道路構造物ジャーナルNET

安全性向上にも3カ年で2450億円投資

構造物の大規模更新・修繕へ道筋

中日本高速道路株式会社
常務執行役員 保全企画本部長

猪熊 康夫

公開日:2014.10.01

飛来塩分、凍結防止剤による塩害
RC床版の損傷やコンクリート剥落が発生

 ――点検を進めてみてわかったことは
 猪熊 弊社特有の損傷として、まず塩害による損傷が挙げられます。塩害は大きく分けて飛来塩分によるものと、凍結防止剤散布による影響の2種類があり、前者は東名の由比海岸付近や西湘バイパス、北陸道の一部(図3)、後者は中央道、北陸道、東海北陸道でその影響が顕著に出ています。
 凍結防止剤による影響は、RC床版の損傷、鋼桁端部や鋼製支承の腐食などを生じさせており、飛来塩分は桁外面や下フランジの上面などに滞留し、その影響でコンクリートが劣化、剥離している箇所が各地で見られます。

塩害、中性化、アル骨、疲労などによる損傷が顕在化しつつある

 対策は、新設については桁端部にシラン系含浸材を塗布し凍結防止剤を含んだ塩水による腐食を防いでいます。また、既設では遊間が狭い個所においてはジョイント連結(例えば北陸道でのFacetコンクリートを用いたジョイント連結など)を行うなどの対策を施しています。
 ――劣化の遠因となる中性化の進展深さは把握しておられますか
 猪熊 中性化だけに絞った調査はあまりしていません。劣化の要因の一つではありますが、塩害など他の要因がなければ鉄筋の腐食膨張が深刻化し、コンクリートが剥落するという事態が、ほとんどないためです。
 ただ、中性化が起きやすいコンクリートを用いた構造物というのはざっとですが把握しています。
                                          顕在化した塩害の被害

 ――中性化進展速度が顕著に速い構造物というのはいつの時代のものですか
 猪熊 名神など初期の高速道路におけるコンクリート構造物の建設は、今では一般的なコンクリートポンプ車もなくて、スランプの下限値ぎりぎりのコンクリートをネコ車で打設箇所に運び、しっかり突き固めて、施工していました。たとえば名神の下部工の設計基準強度は24kNですが、ポンプ施工導入以前に施工されており、橋脚のコアを抜いてみると今でも40kN近くの強度を保っています。しかしその後、高度経済成長の影響で、昭和40年代からポンプ施工が急速に導入されましたが、最初は施工手法も確立されておらず、品質のよくないものがあったと考えています。
 ――80年代以降、とりわけ塩分総量規制以降のコンクリート品質は良好と考えて良いでしょうか。
 猪熊 懸念もあります。現在のセメントは強度が早期発現し易いように以前と比べて粉末度が細かくなっています。また、フライアッシュなど以前は使われていなかったものが入る比率が少しずつ増えています。そうしたコンクリートで作られた構造物は長期耐久性が担保されているとは必ずしも言えないのではないでしょうか。
 ――アルカリ骨材反応による劣化は生じていますか。
 猪熊 北陸道などで一部に生じています。しかし、表面被覆などで対策しており、その後、劣化が著しく進んだなどの報告はありません。橋台にも生じておりますが、背面からの水の供給によるアル骨の進行は今のところありません。

ご広告掲載についてはこちら

お問い合わせ
当サイト・弊社に関するお問い合わせ、
また更新メール登録会員のお申し込みも下記フォームよりお願い致します
お問い合わせフォーム