高知橋 パイルベントを深梁工法で繋ぎ合わせる
ECI方式で発注、補修補強を行う
――その他で特徴のある橋梁は
森山 高知橋があります。一般国道32号の高知駅の南側ほど近くにある、二級河川江の口川渡河部に架かる橋長34m、幅員36.7mの3径間単純合成鈑桁橋です。下部工形式は逆T式橋台、パイルベント橋脚で、基礎は鋼管杭基礎となっています。
大正14年に架設されましたが、当時は土電(土佐電気鉄道)が走っている中央部だけでした。その後昭和39年に両側に拡幅工事を行い。昭和56年に中央部の架替えを実施しています。また、平成18年度には落橋防止装置を設置しています。
令和2年度からECI方式(技術提案・交渉方式(技術協力・施工タイプ))で橋梁補強工(支承取替(150箇所)、鋼製補強梁工)、橋梁補修(ひび割れ補修、断面修復、当て板補修等)の工事を令和6年度までの工期で実施しています。
――どのような補修を行うのですか
森山 パイルベントを深梁工法という特殊な部材でつなぎ合わせます。
高知橋 仮橋の設置状況/吊り足場設置状況
既設支承撤去のためのはつり状況/撤去された既設支承/設置された新設支承
深梁の設置状況
――連結させる深梁は地中梁ですか
森山 河床下の地中梁となります。
――パイルベント自体はこのまま使うのですか。マイクロパイルみたいなもので杭自体を補強する必要はないということですか
森山 そうです。
――上部工は合成鈑桁になっています。床版の損傷は
森山 事前の調査・設計等では打替えまでは必要ないとなっています。ひび割れ補修や断面修復は予定しており、順調にいけば今年度に実施します。
――断面修復工は通常のコンクリートですか、大成建設施工だと、UFCもありますが
森山 ポリマーセメントモルタルとなります。
――深梁工法は一般的ですか
森山 そうではありません。事例はあまりなく、海の桟橋などで事例があると聞いています。
――パイルベントを連結するのは聞いたことがありません。ECI方式で、設計も施工者が行っていますか
森山 技術協力・施工タイプとなりますので、設計は別です。工期開始日は令和2年10月2日。令和7年2月28日まで。
ECIの設計は、令和元年12月に基本協定締結技術協力業務委託契約をしていて、そこから設計に入っています。
橋梁は664橋を管理、300橋が50年超
トンネルは58箇所を管理、1,000m以上は6箇所
――保全についてまず現在の管内橋梁の内訳からお願いします
森山 橋種別は、全体数664橋のうち、鋼橋が176橋、PC橋が224橋、RC橋がBoxカルバートも含めて259橋、SRCが1橋、その他が4橋となっています。
架設年次別は、供用年次不明を含む1952年度以前が8橋、1953~62年度が33橋、63~72年度が259橋、73~82年度が130橋、83~92年度が64橋、93~2002年度が35橋、03~12年度が69橋、13~22年度が66橋となっています。供用後50年が経過した橋梁はちょうど300橋と半数近くに達しています。
延長別では15m未満が333橋、15m~50mが152橋、51~100mが55橋、101~200mが69橋、201m~300mが34橋、301~500mが12橋、501m~1,000mが9橋となっています。15m未満が半数ある一方、100m以上の橋梁も124橋と比較的多くなっています。
路線別では国道32号が92橋、33号が102橋、55号が301橋、55号(自専道部)が31橋、56号が109橋、56号(自専道部)が13橋、四国横断自動車道が16橋です。
――管内トンネルの内訳は
森山 管内で管理するトンネルは全体で58本あります。工種は在来工法が28本、NATMが30本です。
供用年次別は、1953~62年度が3本、63~72年度が18本、73~82年度が7本、83~92年度が2本、93~2002年度が6本、03~12年度が17本、13~22年度が5本となっています。
延長別は100m未満が6本、100m以上500m未満が26本、500m以上1,000m未満が19本、1,000m以上2,000m未満が4本、2,000m以上が3本となっています。
路線別では国道32号が3本、33号が18本、55号が5本、55号(自専道部)が5本、56号が17本、56号(自専道部)が2本、四国横断自動車道が8本となっています。
橋梁点検 健全度Ⅲは37橋
耐候性鋼材は健全度Ⅲなし
――橋梁とトンネルの定期点検結果(健全度判定区分)の内訳および点検を進めてみての管内の構造物の劣化状況についてご説明ください
森山 橋梁から申し上げますと健全度Ⅰが493橋、Ⅱが134橋、Ⅲが37橋となっています。
劣化状況を鋼部材から申し上げますと、路線別では国道32、33号と55号の奈半利管内において腐食が進行しています。国道32、33号は山間部を通過する区間であり、凍結防止剤散布による塩分、55号奈半利管内は海岸沿いを通過する区間で海洋からの飛来塩分が腐食を促進したと考えられます。
鋼桁の腐食状況(左から国道32号吉野川橋、33号寺村橋、55号尾僧川橋側道橋)
――国道32・33号の山間部を通過する区間では、凍結防止剤をかなり散布しますか
森山 かなり散布します。令和4年度で年約300tを散布しています。
また、主桁端部の腐食については伸縮装置からの漏水や土砂堆積などの影響により、湿潤環境になりやすく、腐食が進行したと考えられます。
塗装年代に着目いたしますと、主桁、支承ともに概ねと相互の経過年数に比例して腐食が進行しています。ただ、2005年に重防食塗装(フッ素系)が標準仕様となったことから、2011年以降の腐食程度は低くなっています。
――高知自動車道では凍結防止をかなり散布していて、耐候性鋼材採用橋梁の桁端部がことごとく腐食して、NEXCOは耐候性鋼材を採用しなくなりましたが、土佐国道管内はどうですか
森山 桁端部の処理をしていなかったので、桁端部の塗装を行うようになりました。
――国土交通省としても山間部で耐候性鋼材を採用しているが、桁端を塗装しているということですか
森山 越知道路において施工している横倉大橋、立花大橋は耐候性鋼材を活用し、桁端部を塗装しています。
立花大橋
――奈半利管内で腐食が進行しているとのことですが、耐候性鋼材のことですか
森山 そうではなく、一般的なものです。
――耐候性鋼材については
森山 管内では14橋で採用しています。健全度Ⅰが9橋、Ⅱが5橋となっており、現時点で特質して注視している状況ではありません。
床版 道示年次の古い橋梁で疲労の疑いも
主桁損傷 奈半利管内は塩害による損傷と推測
――コンクリート部材については
森山 床版ひび割れと漏水・遊離石灰に着目すると、1961年~1980年に架設された橋梁で、2方向ひび割れが他の年代に比べて顕著に見られています。一般的に言われております通り、昭和48年道路橋示方書(以降、道示)以前に設計された橋梁の床版は疲労耐久性が低く、昭和39年道示以前の設計であれば、さらに疲労耐久性が低くなっています。各路線とも木材運搬車などの重車両の往来も多いため、床版疲労の可能性もあります。
主桁の剥離・鉄筋露出とうきに着目すると、国道55号奈半利管内は塩害による損傷と推測されます。
コンクリート部材の損傷状況(左から国道32号吉野川橋橋脚部、33号ひらばた橋桁部、55号須川橋桁部)
トンネル 健全度Ⅲは6本
シリアスな損傷は無し
――トンネルについては
森山 健全度Ⅰが1本、Ⅱが51本、Ⅲが6本となっています。
材質劣化(目地およびひび割れ沿い、覆工表面の一部にうき・劣化)、および漏水(目地、ひび割れ及び裏込め注入工跡、溝切工)が殆どを占めます。
トンネルの損傷状況(左:国道56号影野トンネル(ひび割れ、うき)、右:32号大豊トンネル(漏水))
――目地方向のひび割れでしょうか。もしくは道路軸方向のひび割れも発生していますか
森山 連続性に乏しい縦横断方向のひび割れです。輪切り状・スパンを連続して跨ぐようなひび割れはありません。
耐震補強 6橋で対策を実施中
未対策橋梁は32橋
――耐震補強について
森山 緊急輸送道路上の耐震補強進捗状況は、令和4年度末時点で88.4%が完了しています。未対策橋梁は32橋(対象橋梁277橋)です。令和5年度は、6橋(R32:豊永大橋、新領石橋、高知橋、R33:寺村橋、潰溜橋、R56:新荘川橋)で対策実施中です。
国道32号 豊永大橋の各種耐震補強
――対策状況は耐震性能2ですか、それとも3ですか
森山 耐震性能2です。
――実施中の6橋は特殊橋ではありませんか
森山 豊永大橋は下路トラス橋です。下部工の橋脚巻き立てを行っています。
――上部工は
森山 支承取替(分散、免震)、ゲルバー部連続化、当て板補強(アーチリブ・橋門構))、粘性ダンパーの設置などを行っています。施工は完了しています。
豊永大橋の当て板補強(左、中は補強前の損傷状況、右は補強完了状況)