道路構造物ジャーナルNET

シリーズ「コンクリート構造物の品質確保物語」㉓

沖縄県におけるフライアッシュコンクリートの配合及び施工指針(案)の概要~2017年12月に策定~

琉球大学工学部
工学科(社会基盤デザインコース)
准教授

富山 潤 氏

公開日:2018.03.18

(1)長期強度増進

 内割り配合は、セメント量が減少するため初期強度の低下が懸念され、その結果、工事の進捗等に影響を与える可能性があったことから、風間ら[5]は、下部工27N/mm2の配合検討時にFAを配合しない27N/mm2普通コンクリート(27NC)を基準にFAを配合した11パターンのFACの配合を検討し、これを用いて強度の経時変化を確認している。図-1に、風間らの検証試験結果から、実工事で採用した27FACと27NCの強度経時変化を示す。その結果、FAの内割り配合量が多いほど初期強度が低くなるが、材齢28日では各FACのほうが27NCより大きくなっており、材齢28日から91日までの長期強度においても、細骨材の一部をFAで置換する外割り配合が多い場合は長期強度が大きくなったとされている。この理由は、外割り配合により添加されたFAのポゾラン反応の効果と考えているとされている。

 以上より、耐久性向上を目的にFAを内割配合した際の強度低下の懸念に対し、外割り配合でFAを配合することで、初期強度管理が可能になるといえる。


図-1 27N/mm2コンクリートの強度の経時変化

(2)ASRの抑制効果

 沖縄県産の海砂に、ASRの発生が懸念されたことから[2]、沖縄県宮古土木事務所では、FACによる抑制効果を確認するため、沖縄県産海砂の岩種判定試験を行っている。この結果、 ASRを発生させる鉱物が大部分を占めていることが確認された(図-2)[6]。また、ASR促進膨張試験(1N-NaOH溶液浸漬法、通称、カナダ法)を行い、沖縄県産海砂によるASR膨張とFAによる抑制効果を確認している[7]。表-3はカナダ法の概要である。検証試験には、下部工27FACとその基本配合である27NC、また計画当初採用予定だった上部工50N/mm2コンクリート(50NC)を用いている。この結果、図-3に示すように、FAを混和しない50NCと27NCではASR発生に伴う膨張の可能性が認められ、FAを配合した27FACは殆ど膨張せず、ASR抑制効果が確認された。


図-2 沖縄県産海砂の岩種判定試験結果


表-3 カナダ法の概要


図-3 27FAC、27NC、50NC促進膨張試験結果

(3)流動性の向上

 前述のように沖縄県産海砂にASR発生の可能性が確認されたため、伊良部大橋上部工50N/mm2コンクリートでは、ASRのリスクを回避するため、細骨材に海砂を使用せず、石灰岩砕砂のみとしている。FAは外割り配合を採用している。上部工において内割り配合によるASR抑制対策を行わなかったのは、内割り配合では初期強度が確保出来ず、上部工セグメント製作のサイクルタイムが維持できなかったのが理由である。しかし、砕砂100%では流動性が著しく低下したため、流動性を改善し、ワーカビリティーを確保するために、外割り配合でFAを混和する配合が検討された[7]。図-4に、50N/mm2の砕砂100%の普通コンクリート(50砕NC)と、砕砂の3%をFAと外割り置換したFAC(50外FAC)のスランプの経時変化を示す。この結果、砕砂の3%をFAと置換することで流動性が改善していることがわかる。また、実際の上部工セグメント製作においても良好な施工性が得られている。


図-4 50砕NC、50外FACのスランプ経時変化

(4)水和熱による温度上昇量の抑制

 沖縄県宮古土木事務所では、下部工27FACの水和熱による温度上昇の抑制効果を確認するため、伊良部大橋P6橋脚と同強度の普通コンクリート(27NC)を用いた深江橋(同島内の橋梁)A2橋台の2構造物を用いて、コンクリート内部の温度上昇の比較検証を行っている[7]。検証試験結果から、打設開始時の温度からピーク時までの温度上昇量は、27NCが46.5℃、27FACが43.8℃と27FACのほうが2.7℃低かったことが確認された。打込み温度差(5℃)がもたらす断熱温度上昇量の差がほとんどないと仮定し、両者の温度測定開始を重ねてプロットすると図-5のようになり、27FACは27NCに比べて3℃程度の温度上昇量抑制効果があったと結論づけられている。また、同図からは、27FACは27NCに比べ温度の上昇および下降の勾配が緩やかであり、膨張および収縮応力は27FACの方が小さかったと考えられる。以上の結果より、フライアッシュを混和することで、水和熱による温度上昇量が抑制され、それに伴う温度応力も抑制される効果があると結論付けている。


図-5 27FACと27NCの温度上昇量比較

(5)中性化抵抗性

 FACは、セメントの一部とFAを置換することで、内陸部や高濃度CO2環境における中性化の進行がNCに比べ早いことが懸念される。このため、27FACおよび36FACの配合を用いて中性化促進試験を行っている[7]。試験の結果から、促進中性化速度係数を求め、100年後の中性化進行予測の結果、最も予測中性化深さが大きかったのは27FACで26.0mmであった(図-6)。

 ここで、沖縄県の内陸部は、道路橋示方書[8]の規定で鉄筋最小かぶり50mmとされ、コンクリート標準示方書では鉄筋かぶりから中性化深さを引いた未中性化領域「中性化残り」が塩害環境の場合15mmを下回ると鋼材腐食が顕著になる構造物が急増するとされている[9]。しかし、27FACの100年後の予測中性化深さは26.0mmであり、かぶり50mmに対する中性化残りは24.0mmであるため、許容値内であることが確認された。以上から、促進中性化速度係数から予測した伊良部大橋下部工FACは、内陸部においても中性化抵抗性が100年耐久性を満足する予測結果といえる。


図-6 中性化速度係数から試算した中性化予測

 

(6)塩分浸透抑制効果

 沖縄県は、道路橋示方書で定める塩害の影響地域において、県内全域が地域区分「A」とされている。さらに、海上環境は「塩害の影響度合いと対策区分」で「S影響が激しい」とされていることから、伊良部大橋の建設環境は、過酷な塩害環境にあることが分かる。そのため、沖縄県宮古土木事務所では、実橋の塩分浸透状況を把握するため、実橋と同じ配合を用いた供試体を作製し、実橋と同環境で長期暴露試験を行っている。図-7は、27FAC供試体と27NC供試体の暴露5年目の塩分浸透量分析結果で[10]、27NCは表面からの深さ2~4cmまで塩分が浸透しているが、27FACの塩分浸透は0~2cmのみであった。また、風間ら[11]の研究においては、表-4の配合比較に示すように伊良部大橋の27FACに近い配合のFAC供試体を11年間暴露した塩分浸透状況を確認しており、FAC供試体は単位FA量が多いほど高い遮塩性があった(図-8)。なお、この研究に用いたFAは、二酸化ケイ素がJISⅡ種FAの規定値よりやや低い(44.7%)が、それ以外はJISⅡ種FA相当である。


表-4 W/C=65%供試体と27FACの配合比較


図-7 27FACと27NCの塩分浸透状況


図-8 W/C=65%供試体の塩分浸透状況

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