道路構造物ジャーナルNET

主戦場となる保全分野の工事を積極的に受注

ピーエス三菱 森拓也新社長インタビュー

株式会社ピーエス三菱
代表取締役社長

森 拓也

公開日:2020.04.01

フルキャスト壁高欄 床版同時架設と場所打ち不要で大幅省力化
 新しい電気防食技術「Znカートリッジ工法」を開発

 ――床版取替技術について、御社では半断面床版取替工法やMuSSL工法、フルキャスト壁高欄などの技術をお持ちです。今後は、重交通路線をはじめ厳しい環境下での床版取替工事が増えて、半断面施工の需要が増えてくると思いますが
  中国道の道谷第二橋(上り線)に続いて、中国道の大谷橋(中国自動車道大谷橋他2橋床版取替工事)で2020年度に施工予定です。他社に先行して半断面施工を行いましたので積極的に売り込んでいきたいと思いますが、道谷第二橋で施工したものが完成形であるとは考えていません。もっと施工条件の厳しいところが当然出てきますので、案件を見ながら次のステップの技術開発を引き続き行っていく必要があると考えています。


半断面床版取替工法で施工された道谷第二橋(上り線)(左は弊サイト掲載済み写真)

 ――どのような技術開発が求められていると思いますか
  1車線を規制せずに車を通しながらその横で施工するわけですから、絶対的な安全が求められます。より安全な架設機を考えなければなりませんし、走行車にとっても安心感があるものでないとなりません。そのようなことがひとつのテーマになると思います。
 ――施工の短縮という観点からはどうですか
  現在、1日の架設枚数は3~4枚です。それを短縮するというのは、私の考えにはありませんでしたが、課題にはなり得ると思います。効率的な架設をするという意味では、架設機が重要になりますが、車が横を通っているわけですから、やはり安全が確実に保障できるようなものでなければならないと思っています。
 ――MuSSL工法については
  当社施工は基本的にMuSSL工法を採用していて、実績も増えてきました。接合部の底型枠が不要で、220mmの薄い床版を実現するという基本コンセプトがはっきりとしていますので、需要は必ずあると思っています。実際、他社施工の橋梁で底型枠を設置できない場合はMuSSL工法を採用したらいい、という話を聞いていますし、作業員の評判もいいです。
 中国道の常国橋で初採用して、昨年秋に施工した東名高速道路の江尾橋ほか4橋ですでに採用しています。


MuSSL工法 継手構造/江尾橋の接合部

 ――フルキャスト壁高欄は
  壁高欄の施工は、床版取替工事の工程上のネックになっていました。そのため、省力化のためにさまざまなプレキャスト壁高欄が開発されていますが、部分的に場所打ちをしなければならないものがあります。少しでも打設するということは、型枠を設置しなければなりませんし、養生もしなければなりませんから、手間がかかります。
 フルキャスト壁高欄は、壁高欄のために打設はしないというコンセプトで開発したものです。PC床版にあらかじめ壁高欄を構築して架設しますので、PC床版の架設が完了したら壁高欄も架設されている状態になり、大幅な省力化が可能です。高欄接合部はせん断キーを用いて荷重を伝達する構造で、架設後に目地部にモルタルを充填します。
 東名高速道路の江尾橋で初適用して、2020年度も採用する橋梁が何橋か決定しています。


フルキャスト壁高欄 構造概要/江尾橋では現場近くのヤードでフルキャスト壁高欄を製作

江尾橋での新設PC床版架設。フルキャスト壁高欄が一体化されている

 ――補修技術で特徴的なものがありましたら教えてください
  インドネシア道路技術研究所との共同研究でもお話しましたが、新しい電気防食技術である「Znカートリッジ工法」があります。最近、日本では電気防食によるコンクリート構造物の補修はあまり伸びていません。それは、施工後の維持管理で専門性を求められることなどがネックになっていると考えています。そこで、Znカートリッジ工法では、鋼材より錆びやすい流電陽極材を使用して、流電陽極材と鋼材との電位差により鋼材に電流を流すことで鋼材の腐食を緩和することにしました。
 日本では外部電源方式が多く採用されていますが、Znカートリッジ工法は外部電源が不要で、機械のメンテナンスも不要となります。施工方法は内部挿入タイプも表面設置タイプも流電陽極材をあと施工アンカーで固定するのみで容易なうえに、取替えも可能です。現在は試験施工が終わって、2020年度から本施工を開始する予定です。


Znカートリッジ工法 設置事例と設置概要図

 維持管理のためには、電気防食用モバイル型遠隔監視システムの「イージーMモニター」を開発しました。モバイル端末があれば、必要なデータをいつでもどこでも確認することができます。

城陽第二高架橋はプレキャストセグメント工法で架設
 社員研修をより充実させる

 ――施工中もしくはこれから施工する特徴的な現場は
  NEXCO西日本発注の新名神高速道路・城陽第二高架橋(上下線)を受注しました。橋長1,036mのプレキャストPC6径間連続ラーメン橋で、当社としては久しぶりの工場製作のプレキャストセグメントの橋梁となります。2020年度から工事が本格化します。
 ――働きやすい職場づくりに向けて取り組んでいることは
  新入社員研修も含めて研修を非常に充実させています。スキルや管理能力を上げるために、人への投資はこれまで以上に行っていきます。最終的に企業は人ですので、誇りややりがいを持てるようにする研修の場は多く提供していきます。


研修で足場組立を行う新入社員

 現在は階層別に初めの3年は1年ごと、その後は約5年間隔で行っていますが、今後は経営者を育てるための研修も充実させていきたいと思います。
 また、人事評価やジョブローテーションなどをつねにより良いものにしていくことも考えていきます。
 ――最後に、社長の健康管理方法は
  ウォーキングです。2日に1回4~5kmを目指して歩いていて、気分転換にもなります。
 ――ありがとうございました
(2020年4月1日掲載 聞き手=大柴功治)

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