道路構造物ジャーナルNET

㊾新技術の導入(その3)

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術統括監

植野 芳彦

公開日:2019.12.16

3.セカンドステージでの新技術導入

 最近よく講演などを頼まれると、テーマとして、「新技術などの導入」に関する話題を頼まれる。世の中ではドローンや、AIが脚光を浴びてはいるが、私はこの辺は投げておいても、進展していくだろうと考えている。私は20数年前に、エキスパートシステムにもかかわったが、なかなか実現されていない。自動運転も同様、施工機械の自動化も3D-CADも。

 しかし、現在、それよりも、不安というかよくわからないのが、補修材料と補修工法である。これらの評価がどこにも出ていない。業者やコンサルの言うまま採用してよいものなのか?よく来るのが「NETIS」に登録されました。という宣伝文句である。NETISは誰も保証していない。検証すらしていない。かつて、国土技術研究センター(JICE)で「技術審査証明」の担当をしていた時に、個人的には積極的に証明してやろうと考えていたが、まず1次審査で上司から「実績はあるのか?」と聞かれるたびに、「新技術・新工法なんだから、あるわけないだろう」と思っていましたが、やはり役所側としては気になるところである。そして、業者側には出してはきたものの、途中であきらめてしまう企業もあった。「審査の委員会の要求に耐えられないくらいなら、最初から出すなよ」と思っていた。

 よく、勘違いされているのは、「特許」はすごいことだと思っていることだ。これは確かにすごいのだが、公共工事では逆効果、もろ刃の剣である。「特許料」の問題もあるし、採用には難しい話だが、安易に採用されているものがある。特許は技術限定になるので特定の業者を指名していることになる。その工法などが数社実施可能ならばまだしも、ある限られた企業が特許料を取る場合には問題であるはずである。

 セカンドステージでは、より補修の問題が大きくなってくるはずである。そこで再劣化や、かえって悪くなることは極力避けなければならない。しかし、何度も言うが実証が足りないのである。そして、まだ、評価もされていない。今後評価は必要である。
 かつて、維持管理系の社団法人の活動の関係で某補修材料販売会社の方々と様々な検討を行ったことがあるが、もともと多くの補修材料は、欧米の開発材料である。これを、日本で活用しているわけであるが、日本の気候に合うかどうか?という問題が大きい。これらをだれがどう評価して実際に活用していくかということが今後の大きな問題である。そもそも、安易に採用しているのではないか?
まあ、ほとんどの事業でもそうなのだが、よく理解していないものが、勝手に判断し使っている場合がある。よほど肝が太いのか?と思うとそうでもない。責任はどうするのか?担当者が自分できちんと判断し、現場に採用し、問題が起きたら評価して是正するならば、やってみる価値はある。 

4.今後の展望

 新技術、新工法をどう導入していくか?というのは非常に難しい。かつて、「技術審査証明」「技術評価」「公募型技術評価」などを担当したが、大きな労力と費用を要したのも事実である。しかし、評価もされていないものを、公共事業の現場で使ってよいのか?と考えている。皆さん、努力し一生懸命やっているのは理解できる。でも自己満足ではダメなのである。よく聞くのが「コンサルさんの指導の下」ということ。まずコンサルには決定権は無い。提案はできるかもしれない。彼らが官の事情をどこまで理解しているか?そんなことをしていても採用はされない。
 ここでは、フィールドを提供し、一緒にやってみるということを試みているわけであるが、皆さん特に民間企業の方々は、官をよく理解されていないのではないだろうか?PRでマスコミ発表や論文発表に関しても許可しているが、大きなことを忘れている。「富山市で実際に施工した」ということを、言わない。言わせない。もしくは言い方が足りない。これでは、次につながらない。せっかく協定を結んで実施しても、自己満足で終わってしまっている。はいご苦労さん! やり方が下手ですね。共同発表や共著という形に持ち込んで、一体感を出せばよいのにといつも思います。まあ、富山市は何もしていないのですが、じゃあ、フィールドは他所で貸してくれますか?我々もリスクを背負っているんですよ。せっかく背負ったリスクなのでうまくいってほしいわけだ。こちらも、担当者を決めているので、担当者に失礼だ。

 これまでの管理者は、普通に住民に目を向け、指示どおりに仕事をしてくればよかったかもしれない。出世したければ、議員さんの声も聴き、バランスよく「良い子でいればよかった。」しかし、今後は、それではリスクが伴うことを考えるべきである。「老朽化」(先に書いたが本来は初期からの不良も多々)問題が深刻化し、管理者責任を問われる事態が発生してくるであろう。そのリスクをどうとるのか?大変な時代である。わたしが、滞在していた韓国では、インフラの事故が有り死者が出ると、原因にもよるが管理者・施工者・設計者が逮捕され、判決は死刑である。これは極端ではあるが、それくらいの覚悟が我々には必要なのだ。これからは、さらに大変である!まじめに、こつこつとだけでは通用しない。社会的な批判、悪口を言われるリスクとも向き合わなければならない。しかし、それにに立ち向かう胆力が必要なのである。「どうしたら新技術が採用されていくか?」結論を言おう。これは、採用する側の“人“である。この人がいないところではなかなか採用されないし、その後も続かない。なかなか新技術が採用されないかは、採用する側の、技術力と先進性、リスクマネジメントと胆力が整わないと難しい。
 黙って放っておいても、インフラの問題は今後深刻化するだけ。いかに早く手を打つかが重要である。これまでのような事なかれ主義では対応はできない。これからは、インフラを担当する部署の長は、今迄みたいに、ありがたがられる存在ではなく、悪者になる覚悟が必要である。富山市が情けないのは、せっかく私という存在がいるので、私を悪者にして、判断していけばよいのである。「あいつが・・・・」と。地元業者に仕事を出さないということの悪口だけでなく、後々、富山市のためになる有効な悪口を期待している。

 富山に来てもうすぐ6年!体調が悪い。なぜか?これはDNAだと思う。県民性に関しては言わないが、私は先祖代々関東に900年ほど住んでいる。そのDNAである、なにか?「日照」である!日照を取り戻そう!日照というものには、私の中では情報量ということも含まれている。(普通の方は意味わからんでしょう!)情報量も、地の利というものが必要で、場所によっては制限されてしまう。

  残り3ヶ月半・・・・!! 
(2019年12月16日掲載、次回は2020年1月16日に掲載します)

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