道路構造物ジャーナルNET

主戦場となる保全分野の工事を積極的に受注

ピーエス三菱 森拓也新社長インタビュー

株式会社ピーエス三菱
代表取締役社長

森 拓也

公開日:2020.04.01

土木事業のなかで保全分野が占める割合は今期以降30%近くに
 保全のスペシャリストをつくろうとは考えていない

 ――2020年3月期の業績予想は
  土木事業は受注高、売上高ともに第2四半期の決算説明では628億円を予想しています。受注高(2019年3月期実績851億円)は、前期受注実績からの反動もあり、223億円の減少を見込んでいます。


直近2期の業績と2020年3月期業績予想(「2020年3月期第2四半期決算説明会」資料より)

 ――2021年3月期の見込みは
  中期経営計画2019の数字(土木事業では受注高649億円、売上高636億円)を最低レベルとして予算化したいと考えています。


中期経営計画2019の数値目標(「2020年3月期第2四半期決算説明会」資料より)

 ――土木事業のなかでの保全分野(大規模更新・メンテナンス)の割合と今後の見通しは
  売上高ベースで2019年3月期は約15%だったものが、2020年3月期は約20%になる予想です。2020年3月期予想では土木事業のなかで新設橋梁の占める割合が約半分に減少しています。その傾向は続き、新設橋梁以外で相当な割合の売上を上げる会社になっていくと思います。


売上高における土木工事区分割合(「2020年3月期第2四半期決算説明会」資料より)

 PCのリーディングカンパニーであると主張し続けていくためにも、今後、主戦場となる保全分野で技術力や現場力で他社に負けない会社にしていくための取り組みはしていかなければならないと考えています。他社以上の技術開発を続ける必要がありますし、現場の体制や組織づくりも時代にあったものにしていかなければなりません。
 ――保全分野専業の部門をつくることは考えていないのですか
  研究開発は別ですが、工事においては保全のスペシャリストをつくろうとは考えていません。土木部門では新設橋梁を担当しながら、メンテナンスの仕事も担当して両方を経験するようなローテーションを採用しています。いわば、多能工を目指しているわけです。
 専属についてはいろいろな意見があると思いますが、当社が考えているのは、新設橋梁のつくり方をきちんと知った上で、保全のことも身に着けられる体制です。保全の専門部隊をつくるなど、組織をあまり細分化すると効率が悪くなりますし、それしかできない人間になっても困ります。場合によっては、建築事業の社員もできるような仕事かもしれませんので、柔軟に対応できるような組織のほうがいいと思っています。
 ――そのほかの取り組みでは
  人が不足していても大規模更新を含めた保全分野の工事については積極的に受注を狙っていかなければならないと考えています。成長分野ですので、当社のプレゼンスを高めるような受注活動が必要です。
 目先のことを考えると新設橋梁のほうが安心できますが、長い目で見た時に少々苦しくても保全分野の工事を取りにいく。そうすることが当社にとって、次の力になります。
 ただ、NEXCO各社の大規模更新となると、PC業者だけでなくスーパーゼネコンをはじめとしたゼネコン各社が参入してきます。そのなかでもトップシェアを目指していきますが、そのためには独自の技術、施工機械、協力体制をつくることが課題と思っています。

2年連続で海外のPC橋梁工事を元請として受注
 インドネシアでは共同研究に着手

 ――保全分野と並ぶ今後の重点分野について
  2018年度、2019年度と2年続けて海外のPC橋梁工事を元請として受注できました。いずれも15~20億円の受注額です。5、6年前はほとんど撤退状態でしたが、海外にも積極的に進出していくために受注活動を橋梁工事から再開しました。一部はすでに工事着手していますが、2020年度から本格的に工事が進みます。
 中期経営計画2019のなかでも海外事業は成長分野のひとつと位置付けています。現在の1年に1本のペースが、2本、3本となっていけば、相当な規模を期待することができます。リスクが高いことはわかっていますが、案件の審査はいままで以上に慎重に行いながら積極的に受注していくことを考えています。
 ――海外での元請受注は
  10年ぶりくらいだと思います。下請けでは海外でのスキルが上がるとは思いません。元請で施主や現地のコンサルタントなどとの交渉をきちんと経験しないと、本当の意味で、海外で施工する力にならないからです。その意味では2年連続で受注できたので、ひとつの足掛かりになると思います。受注した2橋の施工をしっかり行うとともに、2020年度も10億円以上は海外での元請受注を実現していきたいと考えています。
 ――受注を継続していくためにどのような取り組みを行っていますか
  海外事業室という独立した組織を4年前につくりました。それまでは土木本部のなかにありましたが、独立させて増員もしています。海外事業室では、3工場ある海外工場の管理をするとともに、今後は建築事業も海外展開を考えていますので、それらすべてを担当しています。
 ――受注した橋梁について具体的に教えてください
  ひとつは、2018年度に受注したミャンマーのジャイン・コーカレー橋です。橋長は580mで、メイン橋梁(380m)はPC3径間エクストラドーズド橋で波形鋼板ウェブとストラットを併用するというチャレンジングな構造になっています。アプローチ橋梁(100m+100m)は鋼2径間連続少数鈑桁橋となります。安藤ハザマとのJVで、工期は2019年5月から2021年7月までの27カ月です。


ジャイン・コーカレー橋(完成イメージ)

ジャイン・コーカレー橋 起工式典

 2019年度に受注したのが、西アフリカのコートジボアールの首都に建設するアビジャン高架橋です。鴻池組とのJVで受注しました。橋長は589.5m、上部工形式は場所打ちPC中空床版橋と場所打ちPC箱桁橋で、工期は2020年5月から2022年10月までの30カ月です。
 ――新設橋梁以外での海外展開はありますか
  当社はインドネシアとベトナムに工場と営業拠点があり、昨年からインドネシア道路技術研究所(IRE)との共同研究に着手しました。


IREとの調印式典。森副社長(当時)とIRE所長

 まずは、当社が開発したコンクリート構造物に対する新しい電気防食技術である「Zn(ジンク)カートリッジ工法」とモニタリング技術について、インドネシア国内での適用性と有効性を確認するために、試験施工を行い、現在はモニタリングを始めたところです。約3年の計画で、それが評価していただければ、日本の技術として展開していきたいと考えています。2020年度は新設橋梁を対象とした新たな共同研究を行っていくことを計画しています。
 新技術を開発することも大事ですが、日本の技術を海外に展開していくことも積極的に行っていきたいと考えていて、IREのようなパートナーを探していきます。

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