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間詰部は超速硬コンクリート、高性能床版防水も採用

岩手県 国道395号猿越橋でプレキャストRC床版を用いて床版取替 

公開日:2022.11.21

プレキャストRC床版 設計圧縮強度は40N/mm2とPC床版並みの強度
 標準空気量4.5%±1.5とし、凍害による早期損傷を起こさないよう注意

プレキャストRC床版の特徴と製作
 プレキャストRC床版の設計圧縮強度は40N/mm2と、PC床版並みの設計強度とした。使用鉄筋はSD345のD19・D16・D13を用いており、タフテッキンと名付けた鉄筋頭部に鍛造・特殊加工を施した機械式定着による継手を採用することで床版厚を薄く抑えることが出来るようになっている。継手幅は290mmとした。同プレキャストRC床版は東北大学(久田真教授)、岩手大学(大西弘志教授)、日本大学(阿部忠名誉教授)と小野工業所が共同開発したもので、既に山形県上山市などでも採用実績を有している。
 プレキャストRC床版は青森県の上北郡六戸町にある技研の青森工場で製作した。同工場はボックスカルバートのプレキャストコンクリートやプレテンホロー桁の製作などの実績を有している。本橋梁では死荷重増を行わないよう、既設床版と同様の170mmの床版厚であり、コンクリートとりわけ被りコンクリートの品質管理が非常に重要となる。そのためJIS A 5372および5373に基づいて製作を行い促進養生(蒸気養生)+自然養生を施した。また、標準空気量も4.5%±1.5とし、凍害による早期の損傷を起こさないよう注意した。さらにASRや塩害を抑制すべく石灰石骨材を採用している。

 製作に用いるコンクリートのスランプは18cmとした。写真のように低周波を用いた型枠バイブや棒バイブで適切にバイブレーションして丁寧に締固めし、品質を確保していた。34枚のプレキャストRC床版パネルを約1か月半で製作し終えていた。



床版製作状況(井手迫瑞樹撮影)

床版厚は170mm、被り厚は55mmとなっている(井手迫瑞樹撮影)

撤去・架設作業のクレーンは360tATCを採用
 ジェットモービル車を使って間詰コンを施工

施工
 猿越橋では、床版全面を撤去(456m2)し、新たにプレキャストRC床版(475m2)を設置する。撤去に比べ新設の面積が大きいのは、幅員を多少拡幅しているためだ。夜間全面通行止めして1日2~3枚程度取り替えていく。

床版取替割付図

床版取替施工ステップ図


床版切断状況(井手迫瑞樹撮影)

センターホールジャッキによる既設床版引きはがし作業(井手迫瑞樹撮影)

 防護柵は事前に撤去する。さらに橋軸方向に約1.8m(標準版部)、橋軸直角方向に幅員の約半分(約3.5m)のラインでコンクリートカッターにより切断し、半断面ずつセンターホールジャッキで引き剥がし、クレーンで撤去する。撤去1枚当たりの重量は約4.3t。これを新設プレキャストRC床版パネル換算で2~3枚撤去した後に、主桁上面の残コンの撤去、上面の研掃を行い、桁と床版間にスポンジシール型枠を配置して、その上にプレキャストRC床版をクレーンで架設していく。


クレーンによる既設床版の撤去(井手迫瑞樹撮影)

既設床版の撤去後の上フランジ上面の研掃状況(井手迫瑞樹撮影)

 これらの撤去・架設作業のクレーンは360tオールテレーンクレーン(ATC)を採用した。橋長に比して大型のクレーンを用いた理由は、「昼間は供用せねばならず、橋上にクレーンを残置することはスペース上難しい。また、据付けに要する手間を減らす意味でも、一度据付けるだけで、橋長の半分を撤去・架設できる360tATCを採用することは施工の効率化に適うため」(岩手県)とした。360tATCは1台を使い、A1側で橋長の半分まで撤去・架設した後、A2側に移設し、もう半分の橋長を撤去・架設した。

床版取替架設計画図


スポンジ型枠とスタッドの設置(井手迫瑞樹撮影)



プレキャストRC床版の架設(井手迫瑞樹撮影)

 床版の撤去後は上フランジ上面を研掃したのちに、スタッドジベルを溶植した。床版を架設した後に、ジベル孔に無収縮モルタルを打設していく。さらに間詰部は、施工に要する時間を短縮するため小野工業所が保有するジェットモービル車を用いて超速硬コンクリートを現場で練り、打設した。ジェットコンクリートはデンカ製の材料を用いていた。


スタッド部へ無収縮モルタルを充填(井手迫瑞樹撮影)/ジェットモービル車


間詰コンクリート部の施工

伸縮装置部の施工

 1夜間で床版の撤去から架設、間詰コンクリートの打設までを行い、既設床版と新設床版の境部には覆工板を設置して開放することを繰り返した。

現場の交通状況を考慮して、NEXCO規格の高性能床版防水を設置

 床版取替完了後は、床版防水工を施工するが、猿越橋では塩害および凍害環境が厳しいことや重交通路線でありとりわけ大型車交通量が比較的多いことを鑑みて、NEXCO仕様のグレードⅡ(HQハイブレンAU)を用いた。舗装工は基層に再生密粒度アスファルト(20)を40mm、表層に密粒度アスファルト(13F)改質Ⅱ型を30mm敷設した。



高性能床版防水(「HQハイブレンAU」)を採用した


舗装施工状況

 設計は土木技研(盛岡市)、元請はアルバライフ(二戸市)、1次下請はショーボンド建設北東北支店(盛岡市)、谷地林業(洋野町)、テクノ中央(青森県八戸市)、岩手ニチレキ(奥州市)、八戸サンロード(青森県八戸市)、福岡電業(二戸市)、扇田産業など。二次下請は東日本工業など。プレキャストRC床版の製作は技研、販売は橋梁保全研究所。間詰コンクリートの製作は小野工業所。

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