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橋自体の耐久性に大きな疑義

既設ポストテンション橋のPCグラウト問題への対応

公益社団法人プレストレストコンクリート工学会
既設ポストテンション橋のPCグラウト問題対応委員会
委員長
京都大学教授

宮川 豊章 氏

公開日:2015.01.01

 14,000連の状況、27連の重大損傷事例を収集、調査
 T桁の健全度が比較的悪い

 ――ポストテンション橋が置かれている状況。損傷発生の要因とメカニズム、特に上縁定着、床版防水の未設置、凍結防止剤の使用、鋼製シースの採用が重なった場合、損傷が起きやすい傾向にあると聞きますが。委員会ではどのような議論がなされていますか。
 宮川 現在、PC橋の管理者、建設会社から14,000連のポストテンション橋の状況、27例の重大損傷事例について収集し、分析を進めています。現在までのアンケート結果を見るとT桁の健全度が他型式に比べて比較的悪くなっていることが見て取れます。またT桁においては1970年代に建設された橋梁の健全度が悪い傾向にあります。またPCグラウトの不充填率も他の型式と比べて高くなっており健全度に悪影響を与えている可能性があります。またPC鋼線、PC鋼棒、PC鋼より線の不充填割合を調査してみると鋼線が全体的に不充填率が高く、鋼棒は60年代の橋梁で不充填率が高くなっています。60年代のPC鋼棒で不充填率が高いのはその時代のシース径が細くグラウトが注入しにくいものであったことが考えられます。しかし、シース径が太くなったのはもっと後(後述)なわけで、なぜ60年代の鋼線に充填不足が多いのかはまだ分かりません。


                     PC鋼棒の破断

                 PC鋼棒の破断、突出

 床版防水工の未設置が損傷を惹起
 はっきりした傾向を示す

 重大損傷事例では、床版防水工の未設置、鋼製シースの採用、PCグラウトの充填不足が存在する橋梁が大多数を占めています。また、重大損傷事例では、海岸付近の橋梁に限らず、内陸部に位置する橋梁においても存在していることから、凍結防止剤の影響は多分にあると推定されます。
 鋼製シースに関しては、施工時に損傷しやすい(破れや凹み)ことがあると思います。施工時にバイブレーターが当たったり、本来はコンクリートを置かなくてはならない所を投げ込んでしまった時の衝撃により損傷したというケースもあるようです。場所によっては凹みでシースと鋼棒が接した状態になりグラウトが物理的に入らなくなっているケースもあるようです。ただ、鋼製シースも1994年にPC鋼棒用のものはシースの肉厚が厚くなっており、それ以降は損傷が生じにくくなっているようです。
 床版防水工の未設置が損傷を惹起することについてははっきりした傾向があります。特に上縁定着については損傷する傾向が高くなっています。床版防水工は単にシートや樹脂を塗布して防水するだけでなく、排水枡や導水機構を設置することも含まれます。そうした設備により水まわりが改善されるため、設置橋梁については劣化が少ない傾向にあります。
 充填不足の要因は、3つに分けられます。1つは先ほど話した技術者の意識の問題、2つはブリーディング(固体材料の沈降または分離によって、練混ぜ水の一部が遊離して上昇する現象)の有無、3つは先流れ(シースが下り勾配の場合、上からグラウトを注入すると勾配の下の方にグラウト材が流れてしまう現象。勾配の上の方は空気溜まりができ、未充填状態となってしまう)です。


                          先流れ

 現在はPCグラウトなどに関する指針などの基準変遷、検査基準などの変遷などを整理・分析中で様々な要因について検討している段階です。なお、建設年次の古い橋梁ほど、橋梁の健全度、PCグラウトの充填不足の割合が高い傾向を示しています。よって塩害環境においてPCグラウト充填不足も相まって損傷しているものと推定される状況です。なお、上縁定着の有無についてはその要因は大きいと思われますが、現時点での分析はできていません。

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