすれば、4000galにも耐えられるようになることがわかります。ほとんどコストアップせずに、想定外に大きな地震にも耐えられるようになります。

(4)丸鋼のほうが異形鉄筋よりも優れている3)
 神田付近の中央線の高架橋や、御徒町付近のアメ横の高架橋は経年100年程度です。耐震診断をして耐震性能の足らない箇所は補強工事を行っており、ほぼ終えています。既設の高架橋の耐震性を確認するための当時の配筋を模して柱の交番載荷試験を実施しています(図-6)。


図-6 丸鋼を用いた柱の交番載荷試験結果2)

 この当時の鉄筋は丸鋼です。丸鋼ですと付着が弱いのでせん断破壊が起こりにくいのです。変形性能は異形鉄筋の場合より大きくなりました。当時は、耐震設計はされていないので降伏時の設計震度を逆算すると0.12から0.15程度になっているようです。
 丸鋼であることでせん断破壊が起こりにくいことから、古い構造物の耐震性もかなり高いことがわかりました.曲げを常時受ける梁にはひび割れ幅を抑えるために異形鉄筋を使うというのは合理的ですが、柱など地震時にせん断破壊が生じにくいので、変形性能を大きくしたい部材には丸鋼のほうが良いとも言えます。

(5)地震被害から見た耐震設計
 近年構造物に被害が生じるような大きな地震がいくつも起きています。この被害状況を見ると、現状の設計の問題点がわかります。
 兵庫県南部地震での主な被害は高架橋の柱のせん断破壊です。これは、設計時点での設計基準のせん断の許容応力度が間違って大きすぎていたことが原因です。これについては、今は設計のルールが直されています。
 地下鉄の大開駅はボックスカルバートです。このカルバートの中柱も壊れました。これは計算モデルが中柱の両端をピンと仮定しており、実際の配筋がピンとならないで、モーメントを伝えてしまったことにあります。実際の挙動が、計算モデルと異なり、ピンでなかったことで、せん断力が発生し、せん断破壊してしまったものです。
 このような事例は過去にもありました。私が1978(昭和53)年に仙台で経験した宮城県沖地震の時です。土木構造物の杭の設計は、杭とフーチングの接合は剛結とピンの両方のモデルで計算して、どちらでも耐えられるように配筋していました。実際の配筋は剛結となるような配筋です。このころ、建築分野では杭はピンで結合するという設計でした。
 私の担当していた新幹線の建設現場の仙台市南部の長町駅近くに、何棟もの鉄筋コンクリートの市営アパートがありました。このアパートがいくつか傾いてしまいました。原因は杭頭部のせん断破壊でした。設計上はピンなので、モーメントもせん断力も発生しないのですが、実際の配筋はモーメントを生じさせるようになっていたのです。ピンのモデルを鉄筋コンクリートで完全に配筋するのは難しいので、実際の配筋に合わせて、モーメントやせん断力に耐えられるようにすることが必要です。
 阪神大震災で大きな被害の生じた在来線高架橋は、震度法での設計の構造物です。設計震度は0.2~0.25程度で許容応力度での設計です。構造物の耐震性能を計算し、被害の生じたエリアでの被害程度と、エネルギー一定則を用いて耐震性能を比較すると、おおむね弾性応答加速度に換算して1100gal程度以上の耐震性能の構造物は大きな損傷は生じていないとなっています。また、基礎は杭を含めほとんど被害を生じていません。この基礎の耐震性を今の設計方法で検討すると、壊れることになります。

 基礎の設計計算では、水平力が増えると、抵抗力は線形でなく、級数的に低下するようになります。上部工は水平力が増えても、同じ比率で鉄筋の応力度を大きくすれば釣り合います。基礎は水平力を増やした比率で、鉄筋などの応力度を大きくしても釣り合いません。地震力が大きくなると、杭では引き抜き力が大きくなり、その影響で杭の抵抗モーメントが低下するので、鉄筋量など大幅に増やす必要が生じます。直接基礎では偏心が増えるので,鉛直支持の抵抗範囲が減ってしまい、基礎を大きくする必要が生じます。
 そのため、水平力が大きくなると、上部と基礎の安全度のバランスが変わり、基礎の安全度が上部より落ちていくのです。今の設計基準では、震度法と許容応力の時代と比べて、水平力が大きいので計算方法が同じだと、フーチングは大きく、杭も増える設計となります。しかし、小さい水平力の震度法で設計された過去の構造物の基礎も最近の大地震で壊れていません。今の設計方法の改善が必要だと感じています。

【参考文献】
1)Veletsos, A. S and Newmark, N. M : Effect of In–elastic Behavior on the simple System to EarthquakeMotions, Proceedings of 2nd WCEE, Vol. 2,pp. 895912, 1960. 7.
2)石橋忠良, 吉野伸一: 鉄筋コンクリート橋脚の地震時変形性能に関する研究, 土木学会論文集第390号, pp. 57~66, 1988. 2.
3)桑木野 耕介 大郷 貴之、丸鋼鉄筋を用いたRCラーメン高架橋柱の履歴モデルに関する一考察 土木学会年次講演会 2019年
(次回は12月1日に掲載予定です)

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