道路構造物ジャーナルNET

流された10橋の内、4橋の橋脚、3橋の橋台に着手

国交省八代復興 球磨川沿い国・県道の復旧復興が進む

国土交通省
九州地方整備局
八代復興事務所
所長

徳田 浩一郎 氏

公開日:2022.10.28

西瀬橋と天狗橋は部分的な架替え
 深水橋、鎌瀬橋は鋼単純アーチで河川内橋脚を避ける

 ――西瀬橋は現在、仮橋を架けているところを外して、同じトラスを架けるということですね
 徳田 そうです。


西瀬橋橋梁一般図


西瀬橋現況(井手迫瑞樹撮影)

 ――天狗橋と西瀬橋については、先ほどの対策後水位を考慮しても同じ高さでも大丈夫という判断ですか
 徳田 そうです。天狗橋は基本的には流出していませんし、西瀬橋は対策後水位よりも上にあります。
 ――天狗橋のA1橋台は背面が損傷しただけなので、長くすることに決めたということですか
 徳田 もともと橋台位置が堤防から飛び出た形になっていました。それを堤防よりも内側にいれて、上部工を1スパン架替えます。
 ――堤防橋台をするのですか、それとも堤防の外に橋台を構築するのですか
 徳田 これからの検討になります。
 ――堤防橋台は堤防がやられたら終わりなので、そのようにはしたくないですね
 徳田 しかし、堤防があるところはほとんどそのようになっています
 ――格上げ復旧する際は、橋台を堤防の外に出しているケースがほとんどです。
 徳田 そうすると橋桁を堤防よりも相当上げなくてはならず、橋梁自体を架替えなければならなくなります。そのため、堤防を張りブロック等で強化し橋台を作ることになると思います。
 ――形式が変更されている橋梁がかなりあります
 徳田 深水橋はもともと流水部がアーチ橋の6径間の橋梁でしたが、橋脚が立てられないため、1径間のアーチ橋に変更しています。坂本橋は歩車分離の2径間ワーレントラス橋でしたが、地元の意向も踏まえて2径間のトラス橋で復旧します。鎌瀬橋についても3径間のうち1径間がアーチ橋でしたが、復旧位置が狭くなっている箇所のうえ、河積阻害率の関係で橋脚を構築できないので1径間のアーチ橋とします。


深水橋の橋梁復旧の考え方

深水橋が架かっていた個所(井手迫瑞樹撮影)

坂本橋の橋梁復旧の考え方と設計状況

坂本橋の仮橋と同橋の本復旧時架設予定地

鎌瀬橋は200mをアーチでとばす

 ――鎌瀬橋はかなり橋長がありませんか
 徳田 復旧橋梁は橋長200mとなります。

鎌瀬橋の橋梁復旧の考え方と設計状況


鎌瀬橋はすぐ下流に本復旧の橋梁設置を予定している(井手迫瑞樹撮影)

鎌瀬橋の仮橋建設状況(2021年5月ごろ、髙野組提供)

仮橋供用中の鎌瀬橋(井手迫瑞樹撮影)

 ――それを単純アーチ橋にするのはすごいですね
 徳田 国道の橋梁ということもあり、これがメインとなります。見ごたえのある橋梁になると思います。
 神瀬橋はRC(T桁)+鈑桁の一番古い橋で橋脚が転倒しました。現在の構造物基準を満たさないことと、橋脚を構築できないことからアーチ橋(約130m)でとばすことにしました。大瀬橋はトラス+PC単純ポステンT桁(両側径間)で、球磨村管理の橋梁となっています。松本橋も球磨村管理です。自治体の意見を聞くなかで維持管理性を考慮して、鋼床版箱桁橋としました。相良橋はワーレントラス(2連)+鈑桁でしたが、ワーレントラスでは3径間となるので、早期復旧のために河川内にできるだけ橋脚を構築せず、2径間のトラス橋としました。沖鶴橋はPC4径間単純ポステンT桁橋でしたが、コンクリート橋で2径間にすると柱頭部が非常に大きくなり太鼓橋となりますので、鋼橋としました。


神瀬橋の橋梁復旧の考え方

神瀬橋架橋予定地/撤去に用いた桟橋(井手迫瑞樹撮影)

大瀬橋の橋梁復旧の考え方/同橋の設計状況

大瀬橋本復旧架設予定地(井手迫瑞樹撮影)

松本橋の橋梁復旧の考え方/同橋の設計状況

松本橋架設予定地

 河積阻害率や施工可能期間といった橋脚構築の制約と早期復旧の観点から、すべて鋼橋となりました。とくに出水期は施工できませんので、橋脚が2基あれば2年かかることになります。それだけ復旧に時間がかかってしまうことになります。

 ――アーチ橋やトラス橋はどのように架設していきますか。山が迫ってきているので、タワークレーンの設置など施工ヤードの問題があると思うのですが
 徳田 ケーブルエレクション工法での架設になると思います。
 ――アンカーはどのように打ちますか
 徳田 アンカーは山側の斜面に打ちます。最近、全国的にもケーブルエレクション工法の採用事例は少なく、苦労はあるかもしれませんが、技術的な継承を考えれば、挑戦していく価値はあると思います。
 ――小割して運搬するのですか。地組ヤードも足りないのでは
 徳田 ヤードについてはこれから検討していきます。この区間では一般交通は止めており、地元車両と工事車両のみ通行可能となっています。夜間は地元車両もほとんど通らないので、規制をかけて離れたヤードから運搬するという手もあります。あるいは、仮桟橋をつくることなども考えられます。
 ――アーチ橋はケーブルエレクションしかないですが、他は送出しという考えもあります
 徳田 そうなると思います。
 ――難工事で大変だとは思いますが、記者としては興味深い工事となります
 徳田 これらの工事を経験する業者さんには、現場で苦労されるかもしれませんが、スキルはものすごく上がると思います。さらに、いいものができあがれば地元の方は喜んでくれます。
 ――下部工について、各橋の被災原因は確認したのですか
 徳田 確認できるはっきりとした原因はわかりません。
 ――推定では
 徳田 検討会のなかで行っています。神瀬橋のように橋脚が転倒しているのは昔の設計基準だからと言えます。新しい橋梁では下部工は流出していません。直接基礎を杭基礎にするということは検討会のなかでも議論していません。直接基礎に突起をつける事例はあると聞いていますが、そこまでは必要ないと考えています。
 契約予定となっている4橋はニューマチックケーソン基礎となります。そのため、杭や突起は必要ないと考えています。
――ニューマチックケーソン基礎の深さは
 徳田 刃先からフーチング上部までで約4.5mです。
 ――橋脚が転倒したのは水位(浮力)が原因と推定していますか
 徳田 そうだと思います。場合によっては上部工に張り付いた流出物に引っ張られたということもあるかもしれません。原因がはっきりしないというのは、複合的なものが考えられるからです。

「流出しにくい橋梁」の模索は検討会で実施
 水流により防護柵が自動転倒するようなものも検討

 ――橋脚が傾斜している橋梁はないのですか
 徳田 ほとんどありません。例えば、沖鶴橋では沓座のアンカー筋が真横に寝ています。ある程度の浮力がかかって、そのまま押されて抜け出たと考えられます。このように結果からの推測でしかありません。確定的な原因は検討会でも出せないので、あくまでも推定としています。
 ――規模の大きい沖鶴橋のPC桁が流出しているのには驚きました
 徳田 T桁がほぼ全径間流出したというのは浮力が非常に強かったことだと思います。


沖鶴橋の沓座状況(井手迫瑞樹撮影)/沖鶴橋の流失状況

 ――ハイウォーターレベル+1.5mとのことですが、昨今の異常気象は予想がつかないところがあるので、引き抜き耐力を上げるなどの構造上の工夫はしていますか
 徳田 新しいことに取組むとなると検証をしなければなりません。本事業は災害復旧事業なので、それは行わないという方針にしています。ただし、流出しにくい橋梁にはどういうメニューがあるかは検討会で議論をしていくことにしており、今後も対策などを検討していきます。
 ――川の流れに対して抵抗が少ない橋脚(フェアリング)としている事例もあります
 徳田 通常の小判型となっています。フェアリングは水流が下にもぐるので、浮力が増すことにもなります。何がいいのかはわかりません。水流により防護柵が自動転倒するなど、さまざまなメニューが考えられる中で意見を集約して、今後、検討会でも提言していきます(※第5回検討会の資料がHPに公開。参照)。
 ――津波や洪水時に防護柵が倒れるものは、IHIが5、6年前ぐらいの土木学会の全国大会で発表していました。下部工の形状で小判型ではなくて、形状を工夫して水の抵抗を減らす橋脚が長良川や揖斐川で採用されているので、本事業でも設計時に行っているかを確認したかったのですが
 徳田 それはしていません。形状変更となると、試験などが必要になり、理論武装もしなければなりません。今回は早く設計して復旧していくことが第一なので、それを行う時間がありません。

1河川において10橋同時に復旧する事例は初めて
 できるだけ単純径間を模索した
 

 ――鋼橋では塗替えが必要になります。大瀬橋、松本橋、沖鶴橋は村管理となりますが、維持管理性の点で桁下の塗装はどうのようにしていますか
 徳田 塗替え間隔が長いフッ素系を採用します。
 ―足場が設置しやすい構造にするなど、塗替えを容易にする工夫は
 徳田 フックなどを設置すると思います。
 ――村管理となると大変ですよね
 徳田 定期点検さえも予算不足で直営で実施しなければならず、その人材も不足している状況は承知していますので、できるだけ負荷がかからないように単純桁にしています。
 ――1BOX箱桁ですか
 徳田 詳細は設計中です。
 ――今後の維持管理を考えると、できるだけボルトレスにしたほうがいいと思いますが、高力ボルトで添接していく形ですか
 徳田 そうなると思います。施工上では、例えば松本橋はヤードがありません。そのため、片側1径間はベント併用で架設して、もう1径間は送出しで架設することが可能かもしれません。施工方法は検討中です。
 ――受注者も総合評価で決めていく形ですか
 徳田 狭隘なヤードがないなかでどういうテーマを出すかによります。発注に関しては、整備局契約になりますので、局とも相談しながら検討していきます。
 ――それにしても橋梁だけでもこれだけの事業になるのはすごいですね
 徳田 10橋同時に復旧する事例はありません。
 ――東日本大震災以来ですね
 徳田 東日本大震災の時は広範囲にわたっていましたが、今回の工事は狭い範囲に長大橋が集中しています。
 ――アーチ橋、トラス橋が多いのも珍しいですね。斜張橋があればさらに良かったのですが
 徳田 球磨川を渡河する橋梁は、早期復旧の観点から早く上部工に着手するため、すべて1径間にしたかったのですが、地形や河川条件などの現場条件の制約がないものは、橋脚を設置し複数径間としている橋梁もあります。
 ――場所によっては片吊りの斜張橋も可能ですね
 徳田 村道ですから幅員が5mしかありません。PC橋にすると柱頭部が大きくなり、形状的な課題もありました。

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