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高知橋補修・補強工事では四国地整初のECI方式を採用

2022年新春インタビュー② 四国地方整備局 「四国8の字ネットワーク」の整備に注力

国土交通省
四国地方整備局
道路部長

鈴木 学

公開日:2022.01.01

 国土交通省四国地方整備局は、四国4県を8の字の形で結ぶ高速道路ネットワークの整備を進めている。とくに、沿岸部の唯一の主要幹線道路である国道55号・56号には南海トラフ地震発生時の津波浸水予想区域が多く存在することから、災害時のリダンダンシーの確保の観点からも未開通区間の整備は重要だ。保全では、橋梁2,740橋とトンネル173箇所を管理し、建設後50年を超える割合が橋梁では38%、トンネルでは32.4%と高齢化が進んでいる。これら整備事業と保全の取り組みについて、鈴木学道路部長に詳細を聞いた。
※未供用部のIC・橋梁・トンネル名は仮称です

11路線、延長約1,336.7kmを管理
 四国山地を横断する道路についても整備を推進

 ――四国地方整備局が管理する道路は
 鈴木部長 四国4県の11路線、総延長約1,336.7kmの直轄国道を管理しています。そのうち、自動車専用道路は約111.9kmです(2021年4月1日現在)。
 ――管内の道路整備の現状は
 鈴木 当地整で最も注力しているのは、「四国8の字ネットワーク」の整備です。四国4県を8の字の形で結ぶ高速道路ネットワークで、計画のうち、徳島南部自動車道での初の開通や高知南国道路が全線開通するなど、2021年4月1日時点で約7割が開通済みとなりました。


四国8の字ネットワーク 概要図(一部、編集部で加工)(四国地方整備局提供。以下、注釈なき場合は同)

 四国は周囲を海に囲まれ、中央部には東西にのびる四国山地があって急峻な地形が多いことから、道路の多くが沿岸部を通っています。また、四国山地を超えて沿岸部に到達する道路とそのネットワークは脆弱となっています。
 南海トラフ地震発生時には太平洋沿岸を中心に甚大な津波浸水被害が予想されています。その沿岸部を通過する唯一の主要幹線道路である国道55号・56号には津波浸水予想区域が多くあり、災害時の避難や震災後の道路啓開・緊急輸送・企業の事業継続などに大きな影響が出ることが懸念されています。このため、「四国8の字ネットワーク」、とくに沿岸部の未開通区間の整備に全力で取り組んでいます。


国道55号・56号の津波浸水予想区域の一例

 管内の特徴としては、気候的に台風常襲地帯で太平洋側は日本屈指の豪雨地帯であることも挙げられます。自然災害による通行止めや事前通行規制も多く、2020年度の管内11路線の通行止めは延べ17回に達しました。そこで、沿岸部の道路とともに、四国山地を横断する道路についても整備を進めています。
 そのひとつが、徳島県と香川県の県境を跨ぐ国道32号猪ノ鼻道路(延長8.4km)で2020年12月に開通しました。現道は防災上危険な箇所や急なカーブ、坂道が多く、異常気象時における事前通行規制区間であるとともに、凍結・積雪による通行障害が頻発していました。同道路はそれらの解消と、徳島県西部地域と香川県西部地域の連携強化を目的としたもので、開通により安全性向上とネットワーク強化を実現できました。


国道32号猪ノ鼻道路 概要

四国横断自動車道 阿南四万十線 阿南~徳島東 新町川橋を含む延長2.4kmは開通
 全長1,284mの江田高架橋は下部工工事を推進

 ――主な整備事業について。「四国8の字ネットワーク」の事業中区間を教えてください
 鈴木 「四国横断自動車道 阿南四万十線 阿南~徳島東」「一般国道56号 津島道路」「一般国道55号 南国安芸道路」「一般国道56号 窪川佐賀道路」で事業を進めています。
 ――各道路の概要、整備効果、事業進捗率は
 鈴木 四国横断自動車道 阿南四万十線 阿南~徳島東は、阿南ICから徳島沖洲ICまでの延長17.3kmの道路です。このうち、橋長500mの新町川橋(関連記事: ①上部工②基礎を含む徳島沖洲IC~徳島津田IC間(延長2.4km)は2021年3月に開通しました。


四国横断自動車道 阿南四万十線 阿南~徳島東 概要図


新町川橋の架設(上右と下写真:大柴功治撮影)

 徳島県東部地域の8の字ネットワークの整備については、今回の開通区間とNEXCO西日本が整備を進めている2021年度内に開通予定の徳島JCT~徳島沖洲IC間を合わせると、ようやくネットワークの一部が完成する形となります。残る区間についても鋭意事業を進めていきます。
 整備効果では、災害時における国道55号の代替路としての機能や、阿南市~徳島市間の主要渋滞箇所の渋滞緩和などが期待されています。事業進捗率は約63%(事業費ベース。以下同)です。
 ――構造物について教えてください
 鈴木 全延長に占める橋梁割合は新町川橋を含めて約30%です。施工中の主な橋梁としては連続高架橋である江田高架橋(全長1286.5m)があり、AA1-AA2間(37径間)の下部工工事を推進しています。


江田高架橋の施工状況

 発注済み、施工中のトンネルは2本あり、新居見トンネル(1,403m)が1月に契約を完了予定で、羽ノ浦トンネル(753m)は掘削中です。
 ――下部工工事で特別な工法で施工する橋梁はありますか
 鈴木 発注予定、施工中の橋梁ではありません。
 ――トンネルの地山状況はいかがですか
 鈴木 2本とも土被りが浅いトンネルなので、軟弱な地質の箇所が多くなっていますが、施工で特段問題があるとは聞いていません。
 ――羽ノ浦トンネルの掘削状況は
 鈴木 2021年4月に掘削を終点側から開始して、約306mの掘削が完了しました(2021年11月末時点)。


羽ノ浦トンネルの坑口と施工状況

一般国道56号 津島道路 延長10.3kmでトンネル比率は約46%
 新内海トンネルでは新技術活用で省力化と安全性の確保に取り組む

 ――一般国道56号 津島道路は
 鈴木 内海ICから宇和島道路の津島岩松ICまでの延長10.3kmとなります。松山市と四国西南地域を高速道路ネットワークで直結することにより地域間交流の活性化が見込まれるほか、南海トラフ地震発生時や豪雨災害時などにおける安全性と信頼性が確保されることになります。事業進捗率は約23%です。


一般国道56号 津島道路 概要図

 構造物は山間部を通るルートですのでトンネル(本線部3本)比率が約46%と高くなっています。最長のトンネルは新内海トンネルで2,541mです。橋梁比率は約11%で、柏川橋(222.0m、PC6径間連結コンポ橋)、上畑地5号橋(138.5m、PC5径間連続ラーメン中空床版橋)で下部工を施工中のほかは、3橋で設計完了、6橋は設計中となっています。


上畑地5号橋の施工状況

 ――新内海トンネルの状況は
 鈴木 2021年10月に掘削を起点側から開始しました。施工者の大成建設が新技術を活用して省力化と安全性の確保に取り組んでいます。
 ――どのような新技術を活用するのでしょうか
 鈴木 DⅢ区間全線では、「瞬間吹付コンクリート工法」を採用します。粉体助剤「デンカΣショットV」と液体急結剤「デンカナトミックスLSA」を吹付直前にコンクリートに添加することで、材齢10分の圧縮強度を3N/mm2以上に高めて変位抑制を図ります。
 注入式フォアポーリングの施工では、「注入式ロックボルトのコーキングシステム」で孔口を密閉することにより、確実な注入の実施を図ります。これは、注入ボルト口元にラバーカッパーを取り付けて、注入時に高圧(4MPa)でラバーカッパーを膨張させることで、孔口を確実に密閉するものです。
 安全対策では、低土被り部ではレーザー距離計による多点同時変位システムを導入して、掘削完了箇所の切羽挙動を面的かつ連続的に記録することにより、目視で確認できない微小な変位を定量的に把握していきます。また、ズリ積込み作業で使用する重機に設置した装置と作業員・職員が装着するICタグが連動するシステムの導入により、作業員・職員が危険エリアに入るとオペレーターと作業員・職員の両方に警告を行うといった施工時の安全性確保を図ります。



新内海トンネルの施工状況

一般国道55号 南国安芸道路 橋梁・高架橋比率は約53%
 橋長243mの物部川橋は剛結部施工が完了

 ――一般国道55号 南国安芸道路は
 鈴木 高知東部自動車道の一部を成す延長12.5kmの道路で、開通済みの高知南国道路の高知龍馬空港ICから芸西西ICまでの区間となります。このうち、東側の香南のいちIC~芸西西ICまでの9kmは開通済み。高知龍馬空港IC~香南のいちIC間(延長3.5km)が2025年春頃の開通予定で、全力で工事を進めています。事業進捗率は約71%です。


一般国道55号 南国安芸道路 概要図

 現在、物部川渡河部である国道55号や県道364号南国野市線に交通が集中して混雑が発生しています。同区間の開通により、混雑区間を回避した新たな渡河ルートができますので、移動時間の確実性向上が期待されています。
 構造物は橋梁のみで、橋梁・高架橋比率は約53%となっています。
 ――橋長の長い橋梁は
 鈴木 物部川橋があります。鋼4径間連続ラーメン合成少数主桁橋で河口部の川幅が広くなっている物部川を渡河するため、橋長が243mと長くなっています。


物部川橋 一般橋梁図

 ――施工状況を教えてください
 鈴木 剛結部の架設、コンクリート充填が12月に完了しました。
 ――架設はどのように行っているのですか
 鈴木 同橋下流側の右岸(A1側)からP2まで仮桟橋を構築して、A1~P1間にベント1基、P1~P2間に同2基、P2~P3間に同3基、P3~A2間に同2基を設置しました。
 桁架設は、最初にP1~P2間、次にA1~P1間を200t吊クローラクレーンで架設し、その後、左岸側のヤードから100t吊クローラクレーンを用い、P3~A2間、P2~P3間の順番で架設しています。


仮桟橋の構築が完了し、今渇水期から架設を開始する


2021年12月20日と23日には、四国地方整備局と施工者の三井住友建設鉄構エンジニアリングによる高知工業高等専門学校の学生への現場見学会が開催され、4D(3Dモデル+時間軸)施工シミュレーション動画による施工手順の説明やVRによる架設現場実体験シミュレーションが行われた(三井住友建設鉄構エンジニアリング提供)

 ――河口部に架橋とのことですが、防食での取り組みは
 鈴木 本橋は耐候性鋼材を採用しております。海岸からは約3km離れていますが、下フランジ上面の添接板端部に滞水処理を行ったほか、桁端部下フランジへの水切り板の設置、上フランジ合成床版接触面(ゴムパッキン部)の塗装などを行っています。

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