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2020年新春インタビュー 北海道開発局小樽開発建設部 倶知安余市道路を全面展開

国土交通省北海道開発局
小樽開発建設部長

渡邊 政義

公開日:2020.01.01

耐震補強 対象159橋中130橋が対策済み
 PC橋は2橋を架替え

 ――橋梁など耐震補強の進捗状況は
 渡邊 耐震補強を行わなくてはならない対象橋梁は159橋あります。うち、実施済みは130橋です。落橋防止構造は全橋で対策済みです。いわゆる優先対策地域(今後30年間に震度6弱以上の発生確率が26%以上の地域)ではありませんので、直近の対策予定はありません。
 ――橋梁の長寿命化修繕計画に基づいた対策の進捗状況は
 渡邊 1周目の定期点検で健全度ⅡおよびⅢは合わせて105橋ありました。現在は対策済みが2橋、2019年度実施中が19橋となっています対策方法はコンクリートのひび割れ注入、鉄筋の防錆処理、断面修復などです。
 ――経年劣化や疲労などによる上部工補修・補強のここ3年の実績は
 渡邊 ここ3年では52橋について補修工事を行っています。補修方法については、鋼橋で断面欠損が確認された個所については当て板補修、PC橋では剥離・鉄筋露出箇所における断面補修、ひび割れ注入を行っています。このうちPCケーブルの重度な損傷が確認された2橋(国道229号小田西橋と布門内橋、ポステンT桁橋とプレテンホロースラブ桁橋)においては架け替えを行っています。架け替えに際してはかぶり厚を厚くとるとともに、PC鋼材も予め防錆処理を施したものを使っています。


架替えたPC橋(左:架替え前、右:架替え後)

床版防水127橋で設置済み
 低濃度PCB含有橋は4橋

 ――鋼床版の損傷や床版防水工の設置状況は把握していますか
 渡邊 鋼床版の疲労亀裂は当建設部管内では確認されていません。
 床版防水は、127橋で設置済みです。今後も補修工事に合わせて橋面舗装に損傷が確認された場合は、舗装補修と合わせて塗膜系の防水工を施工します。
 ――支承取替やジョイントの取替およびノージョイント化について、2019年度及び2020年度の施工予定個所と取り替える際の工法・種類を教えてください
 渡邊 支承交換の予定はありません。ジョイントは、2019年度に12橋で実施します。20年度は3橋で予定しています。取替の際は2次止水タイプのジョイントを設置しています。ノージョイント化の施工予定はありません。
 ――鋼橋の塗替え実績について、2018年度と19年度の施工橋数および面積を教えてください
 渡邊 2018、19年度とも施工実績はなく20年度も今のところ予定はありません。
 ――PCBや鉛など有害物を含む既存塗膜の処理はどのように考えていきますか
 渡邊 低濃度でありますが、PCBを含有する橋梁は4橋あります。鉛なども含めて、有害物を含有する塗膜の処理は、囲いやクリーンルームの設置による防塵処理を行い、廃棄する既存塗膜は処分場で適正に処理します。特にPCBは処理期限が決められており、それまでに適正に処理します。
 ――耐候性鋼材を使用した鋼橋の有無と健全度状況を教えてください
 渡邊 耐候性鋼材を採用した橋梁は管内で3橋あります。健全度はⅠが1橋、Ⅱが2橋です。伸縮装置からの漏水により、錆が生じている箇所はありますが、損傷としては軽微です。

道路に面する自然斜面・のり面 要対策61箇所中11箇所の対策を完了

 ――道路防災総点検でのり面箇所は把握していますか
 渡邊 箇所および健全度はカルテとして保有しています。カルテの緊急度や重要度に応じて、点検の仕方や密度もルールに沿って対応しています。
 ――道路に面する斜面や古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがありましたら教えてください
 渡邊 未対策の斜面や古い法面については、「道路防災総点検要領(平成8年8月)」に基づき、個別に防災カルテを作成し、点検を行っています。近年、法面の風化や表層度の流失などにより、落石要因となる浮石や転石が道路用地外に発生するケースがあります。その場合の道路用地内の対策として、のり面上部または下部で落石を待ち受ける落石防護柵を設置する事例があります。要対策箇所は61箇所あり、11箇所の対策を完了しています。
 国土交通省では2018年から「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」を推進しています。2019年度は当建設部管内で3箇所(国道229号神恵内村地内、230号喜茂別町地内、393号赤井川村地内)の斜面またはのり面対策を実施中です。

i-Con モデル事務所に選定
 倶知安余市道路の成果をまとめたい

 ――i-Constructionの取組みについて
 渡邊 小樽開建は、全国モデル事務所10箇所のうちの一つに選定さています。倶知安余市道路を対象に、構造物の設計・施工におけるCIMをはじめi-Conの導入・展開に関する様々な取組を進めることにしています。前述のとおり、同道路事業は60を超える橋梁や2つの長大トンネルがあり、CIMの対象となる構造物が多くあります。また、土工や切り盛りの延長も相当数あります。これらの施工主体としては、大規模構造物はゼネコンが、一般土工や橋梁下部工は地場の建設会社が中心となります。そして、I-Conの取組についても、対象とする構造物や、担当する会社の規模や性格によって異なるアプローチのしかたがあってよいと考えています。技術の先端を突き詰めることも重要ですが、ICT土工のような基本的な取組などを進めて、熟練オペレータを含む建設労働者の不足や、建設業界の働き方改革への貢献にもつながるものとなるよう希望します。
 また、i-Conを進める上で、小樽開建ならではの考慮条件があるとすれば、倶知安余市道路の計画路線が、年間9mほどの累積降雪がある「積雪寒冷地」であること、施工時の作業フィールドの広さを確保しやすい「地方部・農村部」であることです。これら条件を、i-Conの取組を通じて、どう克服するか、あるいは活用するかが重要であると考えます。「地方部・農村部」については、広いフィールドとCIM技術を組み合わせて、より効率的な施工ができないか、それが品質確保と働き方改革、取り分け週休2日制など魅力ある現場づくりに、担い手確保につなげていきたいと考えています。なお、担い手対策の一環として、現場見学会を積極的に実施しており、土木系の学生はもちろんのこと、保護者のみを対象とした橋梁現場の視察やVR体験の場を提供しました。これはトンネルや土工などにもシリーズ化してやっていく考えです。以上、これらの硬軟、様々な取組を通じて、最終的には、小樽開建・倶知安余市道路としてのi-Conの成果として、取りまとめていきたいと考えております。
 ――ありがとうございました
(2020年1月1日掲載)

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