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事業区間の構造物比率は約8割

NEXCO中日本秦野工事事務所 山岳工事では現場アクセスに苦心、各現場で工期短縮策を採用

中日本高速道路株式会社
東京支社
秦野工事事務所
前 所長

長浜 勲 氏

公開日:2019.09.11

トンネル工事にICTを活用
 コンピュータジャンボを用いて自動的に削孔

 ――掘削中のトンネルは
  長浜  高取山トンネル、萱沼トンネル、谷ヶ山トンネルが掘削中で、今年度中に高取山トンネルと谷ヶ山トンネルは貫通予定です。萱沼トンネルの掘削状況は上り線が35.6%、下り線が14.3%となっています。


高取山トンネル坑口(静岡側)/萱沼トンネル坑口(東京側)

谷ヶ山トンネル坑口(東京側)

 ――掘削にあたっての新技術の導入がありましたら
  長浜  担い手不足、生産性向上を考えて、ICTを活用しています。高取山トンネル、萱沼トンネル、谷ヶ山トンネルでは、コンピュータジャンボを用いて設計断面に対しての補助工法施工時の削孔や火薬を挿入するための薬孔の削孔を自動で行っています。コンピュータジャンボに削孔位置データを持たせ、あるいはデータを送信して、削孔位置や角度をコンピューターで制御して削孔していきます。



コンピュータジャンボでの削孔で作業効率と安全性が向上

 従来は、補助工法では人力で打設位置をマーキングしていましたが、事前の位置出し作業が不要になり作業効率が向上するとともに、切羽直下での人力作業がなくなることで安全性も向上しました。薬孔の削孔でも設計断面に対する余掘掘削が低減され、ずり出し時間、吹付コンクリートの作業効率が向上しました。それにともない、地山の緩みを早期に抑制できるため、作業の安全性も向上します。最終的には地山の岩判定に活用できればと考えています。
 ――残りのトンネルは未着手となりますか
  長浜  高松トンネル、古宿トンネル、湯触トンネルの3本は今年度内に着手できる予定です。最後になるのは、皆瀬川橋と一緒に工事を進めている赤坂トンネルになります。
 ――課題は
  長浜  いずれも秦野ICの西側のトンネルになりますが、事前の調査では重金属が含有している可能性がありますので、慎重に対策を取る必要があります。

秦野ICでは約200万m3の盛土
 関東ロームとトンネルずりとの交互盛土で高盛土施工

 ――切土、盛土区間について教えてください
  長浜  秦野ICに約200万m3の盛土があります。秦野ICから東側で出土するものはすべてその盛土に使います。また、山北SICでは約300万m3の盛土があり、秦野ICから西側の土を使います。
 秦野ICの盛土用の土は羽根トンネルと小原トンネルが貫通する前は一般道を使用して運搬していました。それでは地元住民の方に非常に迷惑をかけるということで、トンネル掘削を優先すると同時に、橋部分は仮橋を設置して、約10kmの本線内土運搬路をつくりました。昨年6月に完成して、現在は一般道を使わずに秦野ICまで運搬しています。


本線内土運搬路

 発生土は関東ロームとなっているため、それを有効的に盛土に活用するためにトンネルで出た岩ズリとの交互盛土や、のり面側は排水性、せん断抵抗に優れたトンネルずりでの高盛土施工も特徴となっています。
 ――仮橋を設置したとのことですが、どのようなものでしょうか
  長浜  場所によって違いますが、トラスや、沢を跨ぐ箇所ではガーターも使用しています。さらに、LIBRA工法やSqCピア工法などの生産性があり安全性の高いものでつくっています。


仮橋の設置ではLIBRA工法(左)やSqCピア工法(右)などを採用

 ――秦野ICの進捗状況は
  長浜  ほとんどが切盛土工となりますが、ランプ橋が1本あります。現在は、上部工の詳細設計中で下部工の施工はこれから行っていきます。


秦野IC 施工状況

 取付道路約2.3kmのうち、NEXCO中日本が施工を担当しているのは約2kmで、料金所から国道に接続する部分は国土交通省が担当しています。NEXCO中日本と国土交通省の進捗状況はほぼ同じで、NEXCO中日本側のランプが切土構造、国土交通省区間が盛土構造なので、NEXCO中日本で掘削した土を事業調整して国土交通省側で転用しています。現在、100万m3の盛土が完了しています。

山北SIC盛土施工でもICTを活用
 作業効率化と事故リスク低減を図る

 ――山北SICの盛土では
  長浜  高取山トンネル、萱沼トンネル、谷ヶ山トンネルと同じように、担い手不足、生産性向上のためにICTを活用して工事を進めています。人力ではなくドローンによる3次元測量を行い、測量精度が向上し、より詳細なデータの取得が可能となるととともに、作業効率が向上しました。また、GNSS (Global Navigation Satellite Systems)による測量を行うことで、丁張設置や人力による検測を省いています。GNSSが施工機械の位置情報を取得し、敷均し・締固め機械の平面位置と転圧回数をオペレーターがリアルタイムに確認することで、締固めを管理しています。従来の作業と比べ、締固め回数管理の人員が不要となり作業効率の向上と人件費削減が可能になるとともに、施工ヤードに人が立ち入る必要がなくなり、重機災害などの事故リスクが減少しています。


ドローンによる3次元測量

GNSSにより施工機械の位置情報を取得

山北SIC 施工状況

 ――鋼橋、コンクリート橋を問わず、防食、プレキャスト化などのLCC縮減策がありましたら教えてください
  長浜  鋼桁部はすべて重防食(C-5)を予定しています。桁端部や下フランジ部は増し塗りによる対応を図っていきます。溶射の採用予定はありません。
 ――コンクリート橋では
  長浜  壁高欄はすべてエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用します。東名高速の凍結防止剤の散布量を参考に塩害に対する耐久性照査を実施し、エポキシ樹脂塗装鉄筋を採用しています。
 工期短縮を目的として、滝沢川橋(上り線321m、下り線368m)ではリード工法、尺里川橋(上り線309m、下り線234m)ではSPER工法を採用予定です。秦野ICや秦野SA、滝沢橋の潜る管理用道路にはプレキャストボックスの採用をしていきます。

受注者と徹底的に知恵を出し合った工程短縮策
 今後は遅延リスク対策が重要に

 ――さまざまな工夫を行って工事に取り組んでいることがわかりました。今後、工事を進めるにあたっては
  長浜  東名高速道路の大井松田IC~御殿場IC間は険しい地形だったことから最後の開通区間となりました。新東名の事業区間はそれよりも厳しい箇所となりますので、受注者にも知恵を出してもらって生産性向上や安全確保、工期短縮の3点に寄与するさまざまな施策に取り組んでもらっています。従来通りの設計や施工方法ならば、相当の期間を要することころ、新技術や新工法等の採用により、工期短縮にも大きく寄与していると考えています。
 今後、注意していかなければならないのは、構造物が多いためコンクリートの需給や雨対策などで工程管理をしっかりと行っていかなければならないことです。あらゆる工程短縮策は、これ以上知恵が出ないくらい考えてきましたので、これからは遅延リスク対策をしっかり行っていくことが重要です。
 また、建設エリア周辺には生コンプラントが少なく、橋梁、トンネル工事の終盤には需要が集中することが予想されます。雨で順延になると当事務所管内の工事だけではないので、供給が追い付かなくなる可能性があります。そこで例えば、現場を全天候型にして雨に左右されないような形で施工することも考えています。
 ――付言して
  長浜  新東名高速道路の事業を地元の方はもちろん、一般の方に幅広くご理解いただくことは非常に重要です。そこで、各地域の進捗状況を一元的に紹介することを目的に、秦野市と山北町の2箇所に事業PR施設を設置しました。完成予想図やジオラマ、埋蔵文化財の一部の出土品などを展示しています。見学は事前予約制でお願いしています。


秦野事業PR館。新東名高速のジオラマなどを展示

 ――ありがとうございました
(2019年9月11日掲載 聞き手=大柴功治)

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