道路構造物ジャーナルNET

地層構成が複雑で改良工に苦心

浜田河川国道事務所 三隅・益田道路の橋梁、トンネル、道路改良の工事が進捗

国土交通省
中国地方整備局
浜田河川国道事務所長

前田 文雄 氏

公開日:2021.07.06

247橋、22トンネルを管理
 10m以下の橋梁が約4割を占める

 ――保全について。管内の橋梁とトンネルの内訳は
 前田 当事務所では247橋(総延長11.6㎞)の橋梁と、22箇所(総延長9.7km)のトンネルを管理しています。
 橋種別ではPC橋が96橋(39%)と最も多く、RC橋94橋(38%)、鋼橋57橋(23%)となっています。トンネルは在来矢板工法が13箇所(59%)、NATM9箇所(41%)です。
 供用年次別では、橋梁、トンネルともに1960年代がピークとなっています。建設後50年以上経過している橋梁は41%、トンネルは46%です。それが10年後には橋梁53%、トンネル59%、20年後には橋梁65%、トンネル64%となります。
 延長別では、橋梁は10m以下が101橋(41%)、100m以上が40橋(16%)、トンネルは1,000m以上が2箇所(9%)、1,000m未満が20箇所(91%)となっています。
 路線別では、一般国道9号が橋梁220橋(89%)、トンネル20箇所(91%)、一般国道191号が27橋(11%)、トンネル2箇所(9%)です。

Ⅲ判定は橋梁18橋、トンネル10箇所
 全体をマネジメントしながら対策を加速

 ――橋梁とトンネルの定期点検結果を教えてください
 前田 1巡目の定期点検結果は、橋梁ではⅢ判定18橋、Ⅱ判定56橋、Ⅳ判定はなく、残りはⅠ判定となります。橋種別では、鋼橋でⅢ判定が14橋と多くなっています。


橋梁の点検結果

 トンネルではⅢ判定10箇所、Ⅱ判定14箇所で、ⅠとⅣ判定はありません(未供用区間の2箇所(NATM)を含む)。Ⅲ判定10箇所のうち、9箇所がNATM工法のトンネルとなっています。トンネルは全国的な傾向から見るとⅢ判定が多くなっていますが、管内ではそれほど多くありません。


トンネルの点検結果

 ――矢板工法ではなくNATM工法でⅢ判定が多くなっている理由は
 前田 補修工事を随時行っており、補修後の点検によりⅢ判定がなくなります。矢板工法は定期点検を2019、2020年度に行っているため、Ⅲ判定が少なくなっています。NATMも9トンネルの内、5トンネルは補修完了しています(補修は完了しているが、点検を行っていないため、Ⅲ判定のままになっている)


NATM工法のトンネルでの損傷事例(一般国道9号吉地第2トンネル)

 ――2巡目点検に入り、損傷が進んでⅡ判定からⅢ判定に移行しているケースはありますか
 前田 それはないです。補修の詳細設計をしていて、若干状況が変わって工事発注に使えなかったということはありますが、損傷が進む前に対処しなければならないという考えを持っています。
 ――予防保全という観点からはいかがですか
 前田 Ⅲ判定のなかでも一気に対策ができづらい箇所があります。例えば、支承の取替えや桁の断面補修は年次計画を立てなければなりません。計画をうまく立案して、全体をマネジメントしながらスピードアップさせるということだと思います。
 ――点検を進めての橋梁とトンネルの全体的な損傷状況について
 前田 PC橋、RC橋では橋台のひび割れ、漏水、遊離石灰が最も多く、次いで主桁の剥離、鉄筋露出が多くなっています。目地部の水漏れが原因と考えられます。鋼橋では、主桁、横桁の防食機能の劣化および腐食が最も多くなっています。
 トンネルはNATM、矢板ともに覆工の漏水などによる変状、うき・剥離が多くなっています。


橋台竪壁のうき(一般国道9号大木橋側道橋)/支承の腐食(一般国道9号和木橋)

主桁の腐食(一般国道9号益田新大橋)/漏水による変状(一般国道9号浅利トンネル(在来工法))

Ⅲ判定の橋梁、トンネルのうち、5橋、5箇所で対策完了
 一般国道9号亀山橋ではパイルベント橋脚の腐食が進み、対策を実施中

 ――対策の進捗状況と損傷事例について教えてください
 前田 Ⅲ判定となった橋梁、トンネルは早期に、Ⅱ判定についても随時補修工事を行っています。現在、Ⅲ判定の橋梁18橋、トンネル10箇所のうち5橋、5箇所で対策が完了していて、橋梁は2024年度に、トンネルは2022年度にすべての対策が完了する予定です。
 浜田市内の浜田川に架かる一般国道9号亀山橋は、1965年に建設された橋長47.3mの単純PCプレテン床版橋×4ですが、鋼製のパイルベント橋脚の腐食が進み、Ⅲ判定となりました。橋脚3基のうち1基目(P1)の補修を昨年度から行っています。3~4年で補修を行えば、Ⅳ判定には至らないという判断をしています。
 ――どのような対策を行っていますか
 前田 あわせて耐震補強工事も行っていますので、鋼管に鋼板を接着するとともにSSP工法を採用しています。円管部分の補修・補強方法で施工性や実績から確実な施工を求めて採用しました。


一般国道9号亀山橋の損傷と対策

 ――上部工の対策事例は
 前田 昨年度、一般国道9号浜田道路の三宮高架橋で床版の土砂化が確認されたため、仮復旧を行い、今年度に断面修復による補修および橋面防水の施工を行います。


三宮高架橋 床版の土砂化

一般国道9号新折居川橋 塩害による損傷が発生
 塩分吸着剤による高防錆型断面修復工法で補修

 ――塩害、ASRによる劣化の有無と、劣化が発生している場合はその状況と対策例をお願いします
 前田 塩害による劣化は16橋で発生しています。一般国道9号は山陰道よりも海側を通っていますので、飛来塩分によるものと推察されます。劣化状況はひび割れ、うきとなっています。
 一般国道9号新折居川橋(橋長16.8m、単純PCプレテン床版橋×2)では、塩害によりP1橋脚にひび割れ、うき、補修・補強材の損傷などが発生しました。そのため、塩分吸着剤による高防錆型断面修復工法(N-SSI工法)を用いて補修を行いました。
 ASRによる劣化での補修は2015年度以降ありません。


一般国道9号新折居川橋 塩害による損傷状況と対策

 ――耐震補強の進捗状況は
 前田 橋梁補修を優先的に行い、耐震補強工事にも順次着手していきます。耐震性能3については全橋完了していて、耐震性能2未対応の橋梁は14橋です。
 ――支承およびジョイント取替えの2020年度実績と2021年度の予定は
 前田 支承取替えは、昨年度は一般国道191号高津側道橋ほか2橋で合計39箇所実施しました。今年度の予定箇所はありません。
 ジョイント取替えは、昨年度は一般国道9号(浜田道路)三宮高架橋ほか1橋で合計4箇所実施していて、今年度も三宮高架橋と一般国道9号(江津バイパス)分田谷橋の2橋4箇所を予定しています。
 ――2020年度および2021年度の鋼橋塗替え実績・予定は。また、新しい重防食の採用がありましたら教えてください
 前田 歩道橋と側道橋が多くなっていて、本線橋の塗替え予定は近々ではありません。昨年度は一般国道191号高津側道橋で4,490㎡の塗替えに着手したほか、歩道橋3橋877㎡の施工が完了しました。今年度は一般国道191号高津側道橋のほか、歩道橋1橋395㎡の塗替えを行います。新しい重防食の採用予定はありません。
 ――PCBや鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理は
 前田 鉛中毒予防規則等関係法令に従い、湿式工法で処理を行っています。昨年度施工した鎌手横断歩道橋では既存塗膜に鉛が含有しており、塗膜剥離剤(ネオリバー泥パック工法)を用いて除去しました。
 施工時の作業においても労働基準監督署の指導に基づき、送気マスクもしくは防毒マスクの使用、保護服、保護手袋の着用、換気装置の設置など、適切に対応を行っています。
 ――耐候性鋼材を採用した橋梁数と現状の健全度は
 前田 管内には5橋あります。そのうち、1橋(一般国道9号野広第二大橋)がⅡ判定となっています。凍結防止剤を含む路面排水が鋼材にかかり腐食したものと考えられます。


一般国道9号野広第二大橋 防食機能の劣化

災害の観点からも老朽化が進む一般国道9号現道のメンテナンスが重要
 日常業務の巡回や点検もしっかりできる体制に

 ――防災対策の要対策箇所数と進捗状況、対策事例について教えてください
 前田 32箇所の要対策箇所があり、今年度は11箇所完了する予定です。具体的には、落石防護柵や吹付、のり枠などの防災対策を行っています。予算や箇所ごとの工事費によって変わりますが、年間5~9箇所程度を施工していきたいと考えています。


一般国道9号浜田市岡見地区での落石対策工(左:施工前/右:施工後)

 ――激甚化する災害に対してどのように対応していくか、お考えをお聞かせください
 前田 近年の激甚化もしくは多頻度化している災害という観点では、一次改築以降使われている一般国道9号の手当てが重要であると考えています。老朽化していますので、事前のメンテナンスに力を入れていくことが必要です。
 異常気象による環境の変化などで、現段階ではⅢ判定でも5年以内にⅣに移行するケースがこれから多発することが考えられます。5年に1回の定期点検以外に、日常業務の巡回や点検をしっかりとフォローしていくことが重要になってきます。
 その意味では、これからの道路構造物のあり方はしっかりとした経験値に基づいて、維持管理のしやすい構造ということに目を向けるべきだと考えています。
 点検なども新技術を使いながら、押さえるところは確実に監視していくことが我々に求められていることだと思います。
 ――新技術・新材料などの活用事例がありましたら
 前田 支承の若返り工法(NETIS:HR-100013-VR)を採用しています。一般国道9号江川橋では52基、一般国道9号(江津バイパス)新江川橋では3基、一般国道191号高津側道橋で4基施工しました。


支承の若返り工法 一般国道9号浜田川橋(左:施工前/右:施工後)

 現在、点検でのドローンや画像解析は採用していません。ひび割れの画像解析処理は興味がありますので、今後、活用していきたいと考えています。
 ――遠隔臨場はいかがですか
 前田 管内全体の取組みとして行っています。材料や施工段階をリモート確認しています。昨年度からはリモート検査の試行を行っており、今年度はさらに増えると思います。
 ――付言して
 前田 建設業協会に加盟している会社なら誰でも参加できる各現場の勉強会を開催して、情報やノウハウを隠さずに共有するようにしています。現在は、対面で行うことは難しいので、オンラインで実施しています。


勉強会の様子
 ――ありがとうございました
(聞き手=大柴功治)

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