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事業区間の構造物比率は約8割

NEXCO中日本秦野工事事務所 山岳工事では現場アクセスに苦心、各現場で工期短縮策を採用

中日本高速道路株式会社
東京支社
秦野工事事務所
前 所長

長浜 勲

公開日:2019.09.11

河内川橋 現場施工のために長さ約100mのインクライン設置と工事用トンネル掘削

 ――河内川橋は
  長浜  二級河川の河内川と丹沢湖・中川温泉へ向かう観光道路(県道)を跨ぐ橋梁で、上り線がPC8径間連続鋼コンクリート複合バランスドアーチ橋(橋長771m)、下り線がPC7径間連続鋼コンクリート複合バランスドアーチ橋(橋長692m)です。中央支間長は220mで、河内川川床から床版面までは約125mの高さとなっています。


河内川橋 橋梁概要図

河内川橋 完成予想図

 構造上の特徴としては、主たる部材をアーチリブとして補剛桁のスリム化を図りました。また、補剛桁を鋼構造とすることで軽量化を図るとともに、架設時に補剛桁が引張部材となるため、コンクリート構造より合理的な鋼構造を用いています。さらに、アーチリブとPC箱桁の応力の円滑な伝達と視覚的な連続性を図ることや、バランスド・トラス張出架設用の水平材(鋼補剛桁)と斜吊材を本設利用していることがあります。
 基礎工事にあたっては、施工ヤードが斜度41度という急斜面で県道からの高低差もあることから、左岸側(P2)には荷揚げ用のインクラインを設置しました。長さ約100m、幅約20m、最大積載荷重90tで、一度にアジテータ車4台を上げることができる巨大なものです。2017年6月に工事着手して今年1月に完成しましたので、深礎杭施工のための仮設構台を施工できるようになりました。右岸側(P3)は仮橋でアクセスする予定でしたが、同じく急峻なため仮橋設置が難しく、全長230mの工事用トンネルを掘削して仮設構台を構築しました。


河内川橋 平面図(右岸側に工事用トンネルを掘削した)

左岸に設置された荷揚げ用の巨大なインクライン

 基礎構造は大口径深礎杭基礎を採用していて、φ16~17mの国大最大級のものとなります。通常の施工では発破掘削してクレーン等により掘削土を地上に出して搬出しますが、それでは非常に時間がかかるので掘削排土効率を大幅に向上させるために、P3とP4ではずり出し用トンネルとグローリーホールを使用します。ずり出しトンネルから1.2mの鋼管を立ち上げて、深礎杭上部から発破掘削しながら、ずりは鋼管を使ってすべて落として、トンネルから搬出します。揚土作業が不要になるとともに、掘削動線分離を図ることができます。P3ずり出しトンネルは2018年12月に、P4ずり出しトンネルは今年3月に完成しています。炭鉱などではこのような事例はありますが、トンネル立坑以外の道路工事では過去に事例がありません。


グローリーホールとずり出し用トンネル

 P2、P3では掘削サイクルの向上を図るために、特殊せん孔機や特殊吹付機、特殊H型鋼ハンドリングマシンを使用した特殊機械化施工も行っていきます。


特殊機械化施工で掘削サイクルの向上を図る

 さらに、配筋作業の合理化も図っています。当初計画では、主鉄筋としてD51-3段(570本)としていたのですが、深礎杭をSRC構造化してREED工法で使用している合成構造用H鋼「ストライプH」を主鉄筋の代わりにして56本を2段配置としていきます。
 P2・P3橋脚とメインポストの施工でも工程短縮のために、プレハブ化を図ります。地組ヤードで埋設型枠(MAMORパネル)と帯鉄筋をプレユニット化して、4ユニット積み重ねた後に軸方向鉄筋を挿入していく方法を予定しています。
 橋脚とアーチリブの接合部(スプリンギング)では両部材の鉄筋が錯綜するため、過密配筋となっていました。そこで鋼殻コンクリート複合構造を採用することで、過密配筋の解消と支保工の削減を実現します。


合理化および工程単短縮の取組み

 ――今後の予定は
  長浜  大口径深礎杭の構築期間は、約1年はかかると思います。左岸側には、深礎杭の位置に最大円周約10mの転石をはじめ、転石が多くあり、それも課題になっています。
 ――皆瀬川橋は
  長浜  二級河川の皆瀬川を跨ぐ橋梁で、PC6径間連続波型鋼板ウェブ+コンクリートウェブラーメン箱桁橋となります(上り線は5径間)。橋長は上り線353m、下り線398mです。


皆瀬川橋 完成予想図

 ここも現場環境が厳しく、作業ヤードは皆瀬川の狭小な河川敷しかありません。皆瀬川橋の路面は川床から約80m上になり、橋脚も急斜面に構築することになるので、施工ヤードへのアクセス整備から始めました。40m地点までインクラインを建設して、仮設構台を構築。そこからLIBRA工法で仮橋を橋脚の施工位置まで伸ばしていきます。現在は、仮橋の施工中ですので、基礎構造が完了し下部構造の立ち上げは来年度以降となる予定です。


皆瀬川橋 施工状況

羽根トンネルと小原トンネルの2本が貫通
 羽根トンネルではディープウェル工法を採用

 ――トンネルは上下線あわせて18チューブとのことですが、各トンネルについて教えてください
  長浜  伊勢原大山IC側から、厚木工事事務所と両側から掘削している高取山トンネル、羽根トンネル(上り線2,921m、下り線2,906m)、小原トンネル(上り線630m、下り線666m)、萱沼トンネル(上り線1,363m、下り線1,358m)、高松トンネル(上り線2,851m、下り線2,864m)、赤坂トンネル(上り線970m、下り線934m)、古宿トンネル(上り線602m、下り線583m)、湯触トンネル(上り線2,145m、下り線2,161m)、谷ヶ山トンネル(上り線2,793m、下り線2,789m)の9本です。谷ヶ山トンネルは沼津工事事務所と両側から掘削していて、当事務所の所管は上り線1,207m、下り線1,167mとなっています。
 ――貫通しているトンネルはありますか
  長浜  羽根トンネルと小原トンネルの2本(4チューブ)です。羽根トンネルは上り線が2014年8月に掘削を開始して、2017年2月に貫通、下り線が2015年9月に掘削開始、2018年7月に貫通しています。施工にあたっては高湧水区間があり出水が懸念されたことから、地下水位を強制的に低下させるディープウェル工法を採用しました。具体的には、トンネル上にある秦野カントリークラブに協力してもらい、コースとコースの間にφ600mmのディープウェル(深井戸)を9本設置(平均深度65m)して、地下水を排水していきました。上り線は覆工コンクリートの打設が完了、下り線も約8割が完了しています。


貫通した羽根トンネル

ゴルフ場のコースとコースの間にディープウェルを設置

 小原トンネルは、上り線が2018年2月に、下り線が2018年7月に貫通し、覆工コンクリートの打設も完了しています。


小原トンネル坑口(左:東京側/右:静岡側)

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