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既設橋の損傷は塩害が主因 彦部橋で様々な補修補強を採用

留萌開建 天塩大橋、留萌大橋などの長大橋が進捗

国土交通省
北海道開発局
留萌開発建設部
前部長
(現・国立研究開発法人 土木研究所 審議役)

片倉 浩司 氏

公開日:2016.08.15

191橋、18トンネルを管理
 橋梁は50年以上経過したものが6割近くに達する

 ――これからは保全分野について聞きます。まず管内橋梁、トンネルの内訳から
 片倉 橋梁は191橋、トンネルは18箇所を管理しています。
 橋種別では鋼橋69、PC61、RC61、その他1という内訳です。供用年次別では50年以上を経過した橋梁が114橋と6割近くに達しており、後10年経てばその割合は7割を超えます。
 トンネルの工種別は、在来8、NATM9、その他1という内訳です。供用年次別では50年以上経過箇所が6箇所と3分の1を占めている一方、10年以内に供用した新しいコンクリートも5箇所あります。

塩害が主たる損傷要因
 凍害や凍結融解も影響

 ――構造物の損傷傾向は
 片倉 主たる要因は飛来塩分による塩害です。偏西風の影響を受けて飛来塩分を構造物が浴びる状況にあり、海岸線に位置する橋梁ではコンクリート部材、例えば主桁、床版や地覆などに遊離石灰や剥離、鉄筋露出などの損傷が出ています。架け替えに至った橋梁もそうした損傷が著しく進んだ結果と言えます。架け替えに至っていない橋梁でも様々な防食や断面修復工法などを用いて延命化させています。
 ――凍害や凍結融解による損傷は
 片倉 もちろんあります。橋梁の地覆部分や側壁部分などは凍害により表面のコンクリートが剥離・脱落し、塩害の進行を早めており、複合劣化が進んでいます。また、橋脚の角落ちなども多数発生しており、著しい性能低下までは至っておりませんが、凍害による損傷は確実に進んでいます。そのため、最近の新設コンクリート橋やコンクリート部材は、品質向上のため、工場製作によるプレキャスト部材比率を高めています。
 ――ASRを主因とする劣化の有無は
 片倉 土木学会が平成16年度に行った調査でも留萌開発建設部内はそうした反応による損傷が起きるリスクは低いと示されており、現実にそうした損傷は見られていません。北海道全域を見渡してもASRによる損傷は少ないのが現状です。尤も、平均気温が低いために、反応の促進が遅くASRが顕在化していないという可能性もあります。但しそれでも当建設部のリスクは少ないのではないかと考えています。


橋梁保全の該当橋と損傷状況および主な対策工法

鋼橋 海側の最外桁外面の損傷が多い
 飛沫や飛来塩分による影響 一部で溶射も採用

 ――鋼橋の損傷状況と防食手法は
 片倉 波浪による飛沫や飛来塩分の影響により、海に面している橋梁の桁下フランジ上面や下フランジと繋がるウエブ部分(ウエブの下面1/3程度)を中心に塗膜劣化や初期の腐食が見られます。また、桁端部や支承の鋼部材などでも同様の損傷が見られます。一番ひどい部分は海側に面する最外面桁の外面です。内側への巻き込みもあり、そうした箇所も損傷しています。
 ただし、桁下のクリアランスが良好(高すぎず、低すぎない)な橋が多いことから、管理状態は良く、深刻な損傷には至っていません。
 基本的に重防食塗装によって塗り替えており、海岸線だけでなく内陸部でも到達する飛来塩分量が多いことや、冬期の凍結防止剤散布量も多いことから、耐候性鋼材は一切使っておりません。支承などについては溶射による防食も採用しています。
 ――床版の状態は
 片倉 全道的に見ても交通量がそれほど多くなく、疲労のダメージが少ない点もあって、高砂橋のような特異な例を除いて顕著なダメージは見られていません。
 ――耐震補強の進捗状況は
 片倉 管内は全て完了しています。落橋防止装置の設置も完了しています。落橋防止装置の溶接不良も、聞き取りの結果該当するものはありませんでした。ただ、今後も点検の際に確認していく方針です。

C判定以上は49橋 未対策は35橋も5年以内に施工
 彦部橋で電気防食による塩害対策および外ケーブル補強を採用

 ――橋梁定期点検に基づく要対策橋とその対策状況は
 片倉 C判定以上の要対策橋は平成27年度現在で49橋あり、27年度末までに14橋が対策済みです。残る35橋についても、各自点検から5年以内に補修を完了する方針です。
 ――損傷状況は
 片倉 先ほど申しましたとおり飛来塩分もしくは凍結防止剤散布による塩害が主な損傷要因です。あとは伸縮装置の交換や床版の断面修復などです。
 ――塩害が多いということですが、電気防食等の採用は
 片倉 あります。増毛町の国道231号信砂川河口に架かる彦部橋(橋長120㍍、4径間単純ポステンPCT桁橋)です。河口から20㍍程度しか離れておらず、一部でPC鋼線の塩害による損傷が確認されていることから外ケーブルで補強すると同時に外部電源方式による電気防食(リボンメッシュ工法)で塩害対策を施しています。長期的に見ると架け替えが必要であると考えています。また、同じく国道231号の増毛町朱文別にある朱文別橋では、犠牲陽極(デンカガルバーシールドF)で塩害対策を実施しています。


彦部橋の外ケーブル補強

PC鋼線スパン中央の下部などで損傷
 グラウト充填不良の可能性高い

 ――PC鋼線の損傷ですが、どの部分がやられていましたか、定着部付近ですか
 片倉 スパン中央の下部です。ただ一番やられていた箇所がそこと言うだけで、押し並べて損傷ないし塩分量が多い(最大塩化物イオン量は表面で7~8㌔/平方㍍、鋼線近傍で2~3㌔/平方㍍)状況です。定着部はそれほど損傷していません。河口付近ということもあって、要因となるものは飛沫であるため、桁下部が損傷している状況です。
 ――グラウトの充填状況は
 片倉 経年による損傷が激しいので一概には言えませんが、試験的にWJではつり取った個所ではケーブルが露出していたところもあるため、きちんと入っていなかった可能性は高いと思います。またシースは時代的に当然鋼製であり径も現行に比べ細いものを用いています。
 ――上部工の経年劣化または疲労により補修・補強を行ったもしくは今後行う橋梁は。また床版の健全性維持に大きな役割を果たす床版防水工の敷設の有無は把握していますか
 片倉 上部工の補修補強は、ここ3年で21橋施工しました。内訳は床版断面補修が12橋、床版防水工が14橋、伸縮装置取替が7橋、地覆あるいは防護柵の補修を行っているのが4橋です。
 ――今年度の予定は
 片倉 今年度、上部工の補修補強は11橋予定しています。内訳は断面補修が7橋、床版防水5橋、伸縮装置補修が5橋、地覆・防護柵の補修を行っているのが2橋です。
 ――伸縮装置や支承の取替予定は
 片倉 伸縮装置取替は3橋を予定しています。埋設ジョイントの交換です。支承交換やノージョイント化の予定はありません。
 ――熊本地震を受けて、「可及的速やかに復旧できる橋梁」の機能を満たすために、既設橋にも踏み掛け版や延長床版などの設置を行うケースが出てきていますが、管内ではそうした対応は考えていませんか
 片倉 今のところ具体な対応はしておりませんが、管内の道路は海岸線を走っている箇所が多いため、地震のみならず津波の影響を受けることも十分考えられます。特に大きな橋梁では上部工が流出すると復旧に大変な時間を要することになります。そういった可能性も併せて対応を考えていかなければならないと思っています。
 ――鋼橋の塗り替えは
 片倉 ある程度、定期的に実施しています。今年度はありません。
 ――トンネルの維持管理について現状は
 片倉 5年に1度の定期点検を行っており、昨年は3箇所のトンネルで補修を行っています。

 

法枠工の補修対策はほぼ完了

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、道路に面する斜面や、古い法面などをどのように補強・補修して道路を守っていくのか具体的な事例や計画などがございましたら教えてください
 片倉 まず、古い法面対策から申しますと、内地のようにコンクリートで吹き付けた法面はありません。ただ、フリーフレームなどを使用した法枠工はかなりの頻度で使われています。そうした法枠工の補修対策については、ほぼ対策を完了しています。ただ平成26年にそういう法面が集中豪雨で崩れた箇所もあり、今後更なる対策が必要になってくる可能性があります。
 また、国道231号の増毛町を通過する区間の一部は急峻な斜面が続いており、岩質の山となっていて、風化による劣化で落ちてくる可能性があります。そのため暑寒防災事業において落石対策を進め、昨年度に完了しました。

eプレートを朱文別橋・番屋の沢橋の桁補強で採用
 高砂橋架け替えではエポキシ樹脂被覆PC鋼より線の採用を検討

 ――保全における新技術・新工法の適用は
 片倉 国道231号の朱門別橋、国道232号の番屋の沢橋において、炭素繊維プレート接着補強工法を採用しています。
 また、架け替え予定の高砂橋では、エポキシ樹脂被覆鋼より線を用いたPCケーブルの採用を検討しています。


炭素繊維プレートによる補強工

 ――ありがとうございました

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