道路構造物ジャーナルNET

⑦「考える職員」を増やす

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市 
建設技術管理監 

植野 芳彦

公開日:2016.06.16

「仮定」と「実物」
要なのは「設計ストーリー」

2. 設計とは何か?
 最近、通例により、会計検査が実施された。自分の担当案件が当たってしまった職員は、必死である。だいぶ時間もたっているので、必死に当時のことを思い出し、抜けがないか? 確認作業をしている。委託先のコンサルさんにも、それで多大な労力をおかけしていることと思う。
 脇で見ていてやり取りを聞いていると、実に面白い。日頃の業務の実態が見えてくる。設計の中身をいちいち理解しようとしたり、計算の根拠にこだわったり、本質からずれてきてしまっているのではないだろうか? 知識をひけらかし、細かいことを言う人間も居るが、そもそも設計とはなんなのか? 理解できていない方が多い。設計とは「仮定」である。「実物」とはちがうのである。
 まず感じるのが「設計思想」がメチャクチャである。その仮定を現実に近づけるためにどういう手法を持って、考えていくか? これが設計思想である。わが国では、幸い(?)基準類が明確に示されている。これによって、縛られていると考える方も多いと思うが、そうではない。逆に余計な検討はせずに済んでいるのである。「植野塾」でも言っているのだが、「設計ストーリー」の重要性の認識が必要である。物を作るうえで、何を、どのように考え造っていくのか考えなければできない。それを明確にしていくのが、「設計」という過程であり、その設計にもストーリ、道筋がある。
 こちらで、様子を見ていると、良く理解できていないのに、わかっているふりをして、やってしまっている。たとえば耐震設計の方針が明確でない。そもそも、先日あるところで聞かれたが、「「耐震補強のフルスペック」って何年道示を守ればよいの?」と言うことである。そうしたら、答えはまちまちであった。「H25だろう。」「いやいやH8で良い。」と言うのが出てきたが、そもそも、その話の前に、管理者として、どのように考えるかが明確でない。耐震設計と一言で言ってしまい、わかったようなことを言っているが、地震そのものの理解が足りないのではないか? 今回の6月議会では、熊本の地震を受け、対策がどうなっているか? という質問が必ず出ると思われる。災害が起きるたびにそうである。昨年は水害だった。「活断層」というキーワードがあればそれをいろいろ言ってはいるが、活断層が構造物の直下にあった場合、どう対処するのか? そもそも、耐震なのか制震なのか免震なのか?

富山は立山に守られている?
 使用した解析ソフトは明確にすべし

 ここ富山では、恐ろしい都市伝説がある。最初聞いたときは、私も絶句したが、「富山は立山に守られている(左写真はそのイメージ)。(から災害はない)」ということを言う人たちが多い。ということで、予算もないことから、耐震対策は大きく遅れを取っているのが実情である。確かに、私が赴任して2年ちょっとの間に体に感じる地震は、1度か2度である。まあ、こういう状況であれば、耐震対策は考えなくても済むのかもしれない。しかし、コンサルさん、少しは勉強してよ!いくら地震が少ないからと言って、耐震設計や落橋防止システムに関して理解すべきだ。今回会検が有り、過去の物を確認したが、耐震設計の思想がわからない? 一方で「耐震補強をした」と言いつつ、中途半端なことをやっている。まあ、それはよいとして、今後問題であると思うのは、移動制限装置として、大きなコンクリートの塊を橋台の沓座に造ってしまっていることだ。今後の維持管理で邪魔になってくる。これは、支承交換地頭のジャッキアップ等のときに邪魔になってくる。 支承に関しては、点検時に良く見られていない場合が多い。なんとなく錆びているで終わってしまい、耐震上も交換したほうが良い場合でも、そのまま残ってしまっている。


 支承は橋梁にとって重要。維持管理のし易さを考慮した耐震補強が必要

何となく錆びている? 

 支承が橋梁にとって重要であると言う認識が低い状況になってしまっている。その割りに「耐震連結、耐震連結」と言っている方々も見受けるのは嘆かわしい。
 少し話がそれたが、「設計」と言う行為に対し、憧れ的なイメージを持っている方も多いのではないか? 設計とは、どういう方針で設計していくか?結果の検証をどうするか? が重要であり、さまざまな構造詳細の配慮も必要であり、その後に大きく影響する物である。安易にデザインに走ってしまう傾向があることも、さびしい物がある。最近、問題だなと思っているのが、解析や設計に使用したソフトを明確にしない業者がほとんどだ。特に解析のソフトに関しては、明確にしておくべきである。設計の何たるかを理解していない証拠であると考えている。

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