3.発注に当たって
我々が、たとえば設計業務を委託する場合、または、請負でもそうだが、まず、何が必要かであるかを、理解していない業者さんが意外に多い。まずは、技術者の資格要件であるが、一般的に管理技術者と照査技術者には資格要件をつけて出すようになっている。(担当者には縛りは就けていない)つまり、1業務で2人以上有資格者が必要なのだ。富山の場合、残念ながらこれすら理解していない業者がいる。「何で、指名に入らないんだ?」と言ってくる。我々は、素人(無資格者)に仕事は出せない。市民の税金である。理解していないのも原因はある、其れはこれまで、特に資格要件を厳しく言ってこなかったからである。しかし、時代は変わったのである。
さらに、今年度からは、昨年度の業務の「評価」を入れている。昨年度の成果での結果から、評価を実施し、今年度の指名の数が決まるわけである。これも、いい加減な成果を出しておいて、「なぜ?評価が低いのか?」である。ある企業に言ったのは「社長さんや、営業さんの思っているようには、社員はやっていないということですよ。」
ましてや、「業社登録」「指名参加願い」の提出もしておらず、いきなり「仕事をくれ」では常識を著しく逸している。維持管理関連の今後の見通しは、「○兆円規模」ということで、参入してくる業者さんも多いとおもうが、まず、常識を持ってくだい。と言うところである。
さらに最近は、点検に関する下請け業者さんが、あらたにたくさん出来てきている。独立される方も多いと思うが、元請け業者の丸投げ体質である。まあ、正直言って、下請けの業者さんのほうが技術力も上で経験も多いという場合も有る。しかし、元請けの責任というものは守っていただきたい。バカみたいな話だが、問い詰めていくと、下請けのせいにして逃れようとする業者がいることは事実である。しかし、其れでは、逃れられません。我々は、プロに仕事を発注しているはずなので、それなりの成果の精度を求めているのである。
現在、「点検」のみが重要視されているが、この点検でさえ適切でないかもしれない。適切に実施されていないかもしれないのである。今は、「全数の何%点検が実施された」と喜んでいるかもしれないが、後々問題が必ず起きる。これが今、一番懸念していることである。
4.負の遺産
維持管理は過去に造った物を管理していくわけであるが、そこに大きな問題があると感じている。なにか? というと、現場を見ていて感じるのは、過去に建造された時の、施工不良の問題である。施工不良が、劣化を早め、早期に劣化度合いが進行しているものがある。
さらに、設計上の配慮の不足である。設計上の配慮不足というのは好意的な言い方で、おそらく設計者の経験不足。つまり、わかっていないのである。たとえば、ここ富山の場合、まず、下部工のフーチングの決め方が支持層に対して浅い。もう少し、入れておいたほうがよいのにと感じる。これは、洗掘や耐震上問題である。さらに、桁の製作や施工上の問題も有る。つまらないところでは、配水管の長さが短い。これにより、せっかく路面から排水した水が桁にかかってしまっている。あと、15㌢か20㌢伸ばしてさえあればと感じる。
これらは、おそらく、「ディテールの決め方」が理解されていないのだと思う。設計の作業において、解析や設計計算も重要なのだが、このディテールについては、工夫が必要で設計者の真の力量が必要なのだ。しかし、これが意外とおろそかにされている。長年の経験と実際の橋をどれだけ見てきたか? 失敗を繰り返しより良い工夫をしてきたかが重要である。かつて、メーカーに居たときは上司からうるさく言われたし、工場からも注意を受けた記憶がある。「橋を長持ちさせるには、細部構造の工夫が必要だ。」という事を。其れを改めて感じたのは「木橋」に関わった時である。床版の敷き方や、「水仕舞い」(水切れの良さ)を工夫しないと、劣化の進行が変わってくる。「標準化」の作業において、この辺もまとめた経験があるが、たぶんないがしろにされてきたのだろう。設計者と言われる人たちは、常に工夫が必要である。計算能力も重要だが、耐久性はディテールによって左右される。