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②自治体自体の長寿命化を図るために

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市 
建設技術管理監 

植野 芳彦

公開日:2016.01.16

3. 長寿命化について自治体内側から見て

 基礎自治体の内部から見てみると、「長寿命化」というものに関して、上(国や県)から、指示が来るからやっていると言うのが実態ではないだろうか? 維持管理と言う面から見れば、事故につながる物や機能的に支障のあるものを事後保全的に修繕している。維持管理体系は確立しておらず、過去の経験則から実施している。「長寿命化計画策定」に関しては作成したものの、その中身は実態に即していない。さらに、現状では「点検」については気を使って実施しているが、後工程に関しては、余裕が無いというのが実態ではないだろうか。
 「何が問題か?」と聞かれることも多いが、「予算面の問題と人材の問題が大きい」。今後、現状で点検で四苦八苦しているのに、その後の、補修補強や更なる、運用・維持管理までは、到底遠い道のりである。我々技術者は課題があると、技術的に説得・解決すれば済むと思っているが、基礎自治体では、すぐ身近に市民が居るので、慎重に判断しなければならない。技術的要素+付加要素で付加要素のほうが重くなってしまう。それまで、解決策を導き対処しても住民からの苦情ですっ飛んでしまいかねない。特に富山市の場合は、建設部の予算の約半分は除雪費である。


一般的な道路補修や除雪にも金がかかる

 補修や補強はもちろん架け替え、撤去と言った行為には必ず費用が発生する。費用は予算と密接に関係し、相当な計画性が要求されるはずである。そこに、さらに、付加的要素が入ってくるので非常に厄介であり、政治的要素も含まれる。そして、おそらくこれは、時間の流れの中で変化してくる。「点検」で悩んでいる状態で系統だった管理はとてもできないだろう。

 そこで、ひとつ苦言だが、「○○市(県)の長寿命計画は、うちで作成しました」と自信満々に言ってくるところもあるが、そんな単純な話ではない。かつて、多くの企業が「長寿命化のソフトを買った」「ソフトでやっている。」「ソフトが無ければできない。」と言っていた。(「ソフト」とは専門家の皆さんは想像できるだろう)これを聞き、内心憤慨していたのは、私だけだろうか?
 「長寿命化」「老朽化」「アセットマネジメント」といわれ方は、さまざまだが、結局は日本人の一番不得意とするマネジメントである。これが不得意なために、さまざまな場面で敗北してきている。技術力と言う妄想にとらわれ、きちんと評価ができなかったり、総合的判断ができない。マネジメントとは、さまざまな状況やリスクを考えて判断、決断していくことであると考える。役所側にも、判断ができない人間は多い。そして、まずは「考える」習慣が無かったりする。結局、この問題は、「人」であると考えている。
 私が取り組もうとしているのは、役所内の人材改革である。「長寿命化(老朽化対策)」=「役所内の意識改革」だと思っている。これまで、上からの指示や、事後保全に甘んじていた、職員の意識を変えなければ、維持管理のマネジメントは成り立たない。自ら「考える職員」「考えられる職員」を育てたいと考えている。そのうえで「計画的に考える組織」を構築していくことが、基礎自治体の「橋梁長寿命化(老朽化)」対策」につながっていくと考えている。つまり、人材を育成し、合理的な事後保全を行っていければ、自治体の究極の維持管理ではないかと考える。現実的に予防保全などする余裕は無い。
 そこで、本来ならば、職員の右腕になっていただける、地元コンサルタントも育成し、車の両輪のように対処して行こうと考えたが、2年目も終わろうとしている今、コンサルタントからは何のアクションも無いことから、そちらはあきらめ、職員育成のみを行うことに方針は切り替えた。このようなことで、月1回の「植野塾」と称する、公共事業の意識改革に向けた話と、「橋梁技術研修」を2週間に1度、ペースで実施し、年に数回は外部講師をお招きして職員講習会を実施している。基本は全て、自ら考える職員の育成である。当市職員は優秀であり、今や、いちいち指示しなくても、自ら提案してくる職員も居る。これまで、コンサルタントに説明されると、そのままだったが、自分で考え業務を構築していくようにもなっている。コンサルタントにとっては迷惑かもしれないが。
 次回は、すこし話を掘り下げて、「点検」の実態等について述べたい。

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