道路構造物ジャーナルNET

②自治体自体の長寿命化を図るために

民間と行政、双方の間から見えるもの

富山市 
建設技術管理監 

植野 芳彦 氏

公開日:2016.01.16

 これから大きく変化する、社会情勢の中で特に、何が今問題なのか? 我々は何をするべきなのかを考える一助になればと思い書くことにする。技術的内容よりも、一般論に近いものとなる。書くに当たっては、批判も罵声も大いに結構である。さまざまな考えの方が居て当然であり、私は勝手に書きますので大いに批判していただきたい。今回は「橋梁長寿命化」について。
 皆様、あけましておめでとうございます。本年も宜しく、ご指導のほどをお願い申し上げます。

1. いったい「橋梁長寿命化」とは?

 「橋梁長寿命化」とはいったい何なのだろうか?平成23、24年度前後に、各自治体で盛んに「橋梁長寿命化計画策定」なるものを実施した。これ自体は、それまで体系的に維持管理を考えてこなかったわが国、特に自治体においては画期的なことであると評価したい。しかし、実際の内容が問題である。
 我が富山市の実態から述べると、私がこの内容を見ても良く理解できないのである。私の能力が無いのか。バカなのかもしれない。誰かに言われたように素人なのかもしれない。しかし、わからない。職員に聞いても良くわからない。コンサルに聞くと、「ソフトでやったから」という。何がなんだかわからない。
 それでいて、説明時には、「橋梁長寿命化計画に基づき・・・」となる。
 「長寿命化」と言うと、何となくよいことをしているように感じてしまう。社会福祉問題と同等に考えてしまい、耳障りの良い言葉に惑わされているのではないか? 日本人の「もったいない精神」とあいまって、如何にもものを大事にするような印象も与える。
 しかし、今後問題になりそうな橋は、設計時にそのようなことは考えられていないのである。
 なるべく安く、なるべく数多くと言うのが、成長期の思想であった。単に材料を木や石から、鋼やコンクリートに変え、「永久橋」と言い、如何にも永遠の命があるように思っている。なるべく少ない材料で、安く作るというのが設計思想であったもの、長持ちしないものを作っていたのに、長く持たせろと言うことである。これを長寿命化するなら、それなりの膨大な費用が新たにかかることを覚悟しなければならない。


山吹橋 (富山市八尾)老朽化が著しく交通量が少ないために通行止めしたが(人道橋)地元から復活の要望が寄せられている

 私は「橋梁長寿命化」と言うことは、結局は「自治体を存続させるための、インフラ関連財源のトータルコスト削減」だと理解している。長寿命化が目的になり、橋を長持ちさせたが財政的には破綻したと言うのでは意味が無い。自治体自体の長寿命化が必要なのである。今後は、「限られた財源、人員により、持続可能な○○市を戦略的に守っていくことが求められる」と考えている。財政、人員ともに自治体は厳しい状況下にあり、今後、さらに厳しさが増す。この明らかな劣勢の中で戦いに勝たなければ、自治体の存続は無いのである。ただ、問題なのが「文化財的橋梁」である。これをどうして行くかは、大きなリスクである。赴任して早々に調査したが幸いにも、我が富山市には無い。これで方針も大きく違ってくる。
 以前ほど「長寿命化」と言う言葉を聞かなくなった。私は、努めて勘違い者を少なくするために、使わないようにしていた。やはり、使わないほうがよいだろう。わかったつもりの勘違い者を少なくするために。「老朽化対策」というほうが、よっぽど合っている。

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