道路構造物ジャーナルNET

⑧土木研究所との協定の狙い……「後」を見据えて

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市
建設技術管理監

植野 芳彦

公開日:2016.07.15

3.研究協力のメリット等について

 富山市では約2,200の橋梁を維持管理しており、予算や人員・体制、技術力が圧倒的に不足する中、劣化損傷を的確に把握し、予防保全による維持管理水準の向上を低コストで実現することが求められている。そのためには、センサ等を活用したモニタリング技術の導入が有効と考えられるが、発展途上の技術であることや導入コストが高いことなど、現時点で富山市の橋梁マネジメントに活用していくことは困難な状況にある。
 国では、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)の中で、センサ等によりインフラの状況を客観的に把握するモニタリング技術の基礎研究から実用化を見据えた一貫した研究開発を推進している。また、民間等においても、インフラマネジメントを新たな市場として位置づけ、モニタリングのみならず点検・診断や補修・補強に関連した新技術の開発に取り組まれているところである。
 わが国の橋梁の約70%を管理する市区町村において、管理者のニーズを把握することや、実証試験を行うためのフィールドを確保することは、新たな技術の実用化に向けた研究開発を推進する上で、開発者にとって大きなメリットがあると考えられる。また、富山市は、フィールド提供を行うことで、橋梁の老朽化や新たな技術に関する知見を得ることが可能となる。


五福4号橋

4.本音

 本ジャーナルの文を、意外と富山市の職員も、そ知らぬふりして読んでいるようなので、以下、私の本音を述べるので、感じ取って欲しい。
 実は、協定締結の話題だけが先行しているが、そんなことはどうでもよいのである。ひとつの形としての協定であり、今後何をやるかが問題である。何もやられなければそんな物は自然消滅する。まず、私にも任期があるので、私が去った後の富山市のことを考えた。技術的支援を何処から受けるのか? 地元コンサルが頼りにならない状況で、どうやって行くのか? しっかりした、相談相手が必要である。と言うことを赴任直後から考えてきた。
 たまたま、土木研究所と、これまで散々付き合ってきたので、知人というよりも同志といえる方々が多いのだが、昨年、国土交通省のしかるべき経歴の方から、「RAIMS(モニタリングシステム技術研究組合)と言うところが、共同研究の相手を探している。土木研究所がまとめている。企画部長が相談したいというから、電話させるから相談に乗ってやって欲しい。」と言う連絡をもらった。その後、土木研究所の企画部長さん(当時)から、具体的な電話を頂き、「自治体の状況が良くわからないので、協力して欲しい。」と言うことになった。私は、はなから協力するつもりだったが、その方とは昔からの付き合いでもあるにも関わらず、妙に緊張した丁寧な連絡だったもので「○○さん、私ですよ私。」と言ったところ、「ああ、もしかしたらと思ったが・・・・・」と言うことで、ザックバランに話ができた。最初は、RAIMSと協定をと言う話であったが、企みの有る私は、「それでは面白くない。」と言い。「ではCAESARと」と言うのもまた、「それでも面白くない。どうせなら本体と。」と言うことで、土木研究所と富山市で協定を結んだ。
 ここまで来るには知人が多く居たとはいえ、1年以上掛かっている。そういう経過で、協定を結ん
だわけであるが、今後、どういう風にやっていくかが問題なのである。工夫が必要であることだけは
言える。昨年度、検討した「富山市橋梁マネジメント基本計画」において、今後の取り組むべき施策
17のうちのひとつであり、使えるものは何でも使って行く覚悟が必要で有る。それを考えることこ
そが大事なのである。
 「協定を結んだ」と言うことが流れると、これに乗っかろうと言う者(企業)ものも現れた。なん
という奴らか? 何もせずに、ただ仕事に預かろう。自分たちの売りにしようと言うのである。恥知らずと言うべきである。しかし、それも考えたからである。何の反応もないのが多くである。
 しかし、職員も民間もどうも、未だに昔のままの手法で橋梁の老朽化に取りくもうとしている。そ
れでもよいのだが、負けるとわかる戦をしているような物である。財源が圧倒的に不足することが理解されていない。民間の方々も、維持管理市場規模は大きくても発注者側の財源が厳しいことが理解されていないのではないだろうか?仕事になると期待されて参入されても、いいかげんな気持ちではリスクがあるだけである。まず、これまでの実績の中で、どれだけの橋梁にかかわり、見てきたか? が重要である。本当に信頼が持て、頼りになるところと仕事がしたいのである。
 考えないこと、何もしないことは、大きなリスクになることを職員も業者さんももっと理解すべき
だ。先ごろの会検検査時にも、過去の成果をチェックしてみて、思ったことだが、
 ① 「設計思想」の明確化
 設計方針、思想がない。コンサル主導ではなく、市担当者の「設計思想」「設計理念」の明確化が必要。思想に一貫性がないために、説明ができない。まだしもコンサルがきちんと基準類を理解していれば良いが、そうでもない。非常に危ない。
 ② 照査技術者の明確化と照査報告書の提出の義務付け
 委託業務でコンサル成果のミス防止、品質管理の観点から、各企業のISO方針にのっとった品質管理を行わせることとともに、管理技術者と照査技術者(要、技術士)の明確化が必要である。また、照査報告書の提出も義務付ける必要が有る。(当たり前のことだが、富山ではやっていない)
 ③ 業社評価の実施
 業務終了時に、業者の評価が必要である。評価結果を残していくことで次年度以降の発注時の参考となるとともに、わが身を守ることとなる。(これも、当たり前だがやられていない)
 ④ 業務概要書の提出
 当該業務の報告書とは別に、業務の概要と設計方針等を明確に記述した、概要書を義務付け、検査時には其れで行うなどの工夫が重要である。そうでないと、報告書をいちいち見直す必要が出てきて、何処に記述があるのか見つけづらい。設計経緯や思想等が即座にわかる物が望ましい。業務完了検査時に、分厚い報告書を、「では1ページから」とやられるといらいらする。

 等々が、考えられた。
 時折、「思い込み勘違い」と言い訳されるが、そうではない。明らかな経験不足。実績不足なのである。本来、自分たちが一番わかっているはずであるがそうでもない。勉強不足である。付け焼刃的な言い訳はもうウンザリである。そんな中で技術を担保して行くためには外部の力が必要なのである。内部の人間の発言、話は聞かないものである。たとえば、外部の講師による古宴会はありがたがって聞くが内部の人間の勉強会は聞きたがらない。知名度の問題なのかもしれないが。
 最近、「かえるの楽園」という本を読んだ。日本の平和ボケに対する風刺的な小説であるが、なんにでも当てはまる。インフラのメンテナンスの問題も、何の考えもなしに居ると、必ず自分の都合
の良いように、語りたがる者たちが居て、其れに惑わされると自分が困ることになる。まさに、イ
ンフラのメンテナンスにおいても、楽観主義は危険だと思っている。何が言いたいかというと、昔
式の指示待ちの仕事はこれからの時代は通用しないということである。他人の考えを押し付けられ、しかもそれに気づいていない。
 これまで、新規事業は当たり前で、協会、研究会の立上げ、社団法人や事業会社の立上げに
関わってきた。ある程度まで持って行き、次のメンバーにこれを引き継ぐとどうも、消滅したり、
何もやらなくなってしまう。方向もおかしくなる。物事には推進力が必要だとつくづく思う。最近、
ある、私が立ち上げた協会の話題が数名の方々から出てきた。「あの協会はどうなっているのか? 最近、活動が見えない。・・・・」等である。現在、私は公務員と言う立場なので、皆、他の人間が動かしているのだが、どうも私が見ても活動状況が伝わってこない。そこで、やはり推進力、機関車が無くなると客車は動かない。と言うことか? と感じた次第である。どうも勘違いしがちなのは、学術的な学会の活動と実務的な協会活動は、分けて考えなければならないのだが、学会活動と勘違いする人間が大勢居る。ここでも、嫌いなのがコンサルタントの人間である。ちゃんとやる人間も居るが、情報収集に来ている人間が多い。そういう人間が何人集まっても、物事は動かない。私自身も良く「何もやってないじゃないか?」と言われたが、少なくとも言っているだけの人間よりは、やっていたし、先を考えていた。
 最近、やっと職員の中にも「考える」メンバーが出てきた。これまでの指示待ち、何も考えない
者とは明らかに違う。こういうメンバーを少しでも増やしたい。今すぐではないが、おそらく、役
所の人員は減らされる世の中が来る。特に技術系職員は危機感を感じてもよいと思うのだがそうでは無い者が多い。「8:2の法則」というのがあるが、これはなんにでも当てはまるそうである。残
れるのは、2のほうだ。

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