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シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉓

沖縄県におけるフライアッシュコンクリートの配合及び施工指針(案)の概要~2017年12月に策定~

琉球大学工学部
工学科(社会基盤デザインコース)
准教授

富山 潤

公開日:2018.03.18

5. FAC指針(案)

これまで示した耐久性・施工性に関する検討に基づき沖縄県土木建築部は、「沖縄県におけるフライアッシュコンクリートの配合及び施工指針(案)」を策定した。以下にその概要を紹介する。

5.1 FAC指針(案)の構成
FAC指針(案)で取り扱うFACの3配合タイプは、配合設計上、図-9に示す「内割り+外割り配合タイプ」、「内割り配合タイプ」、「外割り配合タイプ」の3タイプに分類している。

(1)内割り+外割り配合タイプ
本配合タイプは、FAを内割り20%、外割りで内割り配合と合わせて100kg/m3以内の量を混和した配合であり、水和熱による温度上昇の抑制、ASRの抑制、耐海水性(塩害を含む)の耐久性向上を目的とした配合である。内割りと外割りを合わせて100kg/m3以内としたのは、FA総量が100kg/m3を超えると粘性が強くなり、施工性が低下するためである。
 この配合は、伊良部大橋下部工に用いられた配合を基本としており、前章の検証試験のとおり、従来のNCと同等の強度管理(管理材齢28日)が可能で、各種耐久性向上効果が認められるコンクリートであり、伊良部大橋施工以降は、沖縄県内で最も多く用いられている配合である。
 なお、本配合タイプは、水和熱による温度上昇抑制も主な目的としているため、マスコンクリートを対象としている。

(2)内割り配合タイプ
本配合タイプは、FAを内割り10~20%の範囲で混和した配合であり、主に塩害およびASRの抑制対策を目的とした配合である(ASRの場合は15~20%)。なお、表-1では10~30%配合で塩害およびASR抑制効果があるとされているが、できる限り28日強度管理を行うことを目的としているため、20%以下の配合を推奨している。仮に管理材齢28日を満足できない場合には、最大で91日まで管理材齢の延長を可能としている。また、JISフライアッシュセメントB種を用いる場合もこの配合タイプとなる。なお、本配合は、水和熱による温度上昇の抑制効果を期待していないため、対象部材は、比較的小規模な構造物が望ましいとしている。

(3)外割り配合タイプ
本配合タイプは、伊良部大橋上部工コンクリートに用いられた配合を基本としており、プレキャストPC桁やPCセグメント桁等の脱型・吊り上げを早期に行う必要のある構造物で多く用いられている。
この配合は、ASR発生の可能性が懸念される沖縄県産の海砂[2]を使用せず、細骨材を石灰岩砕砂100%とした場合に流動化材としてFAを外割り3~5%配合するものである。なお、FA置換率(3%~5%)の選定は、コンクリート製造工場毎に異なる砕砂の粗粒率(FM)や粒度分布を考慮して、各工場で配合試験を行い、最適置換率を決定するものである。


図-9 3つの配合タイプの概念図

5.2 その他特筆事項
(1)空気量の規定
 FAC指針(案)で取り扱う、「内割り+外割り配合タイプ」および「内割り配合タイプ」は、空気量を規定しない非JISコンクリートとした。これは、FAを多量配合した場合、FAに含まれる未燃炭素がAE剤を吸着し、安定した空気連行性が得られないことが判っているが、FA用AE剤を使用すると生コンクリートが高価になる事から、凍害がない沖縄県では空気量を規定せず用いることとしたものである(管理はしている)。ただし、「外割り配合タイプ」については、FA配合量が少ないため、普通AE剤により空気量を調整できることから、空気量は、4.5±1.5%を標準としている。

(2)累加計量
 FAの計量は、専用の計量設備を基本とするが、FAの利用促進を図る観点から、専用の計量設備がない場合や少量利用の計量設備がない場合は、監督職員立ち会いの上において、セメントとの累加計量も可能とした。特に外割り配合タイプでは、砕砂の3~5%程度の置換とFA量が少量になるため、計量誤差が生じる可能性が高いことも考慮し、累加計量を行っても良いとしている。

(3)特記仕様書(案)
 FACの使用にあたっては、発注者が内容を十分に把握するとともに、施工者やコンクリート製造業者にFAC配合の考え方が伝わるよう発注しなければならないことから、FAC指針(案)では、FAC発注時の留意点を特記仕様書(案)として取り纏められている。特記仕様書(案)の主な記載内容は以下のようになっている。
 a)水結合材比、単位量の基本
 FACの配合は、コンクリート製造工場の持つFACと同じ呼び強度の標準配合の水結合材比、単位水量を基本とする。
 b)フライアッシュ配合量
「内割り+外割り配合タイプ」の場合、内割り配合量をセメントの20%とし、外割り配合量は内割り配合量と合わせて100kg/m3以下とする。
「内割り配合タイプ」の場合、内割り配合量は、セメントの10~20%とする。ただし、ASR抑制効果を期待する場合は、15~20%とする。
「外割り配合タイプ」の場合、砕砂100%のコンクリートのワーカビリティー改善を目的に、細骨材(砕砂)の3~5%程度とする。
 c)空気量
「内割り+外割り配合タイプ」および「内割り配合タイプ」については、荷卸し地点で空気量の規定はしないが、現場試験で空気量測定は実施する。
「外割り配合タイプ」の場合は、荷卸し地点においてJISで一般的に規定されている4.5±1.5%とする。
 d)養生期間の設定
 FACの養生期間は、28日を原則とする。やむを得ない場合であっても、コンクリート標準示方書に示される7日間を確保すること[12]

6.まとめ

本稿では、「沖縄県におけるフライアッシュコンクリートの配合及び施工指針(案)」の基礎データとした既往調査検討内容および確認された耐久性効果を概説し、FAC指針(案)の概要を紹介した。以下にまとめを示す。
(1)FAC指針(案)では、既往調査の検討内容から確認された耐久性効果を整理し、FAC指針(案)で取り扱う3つの配合タイプを「内割り+外割り配合タイプ」、「内割り配合タイプ」、「外割り配合タイプ」に分類している。
(2)沖縄県は温暖で凍害がないことから、FAC指針(案)では、「内割り+外割り配合タイプ」および「内割り配合タイプ」では、空気量を規定していない。ただし、管理は行う。
(3)FAC指針(案)では、FAの計量設備がない場合や少量計量の場合において、監督職員立ち会いの上、セメントとの累加計量を行っても良いとしている。
(4)FAC指針(案)では、FACの発注において、発注者が内容を十分に把握し、受注者にその意図が伝わるようにするため、FAC発注時の特記仕様書(案)を示した。

 現在、沖縄県内では改質FAも生産されているが、同じJISⅡ種灰であっても分級FAと若干性質が異なり、等量配合では異なるコンクリート品質・性状となることから、その使用にあたっては、分級FA使用と同等の品質・性状になるような配合量などの確認が課題となっている。
 最後に、沖縄県内でフライアッシュコンクリートを用いて施工された、または、施行中の構造物を図−10に示して、本稿を終えることとする。なお、図-10に示した構造物の概説については前回の投稿をご覧ください。


図-10 フライアッシュコンクリートを用いて施行された、または施行中の構造物

参考文献
[1]沖縄県土木建築部 技術・建設業課:沖縄県におけるフライアッシュコンクリートの配合および施行指針(案)、2017.12
[2]西日本高速道路(株):平成18年度沖縄自動車道那覇-石川間構造物現況調査総括報告書、2007.3
[3] 土木学会:コンクリートライブラリー94、フライアッシュを用いたコンクリート施工指針(案)、pp.9-10、1994.4
[4] 砂川勇二:沖縄県におけるフライアッシュコンクリートの利用促進について、コンクリート工学、Vol52、№5、pp.454-458、2014.5
[5] 風間洋、渡久山直樹、砂川勇二、山田義智:伊良部大橋の主要部材に使用するコンクリート材料選定と配合、コンクリート工学会年次論文集、Vol.32、No.1、pp.893-898、2010
[6] 沖縄県土木建築部宮古支庁土木建築課:伊良部大橋第3期コンクリート耐久性検討業務委託、2008.3
[7] 風間洋、富山潤、下地建、小籏俊介:沖縄県内陸部におけるFACの中性化耐久性検討、コンクリート工学会年次論文集、Vol.36、No.1、pp.850-855、2014
[8] 社団法人日本道路協会:道路橋示方書(Ⅰ共通編・Ⅲコンクリート橋編)・同解説、pp.174-176、2012.3
[9] 土木学会:2013年制定コンクリート標準示方書【維持管理編】、p.154、2013.10
[10] 沖縄県土木建築部宮古支庁土木建築課:伊良部大橋第9期コンクリート耐久性検討業務委託、2014.3
[11] 風間洋、富山潤、砂川勇二、比嘉正也、小籏俊介: 沖縄県の海岸線に11年間暴露したフライアッシュコンクリートの耐久性に関する研究、土木学会論文集E2、No.3、pp.251-270、2017
[12] 土木学会:2012年制定コンクリート標準示方書【施工編】、p.122、2013.3
(2018年3月18日掲載)

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