上部工補修補強は22橋で実施
床版防水層の有無は現場で確認
――橋梁の長寿命化修繕計画にもとづいた対策の進捗状況について
森山 健全度「Ⅲ」箇所をサイクルオーバーにならないように対策するとともに、健全度「Ⅱ」箇所も予算措置状況や対策規模、施工場所等を踏まえ順次対策しています。耐震補強工事と同時施工が望ましい橋梁であれば、あわせて補修を実施しています。
――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強の2023年度を含む過去3年間の実績と、今後の施工計画は
森山 今年度実施しているのは、国道32号で高知橋、豊永大橋、豊永大橋側道橋(下り)、新大田口橋、33号で仁淀川橋、ひらばた橋、ケヤキ谷橋、寺村橋、55号で船倉橋、甲浦大橋、イビチ橋、水尻谷橋(三津)、黒潮橋、室戸大橋(歩道部上下線)、行当高架橋、尾僧川橋側道橋(下り)、須川橋、明神川橋、津呂1号BOX橋、羽根4号BOX橋です。
――部位では床版補修が多くなっていますか
森山 それだけではありません。Ⅲ判定の箇所がさまざまなところに出るので、それをすべて補修しないと、Ⅲ判定が消えません。そのために、さまざまな補修を行っていて、どれかに特化して実施しているわけではありません。
――床版防水の施工状況および工法は
森山 床版防水の施工状況をとりまとめたものはありません。橋梁点検結果において、路面からの漏水が原因で床版が損傷している橋梁があれば施工していきます。また、工法については、橋梁ごとに検討することから決まった工法はありません。
――橋梁台帳などに床版防水の有無をこれまでは書かれていなかったのですか
森山 台帳には防水層の有無はあります。ただ、過去の分では記載がないものがあります。完成図を見て確認はしていますが、わからないものについては舗装打替え時に現場で確認しています。
――今後の舗装打替え時には防水工は必ず行いますか
森山 行います。
塩害対策 国道55号の8橋で外部電源方式の電気防食を採用
――塩害とASRについて
森山 ASRによる劣化は管内にありません。塩害は凍結防止剤散布を実施している国道32号、国道33号の山間部と国道55号の沿岸部に架設している橋梁に多くなっています。対策としては、伸縮装置の補修(漏水改善)や、コンクリート橋では外部電源方式の電気防食による対策を実施しています。外部電源方式の電気防食対象橋梁は国道55号の8橋(相間川橋、椎名橋、黒潮橋、岬大橋、平等津(ならし)橋、加領郷大橋、安田川大橋、穴内橋)です。
――塩害に対しては電気防食が基本ですか
森山 劣化が著しい橋梁では電気防食を行っています。
――電気防食は効く場所と効かない場所があり、効かない場所は電気防食の線ごと腐食する状況になっているところもあります。8橋は問題ないですか
森山 橋梁点検のなかに、電圧状況を確認する項目を設けて確認しています。下がっていたら、要因を分析して、次の対策を行う方針としています。現段階では問題ありません。
支承、ジョイント取替とも5橋で実施
――2023年度施工(予定)の支承取替えおよびジョイント取替えについて
森山 支承取替え、ジョイント取替え、ともに5橋となっています。
――支承取替えはどのように行っていますか。
森山 高知橋と仁淀川橋を代表例としますと、高知橋では鋼製支承(線支承)をゴム支承(固定支承:超小型ゴム支承(UCB)、可動支承:可動ゴム支承(HiPS))に替えています。
仁淀川橋では固定側:鋼製支承(ピン)+コンクリート台座を鋼製支承(ピン)+鋼製台座に、可動側:鋼製支承(ピン)+可動支承(ローラー)を鋼製支承(ピン)+可動支承(ゴム)に替えています
――伸縮装置取替えは、本体の性能劣化、耐震補強、止水構造の劣化、どのケースでしょうか
森山 一般的にはすべてが該当しています。
――本体が損傷しているケースはそれほど多くありません。ただ、止水構造のみが損傷していて、それを取替えることによって補修しようということを国土交通省でも技術募集をしていました。止水だけを取り替える形での補修に取り組んでいるので、仁淀川橋のような長大橋では、本体が損傷しているのか、それとも本体では止水材が損傷しているのか。それでジョイント取替えとなっているのですか
森山 仁淀川橋では、A1、A2は床版打ち替えを伴うため、P2、P5、P6は止水材設置不可のためそれぞれ取替えました。
PCB含有橋は残り5橋
基本は剥離剤+乾式ブラストも他工法も採用
――2023年度の鋼橋塗替え予定は
森山 補修工事による部分塗替えはありますが、大規模なものはありません。
――PCB含有の橋梁はまだありますか
森山 あります。低濃度PCBの処理期限が令和8年度となっているため、期限内に処理するように計画的に実施しています。
――何橋になりますか
森山 現時点では5橋(R32:高知橋、長瀞橋側道橋、R33:仁淀川橋、鷲の巣橋、R55甲浦大橋)です。55号甲浦大橋では補修工事の調査中に新たにPCBが検出されました。
――既存塗膜の除去方法は
森山 発注時は塗膜剥離剤と細かな箇所は乾式ブラストとしていますが、施工者の提案で循環式ブラストなども採用しています。
防災対策箇所は958箇所
対策箇所外だった中土佐町久礼で大規模な災害が発生
――異常気象による土砂災害が相次いでいるなかで、具体的な防災対策の要対策箇所と進捗状況は
森山 道路区域内の特定道路土工構造物点検や特定土工点検以外の防災カルテ点検(年2回)対象箇所において、健全度がⅢ以上の箇所や、道路防災点検の要対策箇所で未対策箇所、カルテ点検箇所で対策が必要な箇所、災害発生箇所等を予算措置状況も考慮しながら対策を実施しています。
令和4年度末時点の防災対策箇所は958箇所で、そのうち要対策箇所は94箇所となっています。令和元年度には32号1箇所、33号5箇所、55号1箇所、令和3年度には33号4箇所で対策が完了しました。
――今年度は
森山 ありません。
――管内で大規模な対策箇所は。代表的事例として
森山 中土佐町久礼では昨年大雨により、のり面崩壊(吹付が風化していたことによる)が発生しました。その復旧工事を進めています。
――もともと要対策箇所でしたか
森山 なにもないところでした。
――吹付のり面の風化が多いことは聞いています。対策として、アンカーや厚い吹付を行っています。中土佐町の崩壊の規模と補強方法を教えてください。
森山 令和4年7月5日0時10分頃に一般国道56号高知県高岡郡中土佐町久礼で発生しました。災害規模は幅45m、高さ45m、土量700m3に及ぶもので、7月5日0時40分に全面通行止めを行い、10日11時には何とか片側交互通行ができるように復旧しました。本格的な災害復旧工法は、吹付法枠工(b300×h300、@1.5m×1.5m)を2141.1m2、モルタル吹付工(枠内、t=10cm)を1295.9m2、地山補強土(φ90,SD345,D19,@1.5m,L=2.0m~5.0m/本)を997本、施工しました。
――94箇所中で大規模なものはないですか
森山 (写真のようなのり面なので)これくらいは普通です。このような箇所が点在しています。おもに山間部となります。ただ、沿岸部でも山がすぐに切り立っている箇所もあります。
32号、33号、55号は山が切り立ったなかに道路があるので、土工の箇所もそのような箇所があります。
――要対策箇所の優先順位は決めていますか
森山 事務所内で優先順位を決めて、対策を行うようにしていますが、用地買収をともなうものについては、用地協力が得られないとできないので、なかなか着手できない箇所もあります。
――管轄外からの土砂流入などにどの管理者も頭を悩ませていますが、用地買収をしないとどうしょうもないのですね
森山 中土佐町ののり面崩壊も管轄外から生じました。
用地買収に応じていただける方は用地買収させていただきますし、無償土地使用貸借で許可がもらえればそれで対策を行っていることもあります。地権者さんには説明を行って協力をできる限りいただくようにしています。また、相続が止まっているケースもあり、事業認定も難しいということもあります。
――センサー設置などの対策は
森山 伸縮計などのセンサーを設置している箇所もあります。それも数箇所のみとなります。
――新技術・新材料の活用について
森山 ダブルブラスト(SK-200008-A)を仁淀川橋の塗替え工事で採用しました。湿潤ブラストによる塗膜除去と乾式ブラストによる除錆を組み合わせた工法です。剥離剤の代わりに使用したもので、剥離剤の場合は複数回施工や残存塗膜へのブラスト処理が必要になりますが、同技術の活用により、鉛など有害物質を含む塗膜除去が安全かつ確実に実施できます。施工者からの提案により採用しました。
パネル式吊り棚足場(『スパイダーパネル』(HK-160001-VE))を高知橋の耐震補強外工事で採用しています。同技術は、道路橋の点検・補修などの仮設足場をユニットパネル化したシステム式吊り棚足場で、従来は単管などを組み合わせたパイプ吊り足場で対応していました。パネル式吊り棚足場の活用により、高所での作業を減少させ、工程短縮が図れ、フラットな作業面で安全性の向上が期待できます。
――ありがとうございました