道路構造物ジャーナルNET

安全性向上にも3カ年で2450億円投資

構造物の大規模更新・修繕へ道筋

中日本高速道路株式会社
常務執行役員 保全企画本部長

猪熊 康夫  氏

公開日:2014.10.01

床版取換えはPCaPC床版
交通量多い箇所は半割施工

  ――大規模更新・大規模修繕において床版の打ち替え・補修は大きな割合を占めます。床版の取替え延長は230㌔におよび幅員10㍍の2車線道路が主とはいえ、上下線分離を考慮すれば膨大な面積、パネル数になります。PC生産対応能力も限界があります。現在念頭においているプレキャストPC床版だけでなく合成床版や鋼床版などの活用は考慮にありませんか
 猪熊 まず、鋼床版はJH時代からどうしても必要なところ以外採用していません。
 その理由は路面の凍結を招きやすいこと。もう一つは溶接のかたまりですから、傷みやすいという懸念も持っております。大規模更新は短い時間で施工をする必要から床版形式を限定することは考えていませんが、鋼床版があちこちにできることは考えにくいですね。特に中日本エリアは大型車交通量が多く、したがって軸重も大きく床版は過酷な状況に置かれやすく、凍結防止剤の散布量も多く腐食も招きやすいですから積極的には採用しません。
 鋼・コンクリート合成床版もやはりコンクリート床版に比べると路面温度が下がりやすいことは否めません。
 確かにプレキャストPC床版の生産対応能力については我々も懸念しています。


           大規模更新は床版の取り換えが大部分を占める

 ――場所によっては床版の打ち替えを半割でやるとおっしゃいましたがその際に生じる膨大な縦目地という弱点をどのように克服しますか
 猪熊 先日、中央道の上長房橋(上り線)で床版取り換えを半割で施工しました。この時も最終的には間詰めコンクリートを打設して両側をPCで連結していますので、問題はないと考えています。
 また、上長房橋では1週間毎に車線を切り替える集中工事で施工しています。大規模更新・大規模修繕時は基本的に施工時間を長くとることを考えていますので、品質はむしろ向上します。例えば高性能床版防水もグレードⅡs(4時間で300平方㍍の施工が要求される)ではなくグレードⅡで十分です。
 上長房橋で半割を取り入れたのは、同橋の通行量が5万台を超えるためです。上り線(基本的に上下線は分離している)を完全通行止めにして、反対車線の対面通行規制では渋滞が発生しやすくなります。それを避けるため下り線はそのままに、上り線も1車線ずつ施工しました。
 しかし、たとえば中央道の諏訪のあたりは3万台ぐらいしか交通量がありません。こういう個所は片側を2週間ほど完全に止めて床版を打ち替えています。この場合は縦目地は発生しません。時間交通量も見つつ、交通量3~4万台を目安にそれ以下は片側全面通行止めをしての取替え、それ以上の個所は半割施工も検討の対象です。
 ――大規模修繕においては大規模更新時同様の十分な施工時間はとれそうですか
 猪熊 高性能床版防水などの施工を考慮すれば十分な時間が取れるよう、配慮する必要があると考えています。
 ――大規模修繕対象のトンネルは
 猪熊 東海北陸道などや北陸道の富山管内にある従来の矢板工法で施工した古いトンネルで、膨張性を有し強度低下を招く恐れのある地山を有するトンネルが対象ですが、中日本は少ないと考えています。
 覆工背面の内部空洞個所については順次空洞充填工を行っています。

2つの技術を共同研究
あと施工アンカーとトンネル

 ――活用している新技術や開発中の技術について
 猪熊 共同研究を2つ始めました。1つは近接目視あるいは打音に資する高性能なセンサーです。道路付属物を固定するあと施工アンカーの性能を数値化し、その信頼性を客観的に評価・判断できる技術を民間7社と共同研究しています。
 もう1つは高速で走行しながら変状などの異常を測定する技術の研究です。これはトンネルが対象で、壁面や内部に設置された機器(ジェットファンや標識設備など)の変位や変状を検出するためにレーザーやカメラを搭載した車両を走行させながら計測する「車載型のレーザースキャナ」を民間1社と共同研究していました。3次元測量と画像処理技術との組み合わせにより、日常点検走行中にトンネル内空の微小な変状の検出を目指すもので、現在はとりまとめを行っています。
 ――不調不落対策について
 猪熊 昨年度を見ても不調不落が多く発生していましたが、入札方法の見直し等で減少してきました。さらに今年1月からは単価ファイルの変更を年2回から4回に増やし、材料費のコスト増にフレキシブル対応しています。2月には国の施策に合わせて労務単価を臨時改定しています。またインフレスライド協議も導入しました。
 それでも不調不落が続くため、円滑な事業執行を図ることを目的として、当初入札において不落・不成立(以下「入札不調」)の場合に、最低入札価格提示者など特定の1者を協議相手として、契約制限価格を超えても妥当であれば契約できる特例措置「不調特命見積協議方式」を実施しています。
 4月にはさらに生コンの単価を改訂、この7月から地域外から人・物を雇用・調達する際のコストを計上できる契約方式の試行も始めました。
 その結果、昨年は不調不落件数が全体発注件数の4分の1弱にまで達していましたが、今年の第1四半期は同6%程度まで改善しました。
 ――5月末に出た厚労省通達「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康被害防止について」への対応は
 猪熊 塗膜中にPCBや鉛・クロムを含有している橋梁は把握しています。具体の対応に関しては検討中です。
 ――付言して
 猪熊 弊社は保全研修用橋梁モデルとして、名古屋大学、中日本ハイウェイ・エンジニアリング名古屋と共同で「N2U-BRIDGE(ニュー・ブリッジ)」を運用しており、老朽化した実構造物を用いた点検、補修補強技術の訓練施設として大きく活用しています。
 加えて、電気・機械・建築・通信・ETC・水質などの施設系の技術研究施設として「E-MAC」を開設し、中日本高速道路グループの研修・訓練に充てています。
 ――ありがとうございました。

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