道路構造物ジャーナルNET

③点検について

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市 
建設技術管理監 

植野 芳彦

公開日:2016.02.16

安易に補修・補強だけするのは後々に問題
 業者任せにせず、一言何か言ってもよい

3.事例での課題
①事例1:コンクリート・ゲルバー桁橋 
 ある、80年ほど経過した5径間ゲルバー形式のコンクリート橋を見ていた時、どうも中央径間が垂れ下がって見える。同行した者に、どう見えるか? 聞いてみると、やはり、「垂れています」と言う回答。これも、点検報告書からは、さほど問題は無い橋であった。たぶん、補修がなされていると言う理由からであろう。しかし、直ぐに、関係部署の課長はじめ関係職員を現場に召集し、危険性を説き、詳細調査を命じた。補修実施時に、床版の補強(鋼板圧着)やゲルバー部の鋼板補強は実施されていたものの、何の理由で、どのような方針の下、実施されたのか確認しようと思ったが、当時の担当者からは「業者の提案どおり実施した」とのこと。もちろん、補修の図面など残っていない。施工した業者(全国規模の補修業者)にお願いし、図面を依頼したが、もう1ヶ月以上経過しているが、見つかったとも無かったとも音沙汰なし。いろいろ疑問は残ったが、過去このことは、あまり気にしないようにしようと、最近考えている。ただ、安易に検討も十分にせずに補修・補強だけ、してしまうのは、後々問題だ。ゲルバー桁と言うのはメタルでもコンクリートでも問題が多い。ゲルバー部が構造の弱点になる。補修法をどうするか? 等も悩ましい。

②事例2:上路トラス橋
さらに、50年経過の某上路トラス橋に関しては、職員のほうから「見てくれ」と言うので、見に行った。まず驚いたのは、伸縮継手の段差が非常に大きい。次に、地覆がずれている。これはおかしいな?点検時の写真は?あまり無い。肝心のところが、どうも、近接目視ではなく“望遠”でとった物らしい。橋台のコンクリートのASRがひどいので、其れが原因だと判断したらしい。しかし、伸縮装置の段差が尋常ではない。本橋梁は山が迫っており、最悪は地盤が移動したのかもしれないと想定し、ボーリング調査等を指示した。本橋梁も、近年に2度点検を実施し、ご丁寧に補強工事を行っていた。床版の鋼板圧着と縦桁増設、移動制限装置の設置、伸縮装置交換、塗装の塗り替え等。「沓座の確認は?写真は?」と聞くと、望遠で撮った様な物が出てきた。たぶん、きちんと沓座まで降りてないのである。(居りやすいほうの沓座の写真は近接目視の物が有った)しかし、移動制限装置がご丁寧に着いているので、寸法等は検討しただろうに。しかし、移動制限装置は、今後の補修工事や支承の取替え工事では邪魔になる。結局は、ローラー沓のローラーが逸脱していた。(詳細の原因等は今回示さない)


鋼上路式トラス橋(左)/非常に大きいジョイント部の段差(右)

補強状況

 NEXCO上のオーバーブリッジで移動制限装置は最近付けたのに、桁端部のクラックは見逃していたものもあった。感性が無いのか?指示された物しか見ていないのであろうか?技術者として興味を持って周辺も観察すると言う気持ちすら無くなっているのか?
さらに、プレートガーダー橋で、打合せをしていて耳を疑った。「端部下フランジは板厚測定の結果、設計値よりも厚いのでOK」とのこと。「ウン???」「板厚が厚い?写真は?」と言うと無いと言う。
 メタルの場合、設計値よりも板厚が厚いというのは通常ありえない。「腐食して膨れているのではないの?」と聞くと、黙ってしまった。これは、下請けにやらせて自分たちは見ていないのである。
 発注者側も、何か問題が有っても、「しかたがない」で済ましてしまう。ひとこと、何か言ってもよいのではないか? 「今回、こういう問題が有ったから、次回は気をつけよう」で良いのである。(実際はこんな優しくは言わないが)問題を指摘するのは、するほうも、されるほうも嫌である。しかし、税金を使って点検している以上、きちんとやって欲しい。お互いの成長のためにも。

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